カラオケ行こ! (ビームコミックス)
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合唱部長の中学三年生、岡聡実(斎藤潤)はコンクール会場から帰る途中、いかつい男からカラオケに誘われる。その男、成田狂児(綾野剛)はヤクザの若頭補佐。近々、組長主催のカラオケ大会が催され、そこで一番歌が下手だった「歌ヘタ王」は組長自ら変な入れ墨を彫られてしまうのだ。なんとか歌ヘタ王を回避したい狂児は雨の日に立ち寄った合唱コンクール会場で聞いた聡実のソプラノに感動し、カラオケのレッスンを頼み込む。
『カラオケ行こ!』は同名漫画の実写化で、中学生男子とヤクザのけったいな友情物語(冒頭の時点ですでにどうかしている)。そもそもソプラノが出ることと、カラオケはあまり関係ないんじゃあ・・・
狂児はそんなことにかまっていられない。なんとしても最下位だけにはなりたくない!早速カラオケで狂児は十八番のX JAPAN『紅』を絶唱する。
「紅だぁーっ!!!!!」
カラオケボックスに綾野剛の裏声が木霊する!適当なアドバイスで切り抜けようとする聡実だがカラオケオボックスまでついてきたのが運の尽き。狂児はセンチュリー(ヤクザ御用達の車)に乗って学校にまで現れ、LINE交換までしてしまったのでもう逃げられない。挙句はカラオケのレッスンを狂児が周囲に話したことで、他のヤクザたちも聡実先生(笑)のレッスンを受けに集結。
そのうちのひとりが狂児の兄貴分(橋本じゅん)で、彼は万年最下位。狂児は兄貴分がみんなのために犠牲になってくれていると思い込んでいたが、今回だけは最下位がイヤになったのか、「ひまわり音楽教室」に通いだす兄貴分!
「そんな兄貴・・・見たくなかった・・・」
おかげで周囲から「ひまわり」呼ばわりされることになった兄貴分が熱唱するのは・・・ももいろクローバーZの『行くぜっ!怪盗少女』!ひまわりに通って歌うのがそれかい!しかも振り付けまで完コピして(笑)
橋本じゅんが歌う「あなたのハート いただきますっ!!!」は悶絶必至。
ヤクザ相手がイヤでしょうがなかった聡実だが、いつのまにやら友達も同然の関係になった狂児のために『紅』の英語詞の翻訳までするのだった。「去ってしまった女の幻を追いかける」という意味を含んだ歌詞につい感動してしまう(観客ともども)。
思春期を迎え、さらにソプラノの高音が出なくなった聡実と、カラオケ大会の最下位をかわそうとする狂児、二人はともに人生の転機を迎えることに。実家ではやや頼りなさげな父親を見ている聡実は狂児に(口が裂けてもいえないが)理想の父親像を見出す。
とはいえ彼はヤクザなのであり、カタギとは違うのだ。部員たちとの言い争いを茶化された聡実は心にもない言葉を言って狂児との縁が切れてしまう。やるせない思いを抱え聡実は幽霊部員扱いになっている映画鑑賞部に入り浸る。そこはビデオデッキで古い映画をただ見続けるだけのクラブ。デッキは壊れているためテープを巻き戻せない。行ったっきり帰ってこない、戻せないビデオテープのように聡実取り戻せないしくじりをしてしまい、去ってしまった幻を追うように走り出す。
監督の山下敦弘は『リンダリンダリンダ』『味園ユニバース』で音楽と青春の完璧なコラボレーションを実現させた人なので、これもまた音楽と青春が融合し、男同士の友情物語、ブロマンスとして一級品。
ラストは『紅』のLittle Glee Monsterのカバーバージョンでこれまた最高!
お前は走り出す 何かに追われるよう
俺が見えないのか すぐそばにいるのに