「この映画に携わる全ての人間は魂の戦士だ。最高の戦士を探す」
そういって最高の戦士を口説き落とすホドロフスキー監督が面白すぎる!
⇒ホドロフスキーとは? http://www.uplink.co.jp/dune/jodorowsky.php
この映画とはSFの名作、DUNE(砂の惑星シリーズ)。
結局未完に終わるのだが、そのドキュメンタリーが6月公開です。
読んでいて声を出して笑ってしまったので、最高の戦士たちとの出会いそして口説き落とす様子を、いくつかご紹介します。
⇒ホドロフスキーのDUNEより一部転載 http://www.uplink.co.jp/dune/warriors.php#010
◆ サルバドール・ダリ/俳優として
1904年、スペイン生まれ。シュルレアリスムの代表的な作家。「マドリードのサンフェルナンド美術学校で知り合ったルイス・ブニュエルとは、1928年にシュルレアリスムの代表的映画『アンダルシアの犬』を共同制作した。「天才」と自称して憚らず、数々の奇行や逸話が知られている。89年没。
<ホドロフスキーのコメント>
「NYのホテルで偶然ダリと遭遇した。私はタロットの本を読んでいたから、“吊られた男”のページを切り取って “一緒に映画を作りたい”と書いた。“君の映画に出る。だがハリウッドで一番ギャラが高い俳優になる。撮影1時間につき10万ドル欲しい”」
なんでしょう、アーティスト同士のこの熱いほとばしりは。ハリウッドで一番ギャラが高い俳優になる、の動機がお金でも名誉でもなさそうなので、その辺りを聞いてみたい!(聞けないけど。そして動機なんてないのかも)
◆ ミック・ジャガー/俳優として
1943年、イギリス生まれ。結成52年を迎える世界的ロック・バンド、ローリング・ストーンズのヴォーカリスト。映画初出演作は1970年の『パフォーマンス/青春の罠』。1971年にエル・ジンで『エル・トポ』を観て熱狂したという話が伝えられている。
<ホドロフスキーのコメント>
「ある日、私はパリでパーティーに招待された。盛大なブルジョアの集まりだ。150平方メートルはある大きな部屋の向こう側にミック・ジャガーがいた。私は遠くから彼を見た。彼が私を見たような気がした。人混みをかき分けながら彼は歩き始めた。私の方に向かってね。そして目の前に立った。 “私の映画に出てほしい”。彼は言った“いいよ”」
あの!ミック・ジャガーがまるで少年のようです。ホドロフスキーが魔術を使った可能性も否定できません。
◆ オーソン・ウェルズ/俳優として
1915年、アメリカ生まれ。ハリウッドを代表する映画監督、脚本家、俳優。37年、『宇宙戦争』をラジオ・ドラマ化してニュース形式で放送。あまりにもリアルな演出のため、全米がパニックに陥るという現象を巻き起こした。41年『市民ケーン』を制作。アカデミー9部門ノミネートされ脚本賞に輝いた。しかし以降、映画監督としては良い評価が得られず、未完の作品も多い。85年没。
<ホドロフスキーのコメント>
「彼には悪評が立っていた。美食にかまけて映画製作が中止になったとね。しかし“彼しか考えられない”と私は譲らなかった。 “もう映画には出たくない”と言う彼に提案した。“出演料とは別にあなたのお気に入りのレストランのシェフを雇う”彼は承諾した」
市民ケーンのころのオーソンウェルズしか知らない人(わたし)は、ここは写真必須です。食べること、それは人間の根源的な欲求。なんかいろいろさすが。
◆ デヴィッド・キャラダイン/俳優として
1936年ハリウッド生まれ。1970年代にテレビドラマ『燃えよ!カンフー』で一躍有名になった。この役をきっかけにして中国武術や東洋哲学の習得と研究に力を注いだ。2002、2003年にはクエンティン・タランティーノ監督の『キル・ビル』シリーズでビル役を演じ、人気を博していた。09年没。
<ホドロフスキーのコメント>
「LAのホテルで彼を待っていた。私は瓶入りのビタミンEを買って持っていた。500グラムの大きな瓶だ。健康のために1日1粒飲もうと思っていた。彼は私の部屋に入るとその瓶を見つけて言った。 “ビタミンEだ”そして私のビタミンEを全部飲んでしまった。60ドル分のビタミンEを。怪獣みたいに…。私は言った“君こそ私が探していた男だ”」
どっちもどっちですごい。健康のためにビタミンEを1日1粒飲もうとする監督がかわゆい。アーティストが破滅型とは限らないのだ。
◆ H・R・ギーガー/建造物デザイン
<ホドロフスキーのコメント>
「ダリがギーガーの作品集を見せてこう言った “彼には才能がある”。それを見て驚いた!悪役のハルコンネンのイメージ通りだったからだ。ゴシック風の惑星と人物たち。そして私はギーガーを捜しに行った。私は言った “君は魂の奥底に潜む深い闇を探求している。それが君が創る芸術だ。君の作品は邪悪な芸術だ。ハルコンネン男爵に必要な病んだ芸術だ”」
ホドロフスキーが言った言葉が、純粋に褒め言葉なのだということは分かる。分かる。。分かる?
◆ ダン・オバノン/特殊効果
1946年、アメリカ生まれ。南カリフォルニア大学の映画学科に在籍中の1971年に、ジョン・カーペンターと短編作品『ダーク・スター』を共同制作する。1974年、『ダーク・スター』が商業映画として長編リメイク化。『DUNE』が頓挫した後、『DUNE』のアイデアをハリウッドに持ち込み映画化されたものが『エイリアン』だった。主な脚本作品に『トータル・リコール』(90年)、監督作品に『バタリアン』(85年)などがある。09年没。
<ホドロフスキーのコメント>
「ハリウッドの小さな劇場でSF映画を上映していた。『ダーク・スター』だ。“この男だ!” 私にとって大切なのは芸術で、技術はその次だ。 “すべて売ってパリに来なさい。人生が変わる”そして彼はパリにやってきた」
そしてこの映画は完成しなかった。それでも、彼の人生が変わったことは事実。目の前の失敗が、人世の失敗になる訳ではない。
◆ ピンク・フロイド/レト・アトレイデの音楽
1965年に結成されたイギリスのバンド。サイケ/プログレの代表格として絶大な人気を誇る。芸術的な側面で評価を得る一方で、『狂気』『ザ・ウォール』『炎~あなたがここにいてほしい』がメガ・セールスを記録し、レコード・CD総売り上げは2億5,000万枚(2013年時点)におよぶ商業的にも大成功を収めたグループである。
<ホドロフスキーのコメント>
「メンバー4人は “どうも”と挨拶してそれきり黙々とハンバーガーを食べ続けた。私は彼らを罵った “君たちに任せようと思ったのは人類の歴史で最も重要な映画の音楽だ!世界を変える映画だ!ビッグマックなんか食べやがって、ふざけるな!”彼らは食べるのをやめて話し始めた」
待ち合わせ場所はマクドナルドか!
ピンク・フロイド、おたくっぽい反応ですね。
「人類の歴史で最も重要な映画の音楽だ!世界を変える映画だ!」言い切る監督、かっこよし。