あたしらは飼い犬じゃねえ、野良犬だ!『女番長ブルース 牝蜂の逆襲』 | しばりやトーマスの斜陽産業・続

あたしらは飼い犬じゃねえ、野良犬だ!『女番長ブルース 牝蜂の逆襲』

※この記事は前ブログの過去記事(2016/8/30)の再録です

 

 

『温泉みみず芸者』でデビューした東映ポルノ女優・池玲子の主演第二弾。監督は『トラック野郎』シリーズをヒットさせ、『温泉みみず芸者』を始め『徳川セッ クス禁止令 色情大名』『エロ将軍と二十一人の愛妾』『現代ポルノ伝 先天性淫婦』など映画館のカウンターでタイトル名を口にするのは相当恥ずかしいタイトルのポルノ映画で一時代を築いた鈴木則文。

 この映画、シリーズ一作目なのに「逆襲」てタイトルについてるんだよね。『北京原人の逆襲』みたいなもんだ。神戸・三宮を我が物顔で闊歩する女番長グループ・アテネ団。団長の玲子(池玲子)、万引き真弓(杉本美樹)、おサセのサセ子(一の瀬レナ)は通りすがりの男(由利徹)に「おっちゃん、コーヒー代の100円恵んでえな」と近寄り、言葉巧みに「名門女子大の学生と2000円でどう?」と持ちかける。昭和40年代にしたってウリで2000円は安すぎると思うんだが…
 あっさり引っかかった男は(まあ、由利徹ですから)車のトランクを閉めてくるというサセ子に「あんたも後で締めてえな」とおしゃまんべな下ネタを飛ばす。当然のごとく男は眠り薬入りの酒を飲まされて有り金ふんだくられるのでした。

 男の車を拝借してトンズラする玲子たち。しかし車がエンストを起こしてしまう。別の車をパクろうとしたところ杉岡英二(一ノ瀬謙、後の滝俊介、『特捜エクシードラフト』の本部長代理など)をリーダーとする走り屋グループに出会い、バイクの後ろに乗せてもらうが空き地に連れ込まれ犯されそうになる。
 しかし黙ってやられるようなアテネ団ではない。金玉蹴り飛ばしてチェーンを振り回す玲子「怪我をしたくなかったら消えな!」そこに現れた巽次郎(流健二郎)率いる北神会の面々。「北神会なんか知らねえよ」と粋がる英二たちを叩きのめす。
 玲子は次郎に「借りはつくりたくない」と一晩だけ寝てもいいという。連れ込み宿で英二に抱かれる玲子。当時16歳(!)の池玲子のベッドシーン!未成年のヌードが見られたいい時代(年をごまかしてデビューしていたそうだが)だ。
 俺の専属にならないかともちかける次郎に「あたしはね、誰にも頭を下げるのが嫌な女さ。組織に組み込まれるぐらいなら、アテネ団は解散するよ」とつれない返事。しつこい次郎に「二、三度寝たぐらいで色男面しないでよ」と釘を刺すのも忘れない。カッコいいぜ、玲子!

 翌日、アテネ団に入りたいという女学生・宥子(渡辺やよい)がやってくる。見た目もおぼこい宥子をひと目でバージンだと見ぬいた玲子、「男にやられて一生負い目を感じるぐらいなら、よっぽどマシだからいうのさ」との勧めに応じて宥子は自分の指で処女膜を破る。宥子に自分は13の頃、おふくろのSEXを見て「動物みたい」とショックを受け、シンナーを覚え(なんでやねん)、ラリって友達と公園にいるところを大学生に輪姦されて処女を失ったという壮絶な過去を語る玲子。
「団長もつらいことがあったんやね」
「バカ、おセンチは似合わないよ」

 と浪花節な会話。「とっとと制服なんか脱いじまいな。新しい服を揃えにいくよ」とデパートへ。適当に服を紙袋に放り込んでいく玲子たち。万引きじゃねえか!現行犯で店員に引っ張られていく真弓だがそんなことにビビるアテネ団ではない。

