価値を共有する事の重要性  | 伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

約11年に渡るヨーロッパの様々なステージのラグジュアリーブランドを経て日本に帰国し、衰退産業とも言われている日本の伝統技術を今の形で発信するためのプロジェクト”ARLNATA”アルルナータを主催しているディレクターの独り言です。
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 昨日は超略式の、近現代ファッション史を僕なりにまとめてみました(参照記事:超略、近現代服飾史)。もちろん僕自身服飾史の専門家でもなんでもないため、もちろんいくつかの資料を参考にまとめたものなのですが、ファッションの分野で働く自分でさえなんとなくの事は知っていても、なぜそのブランドが有名なのか、歴史があるのかなど、また時系列に沿ったデザイナー達の活躍の流れなど、深く知識がなかったため、相当勉強になりました。時代の流れと社会の変遷とファッションの関係、その中でのデザイナーの活躍時期などがリンクしてくると、なぜ今をときめく高級ブランドが高級ブランドであるのかという理由も見えて来ます。そう考えると、やはりシャネルサンローランの影響というのはとても大きかったのだなと感じました。つまり、彼らは”新しいファッションスタイルの提案”という枠に収まらず女性の社会進出に対する歴史的な影響力も大きかったという点が挙げられると思います。時代的にも1950年代から活躍を始めたサンローランに比べ、1900年初期から活躍したシャネルが、洋服を楽しめる人が上流階級に限られていた時代というのもあって、先に次々と革新的な提案をし女性の社会進出への道を切り開き、後にサンローランがプレタポルテ(高級既製服)の台頭とともに、それを世界中に浸透させたということです。サンローランの死後(2008年)、恋人でビジネスパートナーでもあったピエール・ベルジェ(Pierre Bergé)がこう言いました。「シャネルは女性に自由を、サンローランは力を与えた」と。まさに時代を動かしたデザイナーと言えるのではないでしょうか。


 昨日の記事中にはファッションにおける“新しいスタイル”を提案したデザイナーにはあまり触れませんでした、というのもファッションにそれほど知識が無い人にも出来るだけ分かるようにするため、デザイナーの名前を絞って書いたからです。数人例を挙げるとすると、僕が個人的に好きなデザイナーで言えば、僕がファッションを目指すきっかけとなった、怪しい雰囲気と斬新で鋭いシルエットを持ち、洋服を目で楽しむことをファッションショーを通じて知らしめたアレキサンダー・マックイーン(Alexander Mcqueen)、彼と並んで毎回奇抜で斬新な美しい服を提案し毎回のショーが楽しみでならなかったジョン・ガリアーノ(John Galliano)、グッチ(GUCC)の洋服部門の売り上げを急上昇させた“艶つやファッション”のトム・フォード(Tom Ford)、など枚挙にいとまがありません。彼らもまた歴史上のデザイナー達の影響を受けて成長したということは疑いようの無い事実です(日本人デザイナー山本耀司さん、川久保玲さんのファッションはマックイーンをはじめ、今現役で活躍しているヨーロッパのデザイナーのほとんどにその多大な影響を与えているという事実は忘れてはなりません)。彼らが産み出して来たものが、我々が町中でなんとなく見る服達とも遠いとしても関係していることも明白ですし、こういった創造意欲に溢れた人たちがいなくなれば、後にはもう既に見つくしたつまらないものしか残らなくなるということを考慮すれば、彼らの歴史・功績を知るという事は後世の人間の活躍を支持するためにも大切な事だと言う事は言うまでもありません。何事も、楽しむためには勉強しないといけません。野球もサッカーもルールを勉強しなければただの“球との戯れ事”になってしまうのと同じです。


 しかしながら、僕は現代のファッションに生きるプロフェッショナルがこういったデザイナー達の功績・意義・過去との歴史的関係性を世に伝え、勉強をうながす義務があるにもかかわらず、怠っているのではないかと懸念しています。自分たちがまるで特別な違った世界にいるかのような言動や、一般の人を煙に巻く様な曖昧な説明や抽象的な表現など、世間に正確に知らせる・伝えるということが最終的には自分たちの存在意義も深めるのにもかかわらず、です。ファッション産業がここまで大きくなってしまった以上、ビジネス面を無視して考える事は難しくなりました。ですが、金儲けとは無関係に、ファッションにおける過去、現在の現象そしてそれらの相互関係や意味を正確に分析し、世にわかりやすく伝えるという義務を遂行することで、僕の“考える理想の環境”は少しずつなのかも知れませんが近づいてくるのだと思います。なぜなら、世に正確に伝えるためには伝える側がまず勉強して理解しなければ何も始まらないからです。(参照記事:プロフェッショナルの意味 考える理想の環境)




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