こんにちは!
2014年度大学職員青年会・実行委員長の本山(社長)です。
今回は、10月26日に開催した全国大学アドミニストレーター交流大会で
みなさんからいただいたアンケートに対する中元様からの回答を掲載します!
1.大学職員の業務には数値目標がないものが多く、業務サイクルとしても1年単位、半年単位のものが多い。その中で、どうやってPDCAサイクルをまわしていけばよいでしょうか?一年に一度しかない業務では、シングルループもダブルループ学習も必ずしもできる訳ではなく、行きあたりばったりなやり方しかできないことも多いと思います。
色々な事が入っている質問ですので、ちょっと小分けにして答えさせてもらえればと思います。
第一に「数値目標が無い」とのことですが、本当にそうでしょうか。アウトプットで測れなければ、インプットやアウトカムで測ることも考えられます。また量で測れないものであれば、質的なもので測ることも考えられると思います。
第二に「PDCAサイクル」です。今回のお話の中ではPDCAには特に触れていませんが、一般的な意味でPDCAサイクルに触れると、これは工業製品の生産管理が元々の発想にあるものです。予測可能性・制御可能性がそれなりにある事柄でなければ、うまく機能しません。「決まったことをインプットすれば基本的に同じアウトプットが出る」というシステム・状況であればPDCAサイクルは有効ですが、そうでないようなシステム・状況では有効でないといえるでしょう。
また、PDCAサイクルそのものには、一歩下がって考える・メタ的に考える、ミッションから立ち上って考える、という視点が内在していません。例えば「高校生の受験生獲得」をPDCAで回すとしましょう。今後どんどん18歳人口が減りますから、改善に次ぐ改善を続けても先細りになるかもしれません。教育機関としてのミッションに立ち返って考えた際には「高齢者をターゲットに学び直してもらおう」という全く新しい考え方が出てくるかもしれませんが、少なくともこの発想はPDCAサイクルから自然に出てくるものではありません。こうしたことに鑑みると、何でもPDCAサイクルで考えればいいわけでは無い、と言えるでしょう。
第三に、業務サイクルの長さですが、それがPDCAサイクルにふさわしい事柄であれば、期間の長短に関わらずPDCAサイクルで進めていくことは可能でしょう。学習にしても同じでしょう。卒業式が年一度であっても、それを儀式としてこなすという前提で、そのやり方を伝達される・学ぶことは普通にできると思いますし、そもそもに立ち返って「学生が主役の式でしょ、単なる儀式以上のことができるのでは?」と考えてみることもできるでしょう。
第四に「行き当たりばったり」です。ぎょっとするかもしれませんが、現実の意思決定ではむしろ行き当たりばったりが満ち溢れています。同じような案件なのにちょっと関係者が違うだけで全く違う結論になったということはありませんか。経営学ではこうした意思決定モデルを「ごみ箱モデル」と言っていますが、必ずしも合理的に計画されたり、絶対解が選ばれたりするわけでは無いのが現実でしょう。
大事なのはそれをやりっぱなしにしないこと、内省(リフレクション)することです。その判断は本当に正しいのか、同じ判断ややり方を続けていいのか、を「そのことをやりながら」でも、「そのことが終わった後」でも、一歩下がって考える・メタ的に考えるのが大事です。こういう姿勢を持ったり機会を持ったりすることが、「経験から学ぶ」ということになります。
2.美術館も含めて多くの高等教育機関への出向、異動を経験されていますが、新しい環境に移られて、どのようにモチベーションを高められているのか、また、業務を進めていくにあたって、どのような作業から入られるのか(たとえば、資料を見る、ネットワークを作る、など)、経験からお話をいただければと思います。
モチベーションについてですが、基本は「やるからやる気が出る」ものかと思います。「やる気が出てからやる」では無いです。スポーツでも仕事でも、始めた初日にそれの醍醐味を語れる人はいません。まずはそれに取り組みつつ意味を見出すことが大事ということになりますが、それは今回のお話の中の「エンジョイメント」に当たるところです。
ただし、そもそも「全く・ほとんど意味を見いだせていない」とかの場合、いきなり没頭する・やる気を出すというのは無理でしょう。今までの経験と連関させたり、そうした仕事の経験者に話を聞いたりして、意味を見出していくのがいいかと思います。それと、モチベーションも無限に湧くわけでは無いので、やっていて疲れがたまるなと感じた場合は、素直にその日の仕事を切り上げるべきでしょう。
また、新しい仕事への取り組み方ですが、業務に応じてそれぞれという感じでしょうね。慣れている仕事と類似していればすぐに実作業にかかれますし。ただ、大事なのは「何でこの仕事やってんねん?」「ほんまこのやり方でええんかいな」という一歩下がったメタ的な考えと、「今この仕事どうやるか」という実務的な考えとの、常なる往還を自分の中で保ち続けることかなと思います。
3.会社の営業や研究職のように目に見える成果が出にくい大学職員の仕事の中で、どのように成果をアピールしていくことができると思いますか?
