記者会見と声明の分析(2023/7/28)
みなさん、ごきげんよう。
今回は、昨日、ネット記事に上がっていた件についてです。
以前、依頼を受けて裁判所に請願書として意見書を提出していた者として、公表された文章を独自に分析してみました。
丁寧に分析すると、物凄く長くなるので、全体的に流す形で行いました。それでも長いです。
また、「2023年7月23日の記者会見とそれに対して同日に出された声明文の文章に対する分析」に過ぎません。
どちらが良いか悪いかにも興味がありません。事案に対する評価でもない事は明言しておきます。
まず、「この内容なら声明自体を出すべきではなかった」です。
少なくとも、わたくしなら書きません。
わたくしの執筆業務の基準ですが事案の真偽、経過に関わらず文章としてダメです。
江さんは2022年8月23日の連れ去りの事実と、それに対する地方裁判所の決定に基づいて会見を行いました。
対して、福原さん側は連れ去りの事実に対する反論を行っていない。
口頭弁論ではないから、という事かも知れませんが、
それなら声明自体「口頭弁論の場ですべてをお話しします」の一文で済ますべきでした。
次に、「声明は記者会見をした事に対する批判に過ぎない」という点です。
先の通り、2022年8月23日と保全命令に対する反論がないまま、「記者会見を開いたと事」を批判しております。
ここで思い出したのは、先日のビッグモーター社の社長会見での「変な動画」という発言です。
あちらは「業務上の不正の告発」、要するに、「自分に都合悪い事実の公表」に対する批判として出た言葉でした。
対して、声明は記者会見をした事に対する批判が主となっており、「変な動画」と重なりました。
「子どもへの配慮がない」「台湾の裁判官の命令に反している」と言っておりますが、
「子どもを連れ去った」という事実の告発への反論がない以上、という事ですね。
そもそも、中華民国の裁判官の命令とやらは法律に基づいた命令だったのか?という点も疑問です。
事前に会見の中止やメディアに警告を発した事も、江さんの告発を聞いた方には印象悪いと思います。
3つ目の違和感は、「被害者感丸出しでの批判」と「言葉のチョイス」です。
これはモラハラやパワハラの加害者にも多々見られるものの、一般的な話し方にも見られます。
「子供守る配慮欠く」など、「子ども」という言葉が多用されている事も気になりました。
「子どもと父親への非難を結び付けた言葉」も大変気になっております。
江さん側は、事実に基づいた告発と法的な主張がメインで、子供に目線を移させる話は見たところありませんでした。
それに対し、福原さん側は「子どもへの配慮」「子どもの利益」など、子供に目線を移させる言葉が多々見られます。
わたくしなら、「子供」と言うワード、記述は極力削ります。
また、「大人な態度で向き合って」という言葉です。
これは、明らかに相手を下に見た言葉です。
上から目線、教育的な目線での言葉であり、少なくとも相手を対等な個人としては見ていない。
わたくしは「DV話法、DV加害者話法」と呼んでいるものです。
声明には「父親のイメージ」など美辞麗句が並んでいるのに、個人に対して下に見て非難している。
先のビッグモーター社の社長会見の「不正の告発は変な動画」や「自分の胸に」という言葉と近いものを感じております。
「大人な態度」という事は、江さんは「子どもの態度」だったのでしょう。
「(記者会見を開いて自分に都合悪い事実を公にしたから)お前は子供だ」と言い換えれば分かり易いでしょう。
