4人しかいない!『65/シックスティ・ファイブ』 | しばりやトーマスの斜陽産業・続

4人しかいない!『65/シックスティ・ファイブ』

 高度に文明が発達した惑星ソマリスで妻子と暮らしていたミルズ(アダム・ドライバー)だが、娘のネヴァイン(クロエ・コールマン)は難病に冒されていた。治療費を稼ぐためにミルズは惑星探査船の任務に就く。高給だが調査のため2年間は帰ることができない。

 

 ミルズが宇宙船の操縦士として惑星探査の任務に出て間もなく2年が経とうとしていた。コールドスリープに入った宇宙船の乗組員とともに帰路についた宇宙船は突如、小惑星帯に襲われ、宇宙船は真っ二つ。ただ一人目を覚ましたミルズは宇宙船を未知の惑星に不時着させる。コールドスリープしていた乗組員は全員死亡。緑の自然に覆われた星の表面には大気があり、ミルズは脱出ポッドの信号を追って外へ。ポッドにはコア(アリアナ・グリーンブラッド)という少女がおり、彼女がミルズ以外唯一の生存者だった。

 コアはミルズとは異なる言語を持っているため身振り手振りでしか会話ができない。コアは両親の姿を探し求めているが、みんな死んだと伝えることができないミルズ。彼女に故郷に残してきた娘の面影を感じ取ったミルズは捨て置くことができず、山頂に墜落した宇宙船の片割れまでたどり着けば脱出できるため、そこに君の両親が待っていると嘘をついてコアを連れだす。

 山頂までの道中、恐竜たちに襲われる二人。この星は6500万年前の地球だったのだ。二人は宇宙船を襲った小惑星群が地球の地表に迫っていることに気づく。脱出できなければ命はない!

 

 

 スコット・ベックとブライアン・ウッズという『クワイエット・プレイス』の脚本コンビによるSF映画で、恐竜から身を隠すために「静かにしろ(be quiet)」というセリフまである。舞台を変えただけでほぼ同じ話

 音を立てると襲い掛かってくる怪物相手にどう立ち向かうか?という部分に凝った見せ方をしていた『クワイエット・プレイス』と違い、この映画は襲い掛かってくる恐竜を退治する方法が「銃でやっつける」ぐらいしかないし、山頂に向かってひたすら進んでいくだけでひねりがない。単調かつ退屈なお話は一向に盛り上がらないのであった。

 唯一のひねりは、実は遥か遠い未来の話ではなく、6500万年前、すでに高度に発達した文明を持つ宇宙人が地球に来ていた!というところ。それも「だからどうした」レベルのネタで、それが現在の我々地球人の進化に何か影響を与えたとかいうわけでもなく、現在の技術水準以下のガジェットを使っているのも下手くそなSF描写でしか思えない。娘の真相について説明される場面もほぼ予想通りなので驚きがない。ひねりも驚きもないSF。

 登場人物がたったの4人で壮大なSFを表現しようとした度胸だけは評価する。65と言いながら4人しかいないんだから。タイトルに騙された!