紳士の犯罪映画『ジェントルメン』 | しばりやトーマスの斜陽産業・続

紳士の犯罪映画『ジェントルメン』

 

『ジェントルメン』はガイ・リッチー監督の新作で最近は『シャーロック・ホームズ』シリーズや『アラジン』などブロックバスター系大作を手掛けることが多かったリッチーが初期の傑作『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』『スナッチ』の路線に原点回帰した犯罪映画だ。

 

 

 パブに現れたスーツ姿も凛々しい紳士ミッキー・ピアソン(マシュー・マコノヒー)は電話の最中、背後から何ものかに銃で撃たれ、グラスは血に染まる(この時点でミスリードが仕掛けられているのでご注意)。

 

 レイモンド(チャーリー・ハナム)の自宅に私立探偵のフレッチャー(ヒュー・グラント)が突然姿を見せ「俺が書いた映画の脚本を2000万ポンドで買わないか?ハリウッドにも売り込もうと思ってるんだけど」と迫る。それはレイモンドの雇い主、ミッキーが一代で築いた麻薬王国を根底から揺るがすスキャンダルだった。

 ここから映画はフレッチャーが書いた脚本という形でミッキーの生い立ち、何者でもなかった男が麻薬ビジネスで巨万の富を築き上げるまでの物語が過去形で語られる。アメリカ生まれのミッキーはイギリスの名門オックスフォードに入り、上流階級のお坊ちゃん相手にマリファナを売りつけるビジネスで懐を温めていたが、次第に勉強そっちのけでビジネスを拡大。相続税を払えない貴族の土地を管理し、そこでマリファナを栽培するというやり方で12か所の麻薬栽培所「農園」を手にしたミッキーはいつしかイギリスのアングラ界を支配する大物に成長。彼が人生で積み立てた資産は4億ポンド(500億円)。しかし裏社会の血で血を洗うもめ事に嫌気が差したミッキーは妻ロザリンド(ミシェル・ドッカリー)との穏やかな暮らしを選び引退を決意。自分の麻薬王国を誰かに売り飛ばすことを決める。

 

 名乗りをあげたユダヤ人の大富豪マシュー・バーガー(ジェレミー・ストロング)にミッキーは4億ポンドで売却を持ちかけるが、ミッキーの「農園」はトドラーズと名乗るヤンキーどもに襲撃され、中のマリファナを運び出す様子は彼らによってYouTubeにアップされてしまう!その動画を見たスラムの不良を厚生させるジムのオーナー、コーチ(コリン・ファレル)はトドラーズがジムに通っている不良たちだと知り、麻薬王ミッキーからの報復を恐れたコーチは借りを返すまではミッキーの元で働くことを彼の片腕レイモンドに申し出る。

 

 単なる不良に過ぎないトドラーズがミッキーの「農園」を知るはずもなく、背後に何者かの存在を感じ取ったミッキーは麻薬王国を買い取ろうと接近してきたチェイニーズマフィアのNo.2ドライ・アイ(ヘンリー・ゴールディング)がはした金を提示してきたので軽くあしらったことを思い出しドライ・アイのボス、ジョージ卿(トム・ウー)に赤痢菌を飲ませ、手を引けと宣告。

 ところがドライ・アイはジョージ卿から代替わりを狙っており、農園襲撃はドライ・アイの独断専行だった。ドライ・アイの手下ファ・アックがトドラーズに農園の場所を教えて襲撃したこともわかり、コーチらがファ・アックを捕まえるものの、彼は隙をついて逃げ出し、列車に踏みつぶされる(!)。ドライ・アイは「もう年寄りの時代じゃない」とジョージ卿を殺し、ボスに納まる。一方、レイモンドはミッキーが懇意にしている貴族のプレスフィールド卿から愛娘のローラ(エリオット・サムナー)がマリファナ仲間たちとつるんでいるので連れ戻してほしいと依頼を受け、レイモンドが部下たちともに現場に向かっていた。レイモンドらはすぐにローラを連れ戻すのだが、チンピラたちと諍いを起こしアスラン(ダニー・グリフィス)という若者がベランダから落ちて転落死。事件を隠蔽するためレイモンドは死体写真を撮った不良のスマホともども遺体を回収。

 これらの騒動はすべてフレッチャーのカメラに撮られていた。彼はタブロイド紙の編集長ビッグ・デイヴ(エディ・マーサン)からの依頼でミッキーを追っていた。デイヴはあるパーティの席上でミッキーに握手を拒まれ、恥をかかせてやろうとフレッチャーに身辺を洗わせていたのだ。

 

 

 フレッチャーの書いた映画の脚本という形でミッキーの麻薬王国に関する犯罪が暴かれていくというスタイルで数多の登場人物が複雑に絡み合う物語を簡単に説明しており、最初の方に語られた何気ない話が伏線になっており、徐々に回収されていくテクニックは『ロック、ストック~』『スナッチ』あたりではお馴染みのもので、初期の頃からリッチー監督のファンだった観客はニヤリとできるところだろう。

 血みどろの犯犯罪劇でありながらところどころに散りばめられたユーモアも一味効いていて、荒事では後れを取らないレイモンドらが若いチンピラが逃げるのを追いかけると息が上がって足が止まってしまう(オッサンだからね)あたりなんて自分もオッサンなのでよくわかるよ!ギャングたちがやたらと凝ったファッションしているのも決まっているし、その辺の犯罪映画とはちょっと違うセンスの良さを見た。まさにジェントルメン、紳士の犯罪映画といったところか。

 

『キングスマン』のヒットでちょっとおしゃれなアクション映画が流行っているところ、その先駆けともいえるリッチー作品だがそういえば『キングスマン』の監督、マシュー・ヴォーンは『ロック、ストック~』他リッチー作品の製作に関わってるんだよな。これはもう「俺ならこうやるね」というリッチーからヴォーンへのメッセージだろう。

 

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