すっぱいはちみつ映画『プー あくまのくまさん』 | しばりやトーマスの斜陽産業・続

すっぱいはちみつ映画『プー あくまのくまさん』

 少年クリストファー・ロビンは100エーカーの森に暮らすくまのプーやピグレット、イーヨー、ティガーといった動物たちと仲良くなる。進学のため森を離れることになったクリストファーは再会の約束をしてプーたちと別れるが、その約束は長年果たされず、食事のすべてをクリストファーに依存していたプーたちは飢えに苦しみ、ついに最も弱いイーヨーを餌にし、共食いが始まる。次第に狂暴化していったプーたちはこんなことになったのは自分を見捨てたクリストファー、そして人間のせいだとして怒りを露にしたプーたちは100エーカーの森周辺の人間たちを食い殺していく。

 それからしばらくたち、クリストファー(ニコライ・レオン)は婚約者のメアリーを連れて森にやってくるが彼らが目にしたのは恐ろしい殺人鬼となったプーとピグレットだった。メアリーは即惨殺され、クリストファーは森の奥に連れ去られる。さらに数年後、幻覚に悩まされ、心の病を患うマリア(マリア・テイラー)は休養のため友人たちとともに100エーカーの森の一軒家を訪れる。そのころ、森ではシャーリーン(ダニエル・スコット)がプーに襲われていた。

 マリアの友人たちは一人、また一人とプー達の犠牲になり、窓には「出ていけ!」と血文字が書き込まれた。捕らえられていたクリストファーを助けたマリアたちにプーとピグレットが襲い掛かる。

 

 

 可愛らしいプーさんがはちみつの代わりに人の生き血を啜るというゲテモノホラー『プー あくまのくまさん』ほぼ出オチで終わっており、壺の中には、はちみつの残りカスしかなかった。原作に対する新解釈とかそういうのは一切なく、そもそも原作無視も甚だしい。プー達が飢えて仲間を食い殺すというのも変。みんな普通に木の実取ったり、魚釣ってなかった?

 原作無視といえばプーとピグレットの図体。僕はてっきり2~3等身のぬいぐるみを動かしてスゴイ勢いで襲ってくるのかと思ったら大人が入った着ぐるみにプーやピグレットの被り物をしているだけで、そいつらが冷凍ナイフやハンマーで殺しに来る。それはプーじゃなくてジェイソンやブギーマンなんだよ。

 

 低予算でCGなんてまともに使えなかったのはわかるけど、プーさんの世界を使っている理由がほとんどないってのは問題だね。殺しのテクニックもありきたりのものばかりでセンスが感じられない。走って逃げればすむものを、どいつもこいつも殺されるためにわざと向かっているようにしか見えない(ダメなホラーの典型)。画面も暗すぎて何やってんのか全然わからない、きっと照明代をケチったのだろう。

 思えばくまのプーさんを使ったのも原作がパブリック・ドメインになったから金をかけなくていいからだろうなきっと。

 なぜか続編、シリーズ化が決まっていて、モヤモヤさせる終わり方をした本作はロッテントマトのワースト100に入るほど壮絶にズッコケ失敗したが、現在公開中の「2」は大ヒット中で評論家の評判も上々。何があった!?「1」が大失敗で「2」が大成功するのは珍しい。「1」のおかわりはもう結構だが、「2」が気になってしょうがないぜ!

 もっと美味いはちみつを舐めさせろ!すっぱいはちみつ映画はもう御免。