新人ファッションデザイナーから始まる地方創世論 4:地域密着型協同作業が地方創世に寄与する仕組み | 伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

約11年に渡るヨーロッパの様々なステージのラグジュアリーブランドを経て日本に帰国し、衰退産業とも言われている日本の伝統技術を今の形で発信するためのプロジェクト”ARLNATA”アルルナータを主催しているディレクターの独り言です。
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 前回までに経済的に余裕の無い新人デザイナーが工場等の生産拠点である地方にアトリエを構え、工場とコラボレーションする事でお互いに足りない部分を補い合って洋服を作るというプロジェクトの内容を書きました。


<参照:新人ファッションデザイナー達による地方創世論 1:アパレルの生産拠点は地方にある

<参照:新人ファッションデザイナー達による地方創世論 2:デザイナーと工場の地域密着型協同作業

<参照:新人ファッションデザイナー達による地方創世論 3:地方密着型協同作業によるメリット


 その時にも書きましたが、よく地方の工場等は自分たちの技術等のアピールが上手でないという問題点が指摘されていますが、コラボレーションを受け入れさえすれば苦手なら苦手のままでいいんです。なぜならデザイナーが洋服を使って工場の宣伝を代わりにしてくれるからです。ただ彼らが世に出るように協同作業に邁進するのみです。うまくいけば小さなコストで大きな宣伝効果が生まれますし、うまくいかなくとも損失という程の大きな金銭的な損失はありません。だって、従来の方法よりもっと密にデザイナーと仕事をするようにするだけの話なのですから。では、いよいよそういった協同作業が軌道に乗って行くとどういう風に地方創世につながるのかについて考えてみます。今回で一応完結です。


 この協同作業プロジェクトがきっかけで注目されるデザイナーが出たり、もしくは例え有名にならなくとも経済的に余裕が無くても自分のコレクションを出せる方法がある、というような具体的な例が出てくれば、宣伝効果が手伝ってまた新しいデザイナーがこのプロジェクトに参加したいという話が来る様になるでしょう。そうなれば、このデザイナーもその地域付近に住む事になります。一緒に仕事をしたいというデザイナーがどんどん増えれば工場側としてもより宣伝効果が期待できる訳ですから、受け入れようとするでしょう(社員として受け入れるという意味ではないので念のため。あくまで完全に外部の人間ですが一緒に仕事をするという前提で受け入れるのです)。そうすれば規模を大きくせざるを得ない。宣伝効果が期待できてお金も回ってくると工場を大きくするための設備投資を始めます。工場が大きくなれば一緒に働けるデザイナーも増えて、その増えたデザイナー達は私生活においてお互いに情報交換や交流をするようになり、やがて小さな共同体(コミュニティ)をその地域に形成するでしょう。そんな動きを見ればビジネスになると思い工場を移転する会社もあるかもしれません。そうすれば地域としてますます多くのデザイナーを抱える事が出来ます。人や会社が集まり始めれば、それらの人々にサービスを提供する様々な業種がこの地域に参入するでしょう。都心の生活に疲れたファッションとは直接関係のない人達がひょっとしたら移り住んでくるかもしれません。だって若いデザイナーたちが集う街なんだから地方であっても当然それらは個性的でお洒落でしょうし。そしたらカフェだって出来るだろうし、レストランだって出来るだろうし、美容院もできるでしょうし、 そしてそのうちスーパーが出来、病院、銀行、、、といった様に次第に小さな街が出来上がっていくでしょう。そしてこの地方で小さなデザイナー達の元で働きたいというインターンの学生も出て来ますね。いくつかの有名なデザイナーがそこから東京に、そして世界に羽ばたいて行ったという事にでもなれば、そこの街のブランドでインターンをすることが世に出る事の登竜門になるかもしれません。そうなると、その地域の協同プロジェクトに深く関わりたい(資金面等で援助等をしてくれる)ファッションの専門学校も出来るでしょう(地方にですよ)。生地の知識や縫製の知識、その他の服を作るのに必要な知識を職人とデザイナーと直接対話する事で学べる学校がです。そんな地域で自分たちの知識と若く新しいアイデアで勝負してデザイナー達が競い合えば、、、深い知識と実経験に基づいた発想豊かなデザイナーが地方からどんどん生まれてくるのではないでしょうか。高度な技術と精密さに裏付けされたほのかに知的な日本らしいデザイナーが(僕はこの点が日本的な要素の一つだと思っているのですが)。そしてそんな若手のデザイナー達と共に街を盛り上げてくれる色々な工場の技術者も世間から注目を浴びて、皆がみんなで切磋琢磨して行くのです。


 有名になったデザイナーは経済的にも規模的にも東京に移した方が便利がいいとなれば卒業という事になり、また新しいデザイナーがプロジェクトに参加して新陳代謝が図られます。立派になった先輩の後ろ姿をみた後輩達は間違いなく将来に夢を見る事が出来ます。職人さんたちも自分の仕事にさらに誇りを持てる様になるでしょう。働いているみんなが自分の仕事に誇りを持てば、それに憧れる若い人が間違いなく集まってくるでしょう。そうすれば、工場が今まで抱えていた後継者不足等という悩みはもう吹き飛んでなくなるに違いありません。こうなれば、元は小さな危うい工場しかなかった地域が、若いファッションデザイナーやクリエイター達、そして優秀な職人達が集まる小さいけどお洒落で個性的な街に変化を遂げています。街の皆がお互いの才能を認め合い、お互いに高める様に競い合う。そしてそんな人達を支えるインフラも整い、そんな個性的な街に興味を持った人々が外からも集まり、こうなれば街としての税収も増え、小さなファッションの街として成立し、そこで育つ子供達に夢を与えることができ、結果として地方創世に間違いなく一役買う事になると思うのです。


 このプロジェクトを通じて、日本のブランドが全て東京ブランド(実際はそうでなくても)という先入観を打ち崩し、ブランドイメージの中にワインや日本酒の様な地域性を含ませ、そこに生産者とその技術の存在を同時にアピールすれば、どの地域がどの様な事で有名なのかという事実を一般消費者にも広く知らせる事になりますし、これも間違いなく地方のアピールとして有効になります。今はお店で知らないブランドを見た時に「どこのブランドですか?」と聞くと、「これは“日本”のブランドです」、と返って来ます。だけど、これが将来具体的な地方の名前を付けて答えられる事があたりまえになるような動きが日本から始まれば、コラボレーションによって技術と感性が掛け合わさったデザインを売りにしたブランド達が生産者や技術者にまで敬意を表した発表の仕方をとるような流れを、新しい日本的ブランディング方法として発信できますし、これこそが僕は日本的なファッションだと思うのです。なぜなら日本は技術大国として今でも世界から厚く信頼されているし、我々もそれを疑う人はいないのではないでしょうか。だとすれば、日本的なデザインとは何か、日本のファッションとはどうあるべきか、の一つの解として今回書いてきた記事の様な地方創世を兼ねた新人デザイナー発掘の仮説が成立し得るのではないかと僕は期待しているのです。

(※11/21一部編集済)



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