社会派ホラー『ザ・シェフ 悪魔のレシピ』 | しばりやトーマスの斜陽産業・続

社会派ホラー『ザ・シェフ 悪魔のレシピ』

※この記事は前ブログの過去記事(2017/2/13)の再録です

 

 

 悪徳判事の手によって投獄された理髪店主が復讐のため悲惨な人生を送ってきたパイ屋と結託して人肉入りパイをつくるホラー映画『スウィーニー・トッド』は後のティム・バートン版(07)が有名だけど、97年にもあってそれはあのアルバトロスが配給していて、さすが目のつけどころが叶井俊太郎。

 それにインスパイアされたというのがこちらの『ザ・シェフ 悪魔のレシピ』だ。ロンドンの郊外でケバブ屋を営むクルド人移民の親子。彼らはイラクの迫害を逃れてイギリスまで流れてくる。治安がいいとはお世辞にもいえない街は酔っぱらいやタチの悪い不良たちが毎晩ツバとゲロを道に吐き散らす(このシーンが何度もインサートされて、イギリスってホント治安が悪いんだなーと思わされる)。
 そんな連中に耐えながら店を続ける親子だが、ある日父親が酔った若者たちに絡まれて突き飛ばされ、死んでしまう。目撃者もいないため殺人ではなく事故として処理される仕打ちを受け、残された息子サラール(ジアド・アバサ)の怒りは溜まっていく。
 息子のために大通りにある綺麗な建物に店を持たせてやろうと考えていた父の意思をついで店をやっていこうとするが、利益が上がらない店は潰れる寸前で、この日も店内で寝ていた客が目を離した隙に厨房に入り込んで勝手にポテトを揚げていた。サラールは客と揉み合いになり、うっかりそいつの顔をフライヤーに放り込んでしまう(うっかりしすぎだよ!)ギャー!!
 その死んじゃった客を「警察に電話したら店が潰れてしまう」と考えたサラールは死体をバラバラにした上でミンチマシーンにかけてケバブの串に貼り付けていく。

「肉を仕入れる金もないんだ。こいつで代用してやれ」

 翌日、ロクでもない客がやってきたのでサラールは「旦那、いい肉入ってますよ」と昨日の死体をケバブに混ぜちゃう。「めっちゃ美味いやん!」とバカな客は大喜び。夜にブッサイクな女二人が男からの電話がかかってこないだのどうだのとイギリス一どうでもいいことで口論を始め、なだめに入ったサラールにぶち切れたブサイクがサラールのノートPC(完成間近の卒業論文が入っている)を床に叩きつけて反省もしない。怒り心頭のサラール、ラムチョップでブサイクをぶん殴って「自分が何をしたのかわかってるのか」と首をかっさばいてまたミンチマシーンに…

 いつしか7年の月日がたち、とっくに卒業を諦めたサラールはたちの悪い客をミンチマシーンに放り込み、おいしいおいしい人肉ケバブとして提供し続け、「この店は美味い」とコンテストで賞をもらうほどの有名店に。しかし自分はおおいしいケバブ屋をやるために生きてきたのか?父親が息子のために買おうとしていた物件はカリスマ起業家が「若者が集まるナイトクラブ」としてオープンさせて治安の悪化に拍車をかけている上にサラールの店を地上げしようとしていた…


 身の毛もよだつおそろしいホラーかと思いきや、イギリス映画王道の労働者、移民がうける差別をテーマにしたイギリスの社会問題を問いかける社会派ホラーだったりする。イギリスはこういう労働者階級、社会的弱者が背負う問題提起の映画が定期的につくられており、それはそういった問題がいまだに解消されてないからなんだけど、問題から目を背けようとしないんだよな。日本にだってそういった問題はいっぱいあるはずなんだけどな~なぜそういう映画がきちんとつくられないのか?問題から目を背けるなら、ケバブにして食っちまうぞ!!