犬が修斗する映画『ジョン・ウィック:パラベラム』 | しばりやトーマスの斜陽産業・続

犬が修斗する映画『ジョン・ウィック:パラベラム』

※これは前ブログの過去記事(2019年10月10日)の再録です


 キアヌ・リーブスの大ヒットシリーズ『マトリックス』(今年で公開20周年!)でキアヌのダブル・スタントを担当したチャド・スタエルスキとコンビを組んで制作された『ジョン・ウィック』シリーズ最新作『ジョン・ウィック:パラベラム』はかつての仲間や恩人に見捨てられ、孤立無援となったジョン(キアヌ)が自身のルーツを追い求めながら血なまぐさい世界から解き放たれて自由になりたいという願いのために世界中を旅するサバイバル・ロードムービーだ。

 ジョンは愛する妻のために殺し屋稼業を引退しようとするが、手練れを失いたくない組織から正体不明の殺し屋ババ・ヤガを殺せば引退を認めるといわれる。組織はジョンを失うぐらいならいっそ死んでしまえばいいと思っていたが、予想を裏切りジョンはババ・ヤガをしとめる。しかし正体がわからないババ・ヤガの居所を突き止めるためにイタリアン・マフィアの組織の力を借り、その際「どんな仕事でも一度だけ引き受ける」という誓約をしながら、それを守らず引退したので家を爆破されてしまう。そして殺し屋専門のコンチネンタル・ホテルの掟を破りイタリアン・マフィアのボスをホテル内で殺したためにホテルを出禁になり、1400万ドルの賞金をかけられ世界中の殺し屋に命を狙われる。世界中が敵!

 ジョンは自由になろうとしただけなのに、周囲の人間がそれを許さず「お願いだから、かまわないでくれ!」とジョンがいえばいうほど争いを招き入れ、戦火が拡大する。爽快感よりも死の匂いが付きまとう戦いを彩るのがシリーズ用に考案された「ガン・フー(銃+カンフー)」、「ナイ・フー(ナイフ+カンフー)」「カー・フー(車+カンフー)」といった格闘術。ついに今回は馬を使った「マー・フー(馬+カンフー)」「ドッグ・フー(犬+カンフー)」が登場、特にドッグ・フーは誰も見たことがない衝撃のアクションであると断言できる。
 まず犬に命令すると相手の腕に噛みつく。そして加えたまま人間を床に投げたおす。とどめは急所に噛みついてジ・エンド。これって打・投・極だから佐山サトルが考えた修斗じゃないか!犬が修斗する映画・・・僕は初めて見た!タイガーマスクに宣伝してほしかった

 拡大化する物語はついにライバルの殺し屋まで生み出した。それがジョンを倒して殺し屋No.1の地位を狙うゼロ。演じるは『ジェヴォーダンの獣』『クライングフリーマン』のマーク・ダカスコス。本当は真田広之が出演する予定だったが、真田が張り切りすぎて撮影前にケガをしてしまった代役らしい(真田、何してんの!)
 ダカスコスは微妙なイントネーションの日本語を操る殺し屋で、普段はNYでカウンターのある寿司屋の板前をしている。殺し屋兼寿司板前の部下として忍者の末裔を雇ってる(そのうちのひとりがヤヤン・ルヒアン)んだけど、店のBGMがきゃりーぱみゅぱみゅの「にんじゃりばんばん」という日本人でもやらんようなベタなギャグをやっていて、なんだこれくしょんと思った。誰が教えたんだよ。

 つらい物語の中でも笑いを忘れないチャド・スタエルスキとキアヌのメッセージ、しかと受け止めたぜ。ジョンの人生に犬が必要なように。この争いが次なる争いを生む物語にも笑いが必要だった。

 ちなみにダカスコスの寿司屋のカウンターには猫がいて、食べ物の店に動物置くなよ!と一瞬思うが、動物園前の居酒屋、かんむり屋にも猫が常時いるので別におかしくはなかった。さすがキアヌ、日本のラーメン好きなことはある。かんむり屋までチェックしていたとは・・・(してません)