「おっちゃん、万引きって誰にいうてんねん!」
「さあ、盗ったかどうか調べてもらおうやないの、全部調べてんか!」


 と店長室でパンツ一枚になって啖呵を切る真弓。「ここはトルコ風呂じゃない」とうろたえる店長らに「もし盗品がでてきえへんかったらただじゃすまさへんで。その覚悟あるんやったら調べてんか!」とついにはパンツまで脱いでしまう。とっくに盗品はアテネ団の仲間に渡してしまっていたらしく、当然何も出てこない。さすが「万引き真弓」!そこに乗り込んできた玲子が「この落とし前どうつけてくれるんだよ」と店長から口止め料をせしめる。さらに真弓が「おっちゃん、うちの裸の見料は?」と二人からきっちり5千円ずつ巻き上げようとするが財布がすっからかんなので代わりに股間を蹴りあげて去ってゆく。なんて恐ろしい…

 アジトに宥子を連れてゆく玲子たち。そこで団に入ったらアテネ憲法(!)を順守してもらうと告げる。

1.団長の命令には絶対服従すること
2.団員が特定の男をもったり従属したり支配を受けることを厳禁する
3.団の秘密は固く守ること。口外した時は死の制裁をも甘んじてうけること
4.脱退は全員一致の意見を必要とする
5.団員は力と度胸を重んじ腕力の強化に務めること


 と世間のルールに従うことを嫌うくせにはみ出し者同士ではより厳しいルールをつくって守らせるというヤンキーの定番に習う玲子たちなのだった。そこに二度目の少年院入りから帰ってきた恐喝のジュン(賀川雪絵)がやってくる。ジュンに仁義を切り合う団員たち。ジュンは他の団員たちにはつるむが、「アテネ憲法だのなんだのとうるさくなったねえ。大体そういうのが嫌でやさぐれたんじゃねえか」と玲子には嫌味(正論)をいうのだった。以後玲子とジュンは対立するようになる。

 北神会の上部組織、極道の秋本組では組長の秋本剛(安倍徹)がムショ帰りの組員、土居を迎えていた。土居が対立組織の組長を殺して5年臭い飯を食っていたおかげで、秋本組はさらに上部組織の阪神連合に入ることができたのだが、功労者の土居にはつめたく、銭の稼げないヤクザは今の時代に合わないと露骨に嫌味をいうのだ。連合に取り入る200万を用意しながら土居にははした金の10万円を投げて渡す。それを興味もなさ気に拾い上げる土居。この土居を演じているのが天知茂で、ムショ帰りの冷や飯食わされる落ちぶれたヤクザの役にはまったく似合わないのだが、野心にギラつく登場人物たちの中ですべてにおいて冷め切っている演技は異彩を放っている。
 秋本は土居の妻だった梨恵(弓恵子)はパトロンを見つけてクラブ「リエ」を出していると告げられ物凄い目元の演技でショックを受ける天知茂。「リエ」で土居に接触する二郎は「土居さんに憧れてるんです」と熱っぽく語るが、土居は相変わらず冷めた風に今は、銭の稼げるヤクザがのし上がるんだという。パトロンを連れてきた梨恵に子供はいくつになったと聞くが、梨恵は「あなたの子供じゃありません」とにべもなく答える。

 山中でモトクロスをしている連中を眺めているアテネ団。そのうちの1人が走り屋グループのリーダー、英二だとわかる。「こないだはツイてなかったぜ」と悪びれない英二に「正直いってカッコいいわ」という玲子、モトクロスのツーリングに出かけるが公道を走れないので白バイに捕まる。英二は父親に手を回してもらって罰点を逃れる。なんとこいつ、製薬会社の社長のボンボンだったのだ。
 土居はデパートの屋上で梨恵と再会していた。「ただひとことお詫びを言いたくて」という梨恵に女の5年は長いからと赦す。すると幼い女の子がメリーゴランドに乗せてという。梨恵の子供であると直感した土居は女の子と一緒にメリーゴランドに乗る。本来ならちょっとおかしい場面なんだろうけど、当然天知茂なのでなんとも厳ついシーンになってしまうのだった。


