東京ファッションウィークにおけるスケジュールの問題点:中編 | 伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

約11年に渡るヨーロッパの様々なステージのラグジュアリーブランドを経て日本に帰国し、衰退産業とも言われている日本の伝統技術を今の形で発信するためのプロジェクト”ARLNATA”アルルナータを主催しているディレクターの独り言です。
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 前回に続き東京コレクションのスケジュールにおける問題点です。公式の東京コレクション(正確には「メルセデス・ベンツ ファッション・ウィーク トウキョウ(=MBFWT)」)は2014年の場合10月13~18日に開かれ、この時期にいわゆるファッションショーをメインとしたイベントが東京で開催されました。しかしながら、僕のデザイナーの友人を含む多くのブランドがこの期間のかなり後(具体的には一週間程後で友人の場合だと10月28、29、30)に展示会(受注会)を行っており、東京周辺の人には大した問題ではないでしょうが、地方から買い付けにくる人、ましてや海外からの人達には全てを網羅する事は厳しそうに思えてなりません。つまり13~18日のメインイベントこそ集客力があるであろうにもかかわらず、多くのブランドが受注を開始するのがそのだいぶ後(18日以降)、という問題点です。

参照:東京ファッションウィークにおけるスケジュールの問題点:前編
http://ameblo.jp/s-teranishi/entry-11948487247.html


 例えば、雑誌やウェブの編集そして広報関係の仕事はほとんどが首都圏に集まっているでしょうし、例え何かのイベントが東京コレクションウィーク(13~18日)以外に催されようが大した問題ではありませんが、ブランドの服を買いつけに来てお金を落として行くお店は何も首都圏だけに限った話ではありません。地方にだってたくさんありますし、海外にもあるわけです。そうすればその様な人達が1シーズンの買い付けのために東京に何度も訪れることは経済的に厳しいでしょう。結果として地方・海外客のパターンは現状で大きく分けて以下の3通りに分かれると考えられます。

1:ブランドの宣伝広告でもあるファッションショー(13~18日)を見つつ同じ時期+αに展示会(受注会)を開いているブランドだけを買い付けする。あまりに後にずれて開かれる展示会は見ない。

2:ファッションショー(13~18日)を宣伝イベントと見て、買い付けには直接的には関わらない事から観覧せず、後に開かれる展示会(受注会、18日以降)で買い付けだけに集中する。

3:ファッションショー(13~18日)も展示会(受注会、18日以降)も両方を網羅するために二回以上移動用のチケットを購入して全てを網羅する(もしくは東京に長期滞在する)。


 ブランド側・バイヤー側共に理想なのはどう考えてもショーにも展示会にも両方で参加してもらう・参加できるスケジュールでしょう。となると上記の分類だと1もしくは3の客が現状では理想な買い方をしていることになりますが、3は経済的によろしくありません。となると効率の良い1のバイヤーをより増えるようにするため、ファッションショーと受注会が密になることが東京コレクションには必要なようですが、現状はそうでもなく、しぶしぶ1(本当は後で開かれるブランドも全てを見たい)、しぶしぶ2(本当はファッションショーが見たい)やしぶしぶ3(本当は一度で済ませたいがやむを得ない)の客がたくさんいるのではないでしょうか。


 一方世界中のブランド、バイヤー、編集者が一度に集まるパリはといいますと、ファッションショーをやっているブランドは大体ショーの次の日から展示会を開きます。いわゆるパリコレクションウィーク期間中(こちらもほぼ一週間)は、ショーを行わないブランド(比較的小さな規模のブランドは大抵ここにあたる)も同時期に展示会を開いている事が多く、世界中のバイヤーはこのウィーク期間中+αさえパリに滞在すればほとんどのブランドの新作を見て発注する事が出来る事になります(つまり上記で言う“1”が多い)。東京の様にコレクションウィークが終わってから改めて展示会をしたり、あえてコレクションウィークを避けて展示会をやっても人が逆に集まりにくいのだと思います。東京と違ってパリコレクションは世界中の人々を対象にしているのは明らかですので、 コレクションウィークと受注期間がずれるわけにはいかないのでしょう。この点ではミラノもパリと同じ体制をとっています。


 以前にも書きましたが、ファッションショーをしているブランドはごく一握りで、大半のブランドは展示会(受注会)のみで集客しています(ファッションショーをしているブランドはショーの後に展示会(受注会)を行う)。ですので、例えばバイヤーさんが一日中ファッションショーだけを朝から夜まで見回っていると展示会に行って買い付けする時間は無くなってしまい、ごく限られたブランドしか買い付ける事ができなくなるため、一般的には見るべきショーを厳選して(お店で主力ブランドのショーならば、見に行くなど)展示会場周りをして他のブランドも見るという事が一般的なのです。実際パリに買い付けに来られているバイヤーさん等は買い付けで忙しいのでファッションショーは店にとってよほど重要なブランドでない限り見に行ったりはしないものです。実際全てのブランドの服を買い付ける店など存在しないですしね。それでもパリではショー会場がいつも満員なのはバイヤー以外の雑誌やウェブなどの編集者やスタイリスト、顧客のセレブレティーなどを世界中から招待しているのでお客がいない等の心配は無いのかもしれません。一方東京コレクションの場合、ショーの時期と展示会の時期がずれている理由として、二つを同じ時期に行うと展示会の方に客足が取られてショーに来てもらえない、もしくはその逆、ということが挙げられていますが、ここはやはりコレクションの知名度の差が原因という事になるのでしょうか。そのためか東京コレクションの在り方としてファッションショーというイベントと展示会を別に分けて捉えているブランドが多いとうことになりそうです。次回後半に続きます。




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