試着天国のアウトレット (前編) | 伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

約11年に渡るヨーロッパの様々なステージのラグジュアリーブランドを経て日本に帰国し、衰退産業とも言われている日本の伝統技術を今の形で発信するためのプロジェクト”ARLNATA”アルルナータを主催しているディレクターの独り言です。
https://arlnata.com/index.html


 先週末に古くからの友人が奥様を連れて仕事でミラノに来ていました。その延長で数日ミラノに滞在し色々と歩き回ることになりました。二人ともファッションを仕事にしている方では無く、奥さんは一般的な女性と同じ様にファッションに興味があって買い物するのが好きという方で、一方僕の友人はファッションにはほぼ興味が無く、物欲、所有欲もそんなに無いそうで、モノにお金をかけるよりも経験にお金をかけた方が有意義だという考えで、旅行やどこかに行って何かを経験するという事に主にお金をかけているそうです。そんなお二人がミラノでの共通の目は“食”“サッカー”。そして奥さん個人的にはアウトレットが多いミラノでショッピングを楽しみたいということ、そして僕の友人は食とサッカーと観光以外は奥さんの買い物に付き合う(合わされている?)という具合です。


 イタリアに来る日本人の多くは人気の高いイタリア料理を現地で楽しむ事を期待している方が多いでしょうし、実際僕も食を楽しんでいる一人です。そしてサッカーは今やインテルに長友選手、ACミランに本田選手が在籍していて大活躍されているなど、日本だとテレビでしか見られない熱気を直接味わいたいという人も多いでしょう。僕の友人夫婦もまさにそんなカップルでした。そんな中、彼の奥さんはさらにアウトレットが多いミラノでショッピングを楽しみたいということで、僕もファッション業界に身を置く手前、興味のある人に洋服をもっともっと楽しんでもらいたいという気持ちもあって、何度かお買い物に付き合わせてもらいました。


 ヨーロッパでは元々日本よりだいぶ値段が安くなっているインポート物がアウトレットだとさらに半額以下になっているので、洋服が好きな奥さんはそれなりに楽しんでいたと思います。僕としてもおそらく普段だと試着をすることもないであろう様な色や柄のある服を中心に選んで提案しましたが、アウトレットだと試着をしやすいことも手伝ってか、普段着る事もないような色や柄に挑戦して、新鮮な機会を少しでも提供できたかなと思います。結果的に買う事が無くても、試着することだけで自分の可能性を新たに開拓する可能性も多くあるので、普段とは違った服を試す機会を少なからずとも提供できて良かったと思っていますし、このような機会を増やことが我々ファッション業界で生きる、そしてファッションの活性化を望む者の義務なのかなとも思います。


 アウトレットと言っても大きく分けると二種類存在します。一つはブランドが経営しているモノブランドのアウトレット(外見はそのブランド単体のお店と一緒ですが、扱っている商品が古いシーズンであったり、B品であったり)です。この場合は高級ブランドのアウトレットですと、店員の対応もメインのお店と同様に丁寧な場合が多いですが(特に日本は)、アウトレットという前提がある以上気持ち的にも試着しやすい雰囲気はあります。もう一つはたくさんのブランドを一カ所に集めたセレクトショップ型アウトレットです。この場合は正直に言って、そこで働く店員さんもブランドの品位を保とうなどと思っている人は皆無です(特にイタリアでは)。そもそも複数のブランドが存在し、それぞれのブランドの雰囲気だ何だを同時に尊重するということは不可能ですし、この場合はブランド物を通常より安く売るということに特化されている場合が多く、店員さんの愛ブランド心も小さい事から、一つ一つの商品に注意を払わないので非常に試着がしやすいです。


 そもそも高級ブランド店で試着がしにくいのはなぜかを考えてみると、まず商品が高価であるという事、そして新品を扱っている店であるという事、さらに新品を一回でも袖を通したりすると少なからずシワが入ったり、汗が付着したりと、新品の価値を自分のせいで落としてしまうかもしれないという様な罪悪感がどこかにあるからだと分析します。だから、試着をするのは購入が前提であるかの様な気持ちがするのも同じ理由ですし、それがゆえに試着をする事で店員さんに「この客は買う余裕がある人だ」と思われても嫌だと考えるのも同じ理由でしょう。そして店員さんというのはその価値を下げない様に商品を監視する監視官の様でもあるので、そんなストレス状況下に置かれる位なら試着は諦めようと心のどこかに働くのではないでしょうか。ということは監視官の眼が届かない、もしくは届きにくい状況であれば、試着をするハードルも下がる訳ですし、そのようなアウトレットは試着天国になるわけです。店内に自分たちの他にも客が入っているとなんとなく試着しやすいのもこういった理由からと考えます。さらに言うとアウトレットの監視官、いや店員さんもそこに並んでいる商品が新作商品ではなく古い商品で売れ残り品だという事、B品だと言うことももちろん知っている訳で、試着をした客に断る理由があるのを何となく知っていることも試着のしやすさを手伝っています。ということで、ミラノにはこのセレクトショップ型のアウトレットがたくさんあるため、普段敬遠しがちなインポート物を買うのはもちろん、試着するのも楽しみたいという場合にはミラノはとてもおすすめです。郊外に行けば、オンリーショップ型のアウトレットモールもいくつかありますし、買い物にはもってこいの街です。ミラノではないですが フィレンツェ郊外にあるグッチグループが経営するザモール(The Mall)はとても有名ですよね。

 次回に続けます。




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