 篠原由紀(潤まり子)という歌手のコンサート会場前にいるアテネ団。艶歌のひろみ(西来路ひろみ)が昔、歌手を目指して同じ学校にいて向こうは売れっ子歌手、自分は挫折してしまったが由紀が夢を叶えてくれたので満足しているという。
 そこに由紀がやってきてひろみは近づくが、由紀はこんな子は知らないとそっけない態度を取る。通りがかった二郎に小馬鹿にされたジュンと宥子は仕返しを企む。それを聞いた二郎は由紀のスキャンダルを教えてやってもいいとトップ屋の牛島一六(山城新伍)を紹介。牛島の手引で由紀とパトロンの国会議員の密会現場を写真とテープレコーダーに撮ったジュンたちと二郎は議員の事務所に乗り込み強請をかける。姿を見せた由紀に二郎はかつて由紀の家の工場で働いていた際、盗みを疑われ追い出され、由紀に惚れて手紙を送るも「泥棒がラブレターを書いた」と言われたことを「一生忘れねえ」と写真とテープを世間にばらまいてやると息巻く。
 ところが議員は秋本組と懇意の仲で乗り込んできた秋本組幹部の紺野(林彰太郎)に激しく叱咤される二郎。形勢逆転と由紀は豹変、二郎をヒールで踏みつけ「なにさ愚連隊のくせに!ケダモノ!ダニ!」と唾を吐きかける。このままでは済まないと二郎はパトロンのマンションにやってきた由紀をエレベーターで襲ってしまう。上下するエレベーターの中で輪姦される由紀。その後由紀と議員のスキャンダルはゴシップ新聞の一面を飾ることに。クラブで祝杯を挙げる二郎、ジュンらと牛島。その場に見たことのない男が紛れ込んでいる。

謎の男「大将!ようやってくれたおめでとう!」
牛島「おいちょっと待て、コレ誰や?」
ジュン「イイ男だけど、しらねえや」
牛島「ちょっと待てよ。僕この人にっかつの映画でよう見たことあるぞ、君はナニモンや?」
謎の男「名前は藤田五郎いいまんねや。ジャーナリストのはしくれでんがな」


 この怪しげなジャーナリスト気取りを演じているのは渡瀬恒彦で役名の「藤田五郎」というのは渡瀬の兄、渡哲也がにっかつでヒットさせた無頼シリーズの原作者名。クレジットにも記載のないカメオ出演で、おそらく山城新伍のお友達ということで出演したと思われる。完全におふざけの場面で渡瀬も出演に乗じて女優陣とイチャイチャしたくてしょうがねえといった感じが笑わせる。
 その場に現れた玲子がアテネ憲法が守れなくなると連中を責めるが「ズベ公にそんなもんいるもんかい!」とジュンとの対立は深まるばかり。

 海水浴場でアテネ団と北神会がシノギをしている。北神会のヌケ作(山田喜芳)がサセ子にタイヤ10本盗んだら寝てやると言われ、警察に捕まってしまう。二郎はこれは貸しだと玲子にいう。
 宥子は仲間が捕まっても落とし前をつけさせないのは二郎が玲子に惚れているからだといい、惚れてなどいないという二郎に惚れていないのなら証拠として自分を抱いてくれと迫る。宥子は二郎に惚れているのだ。テントの中で宥子が二郎に抱かれたのを知った玲子はアテネ憲法を破ったと宥子を殴るが、自分ができないことをされたから悔しいんやろと宥子に指摘されてぐうの音も出ない。

 秋本組が高利貸しを接待するためにアテネ団の玲子を寝かせろと二郎に命令、二郎は玲子に海水浴場での借りを返せ、それが俺とお前の間の仁義だと玲子に言い聞かせるのだった。夕方、アテネ団は英二たちに誘われる。

