君も歴史の目撃者『お茶の間トランスフォーメーション ザ・ムービー』 | しばりやトーマスの斜陽産業・続

君も歴史の目撃者『お茶の間トランスフォーメーション ザ・ムービー』

 トランスフォーマーシリーズのアニメ最新作『トランスフォーマー/ONE』が9月に公開ということでトランスフォーマー特集でもやるか!と思い立ち、日本で制作された実写短編『お茶の間トランスフォーメーション ザ・ムービー』をご紹介。ちなみに本家トランスフォーマーとは何の関係もありません。まったくの別物。トランスフォーマーとマシンロボ、トミカとモルカーぐらい違います(しかしサブタイトルは『トランスフォーマー ザ・ムービー』に準拠)

 ズバリ、アメリカのトランスフォーマー実写映画のブームに乗っかった便乗作品で、便乗といえばこの人、河崎実監督も「特別編監督」として参加している(後述)。

 

 

遙か太古の昔ー

 

銀河系宇宙空間に巨大なエネルギーが発生しー

テクノロジーの進歩により惑星をおおっていた。

 

そして、地球のお茶の間にもー

それは存在していた。

 

 と仰々しいナレーションで開幕する本編。さらに森本レオのうさんくさい深刻な解説により「地動説よりも天動説の方が正しかったとしたら?」世間一般の常識を覆す現象が我々人類の知らない間に起きていたらー

 という仮説にのっとって物語は展開する。携帯電話、デジタルカメラ、掃除機、ノートパソコン、ポット…といった電子機器が我々の知らない、観ていないところで密かに活動している様子を捉えていく。

 

 例えばデジタルカメラが人型に変形(トランスフォーメーション)して隣の女性の着替えを盗撮していたら?

 例えば電気ポットが放置されたカップ焼きそばのお湯を密かに湯切りして中身をシンクにぶちまけていたら?(役に立ってねえ)

 例えば放置された掃除機が勝手に電源コードを片付けていたら?

 例えば電源が切れかかったコードレスの子機が一人でに動いて充電器につながっていたら?

 

 これらはすべて仮説にすぎないが、真実でないとは言い切れないのですー

 

 ってこれ、トランスフォーマーっていうより『トイ・ストーリー』だよね。こういった思い付きでつくったようなショート映像が50分続く。飽きてくる頃にはちょっとしたお色気や、なんで出てるのかわからない川村ゆきえが登場したりしてなんとか観客を退屈させないような配慮がなされているところがたまらない。

 

 本作で一番面白いのはDVDに収録されている制作発表記者会見である。2007年8月3日(どうでもいいけど、僕の誕生日だ)に行われた会見では特別編の監督を担当した河崎実監督と。彼に仕事をオファーした製作総指揮スティーブン・スピルバーグのそっくりさんが登壇。これが全く似ていないのもすごいが「ポケットマネーから100万ドルを出してハリウッドにお茶の間のセットをつくった」「ノースタント撮影による命がけのアクションに携帯電話が挑んだ」河崎監督には「非通知・着払い」の電話でオファーがなされ、製作費については「(河崎監督の)弁当代は出た」とのこと。そのうち監督名をピーター・ジャクソンやマイケル・ムーアと間違ったりとテキトーにもほどがある発言を繰り広げる両者!

 

 で、その河崎実監督が手掛けた特別編「大人のトランスフォーメーション」で、DVDに収録されている。それは男女のカップルが主役で、彼氏が電動マッサージ器を彼女にプレゼントすると、そいつがトランスフォーメーションして大人のおもちゃに早変わり!というおちゃらけギャグの短編が6話。オチは全部同じ。ピーター・ジャクソンも即、指輪を投げ捨てるほどの腰砕け下ネタギャグは河崎監督曰く「かつての大島渚のように映像表現の限界に迫った」とフカしまくるのであった。大島渚が墓から蘇って「ばかやろう!」と怒鳴ってこないか心配だ。

 

 スピルバーグもムーアも、ジャクソンも多分観てはいない映画。あなたが歴史の目撃者になるしかない!