ワインとファッションの相違点  3: (出身×歴史というルーツを認識すること) | 伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

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約11年に渡るヨーロッパの様々なステージのラグジュアリーブランドを経て日本に帰国し、衰退産業とも言われている日本の伝統技術を今の形で発信するためのプロジェクト”ARLNATA”アルルナータを主催しているディレクターの独り言です。
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 自分を紹介する際に“出身地(国)”に関する事はとても多くの情報が含まれているため非常に役に立ちますし、どこでどうやって育ったかというのは自分自身を作りあげる大きな要素であることは間違いないでしょう。ではもう既に国際社会だ、グローバルだと叫ばれて久しくなりますが(※注)、これは今まで国境という大きな壁がどんどん取り払われ、異文化間の交流がより広く早く行われる事を意味しますが、こんな世の中において自分の“出身地(国)”の意味は世の中の流れと同様にどんどん意味を成さなくなるのかどうかということについて考えみます。


<参照記事:ワインとファッションの相違点  1: (ワインにとっての”土地”という個性

<参照記事:ワインとファッションの相違点  2: (人にとっての”出身地(国)”という個性


 結論として僕はそうではなく、全く逆に“出身地(国)”というものが、国境が薄く低くなればなるほど重要になってくるのだと考えています。なぜならば一昔前ならば、よそ者はどこからどう見てもよそ者だっただろうし、よそ者であるとすぐに区別できるのであれば、その詳細情報は今ほど意味をなさなかったでしょう。現在の世の中では特に都市部ではよそ者が多く混在しているため(ヨーロッパではEUという枠内では人の移動は無制限)、よそ者という意識が以前より希薄になっており、自分というものを認識するため、そして認識させるためには自分をよく知る必要がある。また情報技術の発達により大まかな国民性(地域性)や文化等は簡単に手に入る様になったため、自分というものを言い表すためには自分に関するより深い認識が必要になって来ているからという事もあります。


 外国人同士の会話では、出身国を聞く事でその人のなんとなくのイメージが思い浮かび、正しいかどうかは別としてもその人がどのような人かを知るためのある一定の推測がそこから働きますし、例え世界の国境が無くなったとしても出身地という認識が無くなる事はまず無いでしょう。それくらい、出身地というものが、そしてさらに言えばそこで何をして来たのかという“歴史”(つまり出身×歴史)が実は自分というものを形成するのに大きな影響力を与え、自分というものをアピールする際にも同様に相手に大きな印象を与えているのです。すなわち“出身×歴史”というものは“個性”を与える要素の中でも絶大な影響力を持つものだと思うのです。


 そう考えた時、世間で良く言われているあることに注目したくなります。

「日本人は他国の事は大好きだし良く知っているのに(特に欧米のこと)、自分たちの事を全然知らない」

 もちろん全員がそうだとは言いませんが、この理由としては色々な意見がありますし、考えるとまた長くなるので今後に委ねますが、国際化とかグローバル化とかを目指すのであれば、この事自体は感心できる事ではありません。本当の意味での国際人とは国境の壁を超えて行き交う多くの人々の中にあってそれでも自分という個性を外に表現できる人の事だと思います。それは自己を作り上げて来た自身の国や故郷、そしてそこにまつわる文化などに敬意を払い、それらを正確に理解した上で自己批判(良い点、悪い点を客観的に見つめ他と比較し判断する)をし、さらなる成長を出来る人とも言えるでしょう。自分の出身地(国)が好きだとか好きではないとかそういった好き嫌いの問題ではありません。自分が育って来た環境は自分しか見つめる事はできない、だからこそ好き嫌いに関わらず自分しか考えられないこと、思いつかない事があるわけで、それらを客観的に見つめ直す事で自分を表現する際の武器として使用するべきなのです。ですが、何らかの理由でそういった事を直視せず考える事を辞めてしまうと、 せっかく自分に興味を持ってもらった相手に対して(特に日本の外では)それ以上の自分の魅力を自分から発信して伝える事が出来ないという非常に残念なことにもなりかねません。日本人が日本で生活をしている場合はそれでも日本語という言語や国籍を始めとしてたくさんの共通項があるので良いかもしれませんが、外に出るとそうはいきません、いやむしろ外に出れば自分のルーツ(出身×歴史)というものを嫌でも意識せざるを得なくなりますし、今まで会ってきた海外に長く住んでらっしゃる日本人の方々はほぼ間違いなくこういった点に敏感だと思います。


 ワインにとっても、人にとっても自分の“出身地×歴史”つまりルーツは、“自分という個性“を表現する大きな要素だという事がわかると思います。さて”個性“が重要なのはファッションでも同じです。ではファッションおける”出身×歴史“のようなものはあるのか、”個性“を出すにはどうすればいいのか、難しいですが次回に考えてみようと思います。


(※注)グローバリズムと言われている世界を一つと考えて国境や人種などの違いを平たくしていく考えに対して、上記で僕が述べている様な自分のルーツを見つめ直そうという考え方、つまりナショナリズムが今の世界では対立していると言います。まだ勉強中ですので正確性に欠けますが、念のために書いておきます。



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