「これからはカーセッ クスの時代じゃねえ、オートバイファックの時代だ!」

 という英二たちのバイクにトップレスで乗せられたアテネ団は英二たちに跨がられたまま「男がバテるまでの距離で勝負だ」とわけのわからない行為に付き合わされる。これがあの画像板とかでたまに出てくる「脳天までしびれる オートバイセッ クス」の元ネタな。



 英二と玲子は最後まで走りきり、見事勝利。英二の前で今晩だけは団長じゃない、ただの玲子でいたいんだという二人は夜通し抱き合う。二郎との仁義を果たさず、アテネ憲法をも破った玲子をジュンはリンチにかける。なんと疾走するモーターボートにロープでつないだ玲子を海中引きずり回しの刑!川崎国とか東松山のガキ共も真っ青のハード私刑に心底震え上がります。70年代は作り話が現実を上回っていたことがよくわかりますね。それに比べて最近の創作は現実世界に負けっぱなしなんだから…

 リンチ後、ジュンと玲子は新しい団長をサシのゴロマキで決めようということに。激しい殴り合いの末、玲子が勝利。ジュンは負けても気持ちはさっぱりしてると団を去ってゆく。
 二郎は高利貸しの接待に失敗したことを責められ、北神会の解散を命じられるが、兵隊だけは預かってやると言われあまりの仕打ちに歯向かうが袋叩きにあう。そこに現れた玲子を秋本組長はお前らは目に見えない鎖に繋がれた飼い犬だというが、あたしらは飼い犬じゃない、野良犬だと言い返す。二郎ともども殴られているところに土居が現れ、これ以上やるなら黙っちゃいないと二郎たちを救い出す。梨恵と出会った土居は女の子はあなたの子供だと告げられ薄々そうじゃないかと思っていたと。

 3000万円を用意するため覚せい剤精製に手を出そうとする秋本組は塩酸フェニールを手にいれるため製薬会社と取引を考える。秋本組の車を暴走族が取り囲んで嫌がらせをし、そのリーダーが製薬会社社長の息子、英二だと知った秋本は英二を誘拐し、生命と引き換えに塩酸フェニールを手にいれようとする。
 土居は秋本に盃を返したいとやってくる。そんな土居に秋本は最後に一仕事してくれれば縁を切った上に500万も渡すといい、土居は渋々仕事を引き受ける。そんなやつを信用していいのかという紺野に秋本は死人に口なし、秘密を知っているものは皆殺しだと言い放つ。
 秋本組の英二の父親との取引を知った牛島は(さすがトップ屋、というか一体どうやって手に入れたんだ)「こんなデカイネタは生涯掴めんで。50万でどや!」と銭ゲバぶりを見せるが「今は払えないが、うちらの体を担保にしてもええ」というアテネ団の団結に心動かされ正義のジャーナリスト魂をムラムラ(笑)させるのであった。


 オートバイファックやボート引き回し、あっさりカモにされる由利徹などバカとエロと暴力が巧みにミックスされた鈴木則文監督の演出は観客をまったく飽きさせず、クライマックスまでノンストップで楽しめる。何より出てくるズベ公女優がみんなカッコいい!あくまで男性的な見世物ポルノなんだけど男に決して媚びようとせず「飼い犬じゃねえ、野良犬だ!」とズベ公のプライドを貫く池玲子の生き様、惚れるわ。EXILEの『HiGH&LOW』なんて独立した生き様を持っている女性なんか1人もいなくて70年代の女性観にすら劣っているのがよくわかる。そもそもこの映画に出てくる男は(天知茂を除いて)バカばっかりで女の方が活き活きしてるもんな。
 低予算をものともしないスピード感とパワフルさに満ちた本作は面白い映画とは何かを再確認させてくれるといえよう。とにかく女優陣がもったいぶらずにこれでもかってばかりにおっぱいをぽいぽい出してくれて今時の乳首ひとつ出すのにチマチマもったいぶる女優たちは猛省せよといいたいね。おっぱいぐらい気軽に出せ!アテネ憲法よりもおっぱい憲法の成立を希望する。