わたくしなら、お子さんにも失礼な言葉だと感じて使いません。
裁判に対する態度の違いも気になります。
ご自分がお子さんを連れ去った事に対する2023年7月20日の保全命令の決定に対しては、
「日本国内の司法の手続きは未確定であり、さらなる審理を期しています」
と言っているのに、
「子どもを最前線に立たせることは、法廷審理中の台湾裁判官の命令に全く反しており、台湾の『児童及び青少年の権益の福祉及び保護に関する法律』の重大な違反」
と非難している。
この非難の根拠は「福原愛さんが元夫・江宏傑氏の緊急会見に反撃 メディアにもクギ「法令順守を」」(東スポ、2023年7月27日)から引用すると、
「現在、日本と台湾の新竹市の裁判所で審理されています。新竹地方裁判所の裁判官は、2023年3月27日午前10時からの法廷において、この家事事件の内容を公にしないよう指示」
というものです。
法律上は「指示」なのか「命令」なのかで全く意味が変わるのですが、注目して欲しいのは、「重視の仕方」です。
「同じ地方裁判所」なのに、
「日本の審判はあくまで一審の裁判であり、事実関係について最終的な判断はされていません。また、主張立証責任の分配の問題があり、司法的に家庭の問題の真実が全て明らかになるわけではありません」
と司法システムの欠陥そのものから否定することで、江さん側の「決定(=命令)が出たという事実に基づいた主張」を軽視している。
これに対し、同じ地方裁判所なのに、
「子どもを最前線に立たせることは、法廷審理中の台湾裁判官の命令に全く反しており、台湾の『児童及び青少年の権益の福祉及び保護に関する法律』の重大な違反」
と同じ一審に過ぎない、しかも審理中の事案にもかかわらず「命令と法律」に対する重大な違反」と重要視して非難している。
なお、その中華民国の「命令と法律」についての説明は一切ない。当然、日本人には分からない。
あと、「子どもを最前線に立たせることは」「台湾の法律の重大な違反」とありますが、そもそもの原因は何なのか?
また、この声明を出さなければお子さん達が最前線に立たされることはなかったと思います。
冒頭でも述べた通り、「江さんとの個人的な問題のため口頭弁論の場でお話しします」で済ますべきでした。
極めつけは、モラハラ加害者などにも多々見られる論理の飛躍と責任の転嫁。
「公衆の面前で国際記者会見を開くこと」と「子どもに対する家庭内暴力の一種」を結び付けた論理です。
「高度な紛争を引き起こすだけでなく、意図的に両親と子どもの関係を引き裂き、子どもに悲しい思いをさせ、別離を引き起こすものであり」
とありますが、これは記者会見が原因なのでしょうか?
ビッグモーターの社長さんも、被害者面して不正をしたり告発をした社員、元従業員を批判していたのを思い出します。
長くなりましたので全体的な総括をすると、
そもそも江さんの記者会見では大淵愛子弁護士が保全命令の根拠となった福原さんによる連れ去りについて、刑事事件、未成年者誘拐罪に該当する可能性を指摘しております。
『福原愛さんを「未成年者誘拐罪」で告訴も 江宏傑氏側が例示した昨年8月の地裁判決』(東スポ、2023年7月23日)
福原さん側の声明文は、この点に対する反論は一切ありませんでした。
また、「子供を守る配慮に欠けていました」や記者会見をした事に対し、「子どもに悲しい思いをさせ、別離を引き起こすものであり、子どもに対する家庭内暴力の一種」と言っています。
誘拐と記者会見、どちらが犯罪行為として悪質ですか?
子供への配慮がなく、子供を利用し、子供を悲しませているのは誰なのでしょう?
