誰を呼ぶ?『ゴーストバスターズ/アフターライフ』 | しばりやトーマスの斜陽産業・続

誰を呼ぶ?『ゴーストバスターズ/アフターライフ』

 1984年公開の『ゴーストバスターズ』、1989年公開の『ゴーストバスターズ2』に続く正当な続編が『ゴーストバスターズ/アフターライフ』である。

 

『ゴーストバスターズ』は超常現象を研究する一族に生まれたダン・エイクロイドがコメディアン仲間たちと作った映画だったが、仲間のビル・マーレイとハロルド・ライミスはやがて仲違いをする。マーレイは病床のライミスを見舞って和解したそうだが、続編の完成を見る事なくライミスは2014年にこの世を去る。ライミス亡き後につくられた『ゴーストバスターズ』(2016)はイレギュラーの形のリブート版になった。あちらはあちらで有意義な作品ではあったが、こんなアフターライフで良かったのか?いや良くない!再び彼らは結集した。ライミスの魂に捧げる真のアフターライフを作るのだ。

 

 差し押さえを食らいニューヨークの家を追い出されたシングルマザーのキャリー(キャリー・クーン)と息子のトレヴァー(フィン・ウルフハード)、娘のフィービー(マッケナ・グレイス)はキャリーの亡くなった祖父の屋敷を相続するため大都会NYからド田舎のオクラホマ州サマーヴィルに越してくる。祖父は家族とも縁を起って何かの研究に没頭していたらしいが、キャリーは家族を捨てた祖父を嫌っていて子供たちに過去を話してはくれない。周辺の住民からも変わり者扱いされていた祖父は何を研究していたのか?トレヴァーは倉庫から古い自動車、フィービーは家の地下から不思議な道具を手に入れる。

 サマースクールの教師グルーバーソン(ポール・ラッド)はそれらの道具をゴーストバスターズの装備だという。フィービーの祖父はかつてNYをゴーストの脅威から救った伝説の英雄、ゴーストバスターズのメンバー、イゴン・スぺングラー(ハロルド・ライミス)だったのだ!

 サマーヴィルの街をつくった偉人シャンドア(J・K・シモンズ)はNYを混乱に陥れた邪神ゴーザを蘇らせるべく、悪夢を再現しようとしていた。フィービーとトレヴァーはゴーザの復活を阻止しようとした祖父イゴンの代わりに友人ポッドキャスト(ローガン・キム)、ラッキー(セレステ・オコナー)らと手を組み、ゴーストバスターズとして立ち上がる。

 

 

 初代から子供、孫の世代に“継承”される物語になっているのだが、制作自体も“継承”の元に行われている。監督のジェイソン・ライトマンは初代『ゴーストバスターズ』の監督、アイヴァン・ライトマンの息子だ。編集のデイナ・E・グローバーマンもライトマン親子の作品に長年関わっており、その他気心の知れたスタッフが揃えられ、初代のように家族のような体制で作られているのだ。

 30数年前から続く続編となると当時のテイストを残しつつ、いかに現代的アップデートを図るか、バランスのとり方が難しくなるが、本作は絶妙のバランスでクラシカルな良さを残しつつ、現代の視点で観てもまったく古臭くなってはいない。

 冴えないはみ出し者たちが思いもがけず街の英雄になっていくが、最初はなかなか周囲に理解してもらえないというモヤモヤする展開はきちんと初代の展開をなぞっており、動画サイトなどでゴーストバスターズらの活躍が「知る人ぞ知る伝説の映像」として残されているが当時を覚えている人も少なくなっている上に大都会の話だから田舎のオクラホマ州の人間は話自体を信じていないっていうのも広大な土地のアメリカらしい話だ。田舎の人間は都会をテレビや映画でしか知らないっていうね。田舎に舞台を移した設定の変更も上手く生かされている。

 

「Who you gonna call?(誰を呼ぶ?)」

 お馴染みのセリフや有名すぎる主題歌もきちんと使用され、初代の登場人物が再登場するサプライズも盛り込まれていて、彼らのアフターライフには泣けてくるしクライマックスは感動必至。まさかゴーストバスターズで泣かされるとは思ってもみなかった…ライミスの死で空中分解しそうだったメンバーもこれで再集結ですね!

 ヒロインを演じたマッケナ・グレイスは世の中と上手く折り合えない科学オタクのメガネっ子というキュートなキャラクターで、とかくゴーストバスターズシリーズの中で軽く扱われがちなリブート版の女性キャラクター像をきちんと踏襲しており、痒い所に手が届いているの、完璧ですよジェイソン・ライトマン!本国バスターヘッド(ゴーストバスターズマニア)のみなさんの大満足でしょう。