怖い人形のせいで経営破綻!『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』 | しばりやトーマスの斜陽産業・続

怖い人形のせいで経営破綻!『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』

 同名のホラーゲームの実写化『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』は閉鎖したピザ・レストランの夜間警備員に雇われた男が店内をうろつく殺人アニマトロニクスから5夜逃げ回るまでを描いた映画だ。という内容を聴くとニコラス・ケイジ主演のコメディホラー『ウィリーズ・ワンダーランド』を彷彿とさせるが、こちらが先である(『ウィリーズ~』の制作者は『ファイブ~』から着想を得たとしている)。『ファイブ~』は2015年に実写映画制作が発表されたが、企画が進まずに権利を得ていたワーナー・ブラザースが放棄。ホラー映画でヒットを連発する安心のブランド、ブラムハウス・プロダクションズの元、2017年企画が再始動するが脚本の練り直し、監督交代などを経て映画は6年間停滞。その間に後追い企画の『ウィリーズ~』が先に公開されてしまった!ロジャー・コーマンみたいなもんか。

 

 ひたすら逃げ回るだけの映画なんてつまらん、とばかりに『ウィリーズ~』は名前のない男ケイジ(ゲームの主人公も名無しの男なので、ゲームの設定を踏襲したと思われる)が田舎道をシボレーカマロで爆走していたところタイヤがパンク。修理屋のオヤジに車を預けるがブラックカードしか持っていないケイジは修理代が払えない。そこでオヤジは閉鎖したテーマパーク、ウィリーズ・ワンダーランドのゴミ掃除を依頼。それをやってくれたら明日の朝に車を渡すと。

 ケイジは言われた通りに従業員制服を着て、掃除をしているとテーマパークのアニマトロニクスが動き出し襲い掛かってくる!このテーマパークでは殺人鬼が客を攫って怪しげな儀式にふけっており、殺人鬼たちの魂がロボットに乗り移っていたのだ!ケイジは襲い来るロボットたちを剛腕でねじ伏せていくのであった・・・

 

 恐ろしくもバカバカしいノリがバカ受けしてケイジファンには評価が高い一本である。もちろん本家の『ファイブ~』はそんなコメディ要素は一切ないのであった。

 いい年て定職についてない男、マイク(ジョシュ・ハッチャーソン)は子供のころ、キャンプ場で弟のギャレットを車で連れ去られるという過去のトラウマに苛まれ、そのせいで何をやっても長続きしない。同居する10歳の妹アビー(パイパー・ルビオ)は家に引きこもりイマジナリーフレンドと会話して絵を描いている。まともな会話もない兄妹を見て叔母のジェーン(メアリー・スチュアート・マスターソン)はマイクに妹は育てられないと、親権を取り上げようとする。

 意地悪な叔母に妹は任せられないとマイクはカウンセラーのスティーブ・ラグラン(マシュー・リラード)から80年代に閉鎖したピザレストラン、フレディー・ファズベアーズ・ピザの夜間警備の仕事を紹介される。

 仕事中に地元警察官のヴァネッサ(エリザベス・レイル)からレストランが閉鎖されるに至った児童失踪事件の話を聞かされるマイク。眠ると弟が目の前で連れ去られる記憶が何度も蘇るマイクは、夜間警備をするようになってから、5人の少年少女が夢に現れるように。彼らは弟を連れ去った犯人の姿を見ているのでは?

 アビーのベビーシッターを頼んでいたマックスと連絡が取れなくなり、仕方なくマイクは夜間警備の仕事にアビーを連れていく。そこでアビーは店内に廃棄されたままになっているマスコットキャラのアニマトロニクス4体と「友達」になっていた。

 

 弟を攫った誘拐犯にたどり着きたいマイクは夢の中に出てくる少年たちにアビーを引き渡す代わりに弟が生きている世界を見せてやる約束をしてしまう。現実と夢の世界がごっちゃになってしまうマイクは、アビーをこれ以上見ていられないと叔母に引き渡す約束もしてしまい、アビーと決裂する。

 それが誤りであったと気づいたマイクは約束をなかったことにしようとするが、少年たちは児童誘拐犯によって連れ去られてしまった被害者の幽霊であった。新しい仲間としてアビーを手に入れようとする幽霊たちはアニマトロニクスを操ってマイクを引き裂く。

 病院に運ばれたマイクはヴァネッサから恐るべき真相を伝えられる。誘拐事件の犯人はフレディー・ファズベアーズ・ピザのオーナー、ウィリアム・アフトンであり、ヴァネッサはその娘で虐待を受けており、アフトンの後始末を負わされていた。アビーを取り戻すためマイク、そして父の支配から逃れようとするヴァネッサは再びピザ屋へ向かうのだが・・・

 

 

 原作ゲームはアニマトロニクスからいかに「逃げるか、隠れるか」という内容だから、それだけじゃあ映画にならんということでこのような肉付けが行われたのだろう。『ウィリーズ~』みたいにロボットを破壊できるのではホラーにならないのでマイクはヘナチョコ野郎にされ、夢の世界に逃げ込んで現実と戦わない男にされた。これはうまい改変でゲームらしさも損なわれていない。一方で余計な要素が付け足されたためにテンポが失われた(ゲームは1夜10分ぐらいで進行するから上映時間110分は長すぎ!)のは惜しまれる。

 本作はロッテントマトの評価が観客スコア87%、批評家スコア32%とくっきり分かれている。観客の多くはゲームファンであり彼らにとって満足できる内容で、ブラムハウスもゲームファンのための映画として制作した模様。モブキャラには原作ゲームの実況者(!)らがゲスト出演しており、ファンならニヤリとする一方、ゲームを知らない人からするとやたらとモタモタして、退屈な描写が続くので欠伸が出てしまうというBOMBを食らわされている。

 アメリカで同時期に公開した『マーベルズ』が不振に終わる中、はるかに低予算で効率よく稼いだ『ファイブ~』は二匹、三匹目の泥鰌を狙って続編の可能性が語られている。なにしろ人形は使いまわしできるのだから。しかしこの人形、昼間に見ていても面構えが怖いので、店がつぶれた原因はこの人形のせいじゃないのか?ピザ屋が子供を攫うというのも陰謀論でおなじみのやつなので、アメリカ人が恐怖におののいたのも納得!

 

 『ザ・スーパーマリオ・ブラザーズ・ムービー』なんかもそうだが、コントローラーもまともに扱えない批評家のジジイたちに理解されなくても映画はヒットするという新機軸を発掘したブラムハウス、やはり安心のブランドである。頭の固いジジイどもは人形に食われとけ!