わたくしは「子どものせいにして江さんに全責任を転嫁している」と言われても仕方のない様に感じました。
よって、「わたくしならこの声明を出さなかった」と結論しております。
最後に、これは、研究所のすべてのクライアントに最初にお伝えする事です。
DV被害者にもDV加害者にも、連れ去りや親子断絶の当事者にも、当然、お伝えしている事です。
そもそも、この事件の被害者はお子さん達ですし、離婚をしている時点で、あなた方はお子さん達を傷つけている。
子供には「離婚の危機」「再婚の危機」という心理や生命に重大な危機が2つあります。
そもそも離婚の原因は何ですか?わたくしは興味もないので存じ上げません。
ただ、それを差し置いて、子供の利益を持ち出して被害者面している事に違和感があります。
さとう院さとう(さとう社会研究所・さとう心理コンサルティング)
『福原愛さん側反論【声明全文】東京家裁引き渡し命令は「未確定」 元夫・江氏を批判「子供守る配慮欠く」「大人な態度で向き合って」』(デイリースポーツ、2023年7月27日)
卓球女子五輪メダリストの福原愛さん(34)の元夫で、16年リオデジャネイロ五輪卓球男子台湾代表の江宏傑氏(34)が27日、都内の日本外国特派員協会で緊急会見を開いた。昨年7月に福原さんに一時的に引き渡した長男が、面会交流期間を過ぎても帰ってきておらず争っていた問題で、東京家裁から今年7月20日、福原さん側に引き渡しを命じる保全命令が出たことを公表。さらに、裁判所に強制執行も求めているが、それでも引き渡しが行われない場合は「未成年誘拐罪」で刑事告訴することも示唆。江氏は「個人的には強制執行の方法を採りたくない。福原さん、ぜひ協力して、裁判所の判断に従って平和的で安全な形で子供を返してほしいです」と涙を浮かべながら訴えた。
この会見を受けて、福原さん側も声明文を発表。江氏の会見を批判し、反論した。声明文は次の通り。
「私どもは、多感で傷つけやすい子供たちを、好奇心や争いの軋轢からできるだけ守りたいと考えています。
江氏の申し立ては一方的な主張に基づいていますし、日本国内の司法の手続きは未確定であり、さらなる審理を期しています。
残念ながら、本日の江氏の記者会見は、子供を守る配慮に欠けていました。
日本国内の司法手続きについても、あたかも確定しているかのような誤解を与えつつ、一方的な主張を繰り返していました。子供への配慮を求めた台湾の裁判所の命令も無視しています。福原愛さんは、母親として、公衆の面前での反論を控え、つらく悲しい思いをしています。
ただ、このままでは誤解が定着しかねませんので、代理人の立場から、少し指摘させていただきます。
日本の審判はあくまで一審の裁判であり、事実関係について最終的な判断はされていません。また、主張立証責任の分配の問題があり、司法的に家庭の問題の真実が全て明らかになるわけではありません。
福原愛が選任した日本の弁護士は江宏傑が選任した日本の弁護士と連絡が取れており、連絡を拒否したこともなく、日本の弁護士は、江宏傑ともメールでつながっています。
子どもの仮の引き渡しは、お子さんの状態、意思、福祉、最善の利益を考慮して慎重に行わなければならないものです。
江氏の側から福原氏に対しては、お子さんに配慮をした具体的な提案は全くなく、突然、このような記者会見が行われたことに大変に驚いています。
私どもは、同氏が来日していることすら知りませんでした。いつ引き取りたいということも伺ったことがありません。江氏の来日の目的は、記者会見であったということが理解できます。
母親は、このような形で子どもたちが晒しものになっていくことに大変に胸を痛めております。
子どもを最前線に立たせることは、法廷審理中の台湾裁判官の命令に全く反しており、台湾の『児童及び青少年の権益の福祉及び保護に関する法律』の重大な違反です。
台湾の事件と日本の事件は、同じ事実関係を前提にしており、密接に関連しています。
別の事件だからという理由で何でもメディアに公表できたり、自分に都合のいいことのみを発言し、都合の悪いことについては沈黙するのであれば、台湾の裁判官の子どもの最善の利益を守るための命令の意味がなくなってしまいます。
お子さんをお持ちの父や母であればご理解いただけることではないでしょうか。
また、公衆の面前で国際記者会見を開くことは、高度な紛争を引き起こすだけでなく、意図的に両親と子どもの関係を引き裂き、子どもに悲しい思いをさせ、別離を引き起こすものであり、子どもに対する家庭内暴力の一種です。
両親の離婚の背景には様々な理由があります。私たちは、子どもたちや画面の中の父親の良いイメージを守りたいので、正面からの攻撃はしていません。どうか江宏傑も大人な態度で家庭問題に向き合っていただきたいと思います。
現在、そのほかの事実関係についてたくさんお問い合わせを頂いておりますが、これ以上の事実関係については、現在は、回答することができません。いずれ、全てをお話しすべきだという時期がきた場合には、お話をさせていただきたいと思います。
どうぞよろしくご理解いただきますようお願いいたします。
2023年7月27日 福原愛 代理人弁護士今里恵子」