2015年春夏東京コレクションより考察 2:日本人モデルを活用する利点(前編) | 伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

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約11年に渡るヨーロッパの様々なステージのラグジュアリーブランドを経て日本に帰国し、衰退産業とも言われている日本の伝統技術を今の形で発信するためのプロジェクト”ARLNATA”アルルナータを主催しているディレクターの独り言です。
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 前回東京コレクション(の写真)を見ての印象の一つとして、ファッションショーという手段を本当に活かしきれているブランドが少ない様に感じた事を書きました。それでも後にいくつかのショーをWWD japanのサイトで動画で見ましたが、やはり生地の雰囲気や動いたときの印象がはっきりわかる動画の方がショーが活きて見えます。今後出来るだけはやく動画が写真に変わって中心になっていく事を望みます。そうなれば表現の仕方の可能性ももっと増えるのではないかと思います。


<参照:2015年春夏東京コレクションより考察 1: ファッションショーの存在意義


 もう一つの受けた印象として、ファッションショーに登場するモデルの国籍(ヨーロッパ人か日本人か)の使い分けについて、ほぼヨーロッパ人、多くがヨーロッパ人で少数の日本人、もしくはほとんどが日本人、の3パターンにほぼ分かれているなという事に気付きました。東京コレクションに出場しているブランドはほとんどが日本のブランドですし、日本の市場を意識している事は間違いありません。今の時代ですから中には海外市場(アジアだけでなくヨーロッパも)も意識しているブランドも当然多いでしょう。では日本人ブランドであるにもかかわらずヨーロッパ人モデル中心で構成するファッションショーにどういった意味があるのか考えてみました。


 まず、上記の様な質問をされて皆が思いつくのは、やはり日本人が“ヨーロッパ”というものに漠然と憧れがあるという事だと思います。スタイルも良いし、顔つきや色の入った瞳にも惹かれる、そういった憧れをヨーロッパ人モデルを採用する事で実現させた方が、少し嫌な言い方ですが日本人ウケがいい、見映えがいいからという理由があると思います。そう思う事は僕も理解するし、間違いだとかを言う気は一切ありません。ただ、忘れてはいけない事が一つあります。それはヨーロッパ人(ヨーロッパに限らずアジア以外の人々)の眼からすれば、日本人(アジア人)の顔つきや眼の特徴、まっすぐでしっかりした黒い髪などは間違いなく新鮮なイメージに映るし、我々が“ヨーロッパ”に憧れを持つのと同じ様に“日本(アジア)”に憧れを持っている人も間違いなく多いということです。特に、東京コレクションというまだまだ世界規模としては決して大きくないイベントに注目をしているヨーロッパ人の視点になって考えて下さい。アジアが嫌いでわざわざ注目する人は少ないでしょうし、なぜ東京コレクションに注目するのかと言えば、日本らしい何か新鮮な物を探しているからではないでしょうか。そう、日本人が自分たちの考えている理想がそのまま外国人の理想とは必ずしも一致しないという事です。そういった点で考えれば、ファッションショーで日本人モデルに着せている方が外国人にとっては新鮮味もあるでしょうし、何よりもヨーロッパ人が着ることがあたりまえのヨーロッパのファッションショーと違い、日本人モデルが装う事で“日本のブランド”という強い印象を与えられるのではないでしょうか。そう言った意味でも全てをヨーロッパ人で占めるというのは必ずしも良い方法とは言えないと思いますし、もうすでに海外で認められたブランドなら色々な国籍のモデルを使用して普遍的な印象を与える事も出来ますが、まだ新しいブランドで海外にアピールすることを考えると特に得策ではない様に思います。今はインターネットでどこの誰が見つけだしてくれるかわからない時代です。ぱっと見の印象を真剣に考えなければならない時代なのです。日本人モデルがあなたの服を装った一枚の写真が海外の誰かの眼にとまり注目をあびるということなど無いとは誰も言えないでしょう。僕は何も、日本人ブランドなんだから全部日本のモデルでやれ!などと極端なことを言っているのではありません。日本人相手にはヨーロッパ人モデルがいいと思うのならそれはそれで良し、デザイナーや会社の方針で適材適所にやればいいのです。が、日本人の自分たちの理想が必ずしも国外の理想と合うとは限らないし、今やショーの結果は全世界に発信する事が出来るのですから、海外に対しても日本人に対しても見てくれた人に日本のブランドだと認識してもらいやすいということ、海外の人にとってはより新鮮な印象を与えられるという事、そしてもちろん日本人にとっても同じ目線の近い存在として見ることができるといったような意味で日本人モデルを採用する利点があるということは忘れてはいけないと思います。


次回も引き続き日本人モデルを活用する利点(後編)に続けます。



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