新人ファッションデザイナー達による地方創世論 1:アパレルの生産拠点は地方にある | 伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

約11年に渡るヨーロッパの様々なステージのラグジュアリーブランドを経て日本に帰国し、衰退産業とも言われている日本の伝統技術を今の形で発信するためのプロジェクト”ARLNATA”アルルナータを主催しているディレクターの独り言です。
https://arlnata.com/index.html


 最近になって地方創世という言葉をよく聞く様になりました。東京の一極集中を分散させ、地方が地域独自の特色を活かし(※1)自律を促し、若い人の就労や結婚・子育てを安心して出来る地域づくりを目指すというものです。地方が活性化するという事は日本全体の景気の向上につながりますし、よく言われているのが日本は地震、台風、火山、洪水などの自然災害の頻発する国土的特徴を持っているため、万が一首都圏に何かしらの問題が起こった場合の代替機能を地方都市にも持たせなければならない理由からも大変重要になります。ここでは政策的にどういった内容があるのかはさておき、僕はファッションでも地方創世が可能なのではないかという考えを持っています。正確に言うとファッション産業(※2アパレル産業)です。ファッションという形の無い概念的なものは東京(首都圏)に圧倒的な存在感があるものの、ファッションを経済活動として捉えた場合、活動しているのは首都圏だけではありません。当然ながら地方でも消費(販売など)はもちろん、生産活動(縫製工場や生地、副資材などの企画生産や加工業など)の大部分が行われています。ですが、そういった生産活動などは表に出る事はほとんどなく(消費者に直接関係ないと考えられているので)、経済活動としてのファッションに対する認識として首都圏と地方の間には大きな隔たりがあると言わざるをえません 。人に会ったり見られたり多くの人口が一点に集中してる都心部で自分の意思を外見で主張する事の出来るファッションが盛んになる事は自然な事ですが、こと地方の生産に関する情報などは都心部でも日の目を見る事はほとんどなく、都心と生産地の関連性(つながっているという事実)は一般の消費者に意識される事はマレなことです。そこでアパレル商品と生産地との関連性を上手にアピールする事ができれば自ずと生産地が注目されることになりますが、都心主導でただ単純に生産情報を公開するだけでは興味を持ってもらうことさえ困難でしょう。そうではなく、地方独自のアイデアで地方が自律してアピールできなければ意味が無いのです。

(※1):自律と自立の違いについて書かれているページを紹介します。
<参照:自律と自立の違いとは>

(※2):「アパレル産業」とは衣料品にかかわる産業のことで、特に、既製服製造業の総称である。 「アパレルメーカー」とは、衣服(特に既製服)の企画、製造(+卸売)を行っている企業のこと(Wikipediaより)


 ご存知の通りアパレルの生産地は国内ではほぼ地方にあると言って間違いありません。東京都内にも小さな家庭内工場的なものはありますし、小規模の生産やコレクションサンプルであったり一点物等などの生産で利用されたりしますが、洋服の場合の量産拠点はほぼ間違いなく地方にあります。洋服を作る上での想像しやすい生産活動は縫製と生地の制作・生産があると思います。もちろん他にも専門的な分野はたくさんありますが、簡単のためここではこの二点(縫製工場生地工場)を代表として進めます。地方創世ということは、これらの縫製工場や生地工場がもっともっと活発に生産を行うことで知名度があがり、稼げる様になるという事になりますが、単純に考えてしまうと仕事の量(需要)が増えない限りは生産量を増やす事は難しいでしょう。これから日本の経済が上向きになって需要が増えてから、、、などと経済状況が改善される事をただ待っていては結局は経済状況に大きく依存していまい自律するという考えにはあてはまりませんし、景気が良くなっても日本国内に需要が回ってくるとは限りません。ですので自分達の手で生産活動を拡大し、それを魅力的にアピールできる様な手法を見つけ出さなければなりません。さらには生産量とは直接的には無関係な方法でアピールする方法があればなお良いでしょう。ではどうすればいいか。それを考える前にまずファッションの東京一極集中の問題点について考えなければなりません。


 僕の知っている限り、日本のファッションブランドの多くは東京の中心に本社、アトリエを構えています。PR会社や商品を展示しているショールームなどもそうです。人の出入りが激しくたくさんのブランドの作品が一つの街に集まっている事は特定の人には当然の事ながら非常に便利です。特に人との繋がりが仕事の上での大きな影響力がある職業に就く人の場合は同業者の多く集まる東京、首都圏に場所を構えるのは意義ある事だと言えるでしょう。が、作る側、つまりデザイナーのアトリエは東京に構える必要が本当にあるのでしょうか?デザイナーのアトリエと言っても会社の規模は様々です。都心に自社ビルを構えて経営している余裕のあるブランドもあれば都心の古いマンションの一室を借りて狭いながらも頑張っている会社もあります。しかし東京(日本)のブランドの規模を考えると後者が圧倒的に多いのです。年商が1億未満、もしくは数億というブランドがほとんどだということは、いつも参照させていただいている南 充浩さんのブログにも書かれています。

<参照記事、南 充浩さんのブログ:一般消費者に認知されない東京コレクション


 ヨーロッパにおいてもブランドの本社(デザインオフィス)はイタリアであればミラノであったり、フランスであればパリだったりします。ブランドによっては豊富な資金力を武器に、都心に本社を構えて生産等も内部である程度こなしている会社も存在しますが、ほとんどの生産の拠点は日本と同様郊外に点在しています。むしろみんなが良く知っている様な有名ブランドでさえも、パターン業務であったり縫製業務(サンプルなどを作る作業でも)は案外場所をとってしまうものでそういった部門のほとんどが郊外に配置され、都心にはデザインチームと経理や広報人事と言ったオフィスワーク部門のみが配置されているという場合が圧倒的です。お金が十分にある会社は都市の中心地に本拠地を構え全ての機能を一点に集中させることはとても利便性に優れ効率も良いでしょう。 しかし世の中のほとんどの会社はそんな余裕が無い上に支出も出来るだけ抑えようと努力するものですし、その姿勢は世界中どこの国であっても変わらないでしょう。では、そんな出来るだけ支出を削減したいギリギリの会社の場合、なぜわざわざ狭くて家賃が群を抜いて高い東京にアトリエを構える事にこだわらないといけないのでしょうか?。特に、これから自分のブランドをスタートさせたいが資金が少ないデザイナー達はやはり東京にアトリエを構える必要があるのでしょうか?その利点は何なのでしょうか?次回以降も考えていきます。



本日の記事に興味を持っていただいた方、是非下をクリックしていただき、多くの人と共有できるようご協力お願い致します!!

人気ブログランキングへ