この質問を一歩下がって考えてみたいのですが、そもそもなぜ「成果をアピールする必要がある」と考えられたのでしょうか。もしかしたら、自分のやっていることが見られていないと感じているからでしょうか。それであれば、「大丈夫です、あなたのやっていることはちゃんと見られています」とお答えしたいと思います。
大学職員の仕事も幅広く、中には個人別の成果が非常に見えやすい業務に携わっている方もいるかもしれません。しかし、大半の方の業務はそうでは無いですし、今回参加された方の年齢層で、そうした業務を携わっている方はほとんどいないと思います。
では皆さんがどのように周りから評価されるかというと、それは「まずは任せた仕事をしっかりとやってくれるかどうか」、「新しい仕事(=自分を伸ばす機会)を任せても大丈夫そうか」という観点からです。そうしたところを周りは見ていて、それが上手くいっていれば、その報酬や評価として「新しい仕事」「新しい機会」が返ってきます。(「え、給与や賞与じゃないの?」とがっかりした人もいるかもしれませんが、残念ながら金銭的な形で返ってくることはあまり期待しないほうがいいでしょう)
なぜそうなるのかは、逆にあなたが自大学の管理職という立場に立ってみたら分かりやすいと思います。部下の仕事ぶりを見て「私はあなたを信頼していますよ」「あなたに満足していますよ」というメッセージを送るのに、どこまで給与・賞与での差をつけることが制度上可能でしょうか。おそらく大幅に差をつけるというのはとても難しいのではないでしょうか。でも、その仕事ぶりをみて、新しい仕事・新しいチャンスを与えることは可能でしょう。例えば「こいつ見どころあるな、よし次はこんな仕事を任せてみようか」とか「確か外部機関に出向したいとか言っていたな、文科省なり私大連なり振興団でも頑張れそうだし、今度人事課から話があったら推薦しておこうか」と思ってくれるかもしれません。
そんなわけで、大切なことは、まずは地道な経験を積み重ねて、周囲の信頼を得て、それをステップに新しい機会にチャレンジしていく、ことになるかと思います(今回のお話では「ストレッチ」にあたるところです)。
もし上司や同僚から「またあなたと一緒に仕事をしたいね」というような言葉をもらったとしたら、それはとても評価されているということです。ぜひ引き続き頑張ってください。
4. 大学におけるキャリア形成についてはどうお考えですか。例えば、人事配置や学内研修では個々のキャリアと結び付けられる仕組みですか?
これは「大学側として」と「個人の側として」の二つの考え方が必要です。
しかし、現状として必ずしもそれが整備されているとは言えないところです。2010年の大学マネジメント研究会の「事務系職員の人材育成・人事制度に関する調査」に、調査グループの一人として関わりましたが、その際「(大学側の)人材育成の方針を定めている大学は国立・公私立とも4割前後」、「(個人の側に)キャリアプラン(を策定させること)については国立では3割程度、公私立では4割程度の導入率」という状況でした(詳細は、『大学マネジメント』2010年10月号参照)。つまり、どう育てるのか大学側は決めきれてないし、個人の側もそれぞれ次第というお寒い状況にある大学のほうが多いと言えるでしょう。
この点、先進的な例としては愛媛大学が挙げられるでしょう。愛媛大学では大学側のベクトルと個人のベクトルのそれぞれを一致させようと努力しており、個人を理解するとともにそれを大学側のベクトルとできるだけ沿わせるための取り組みとして「スタッフポートフォリオ」や「メンタリング制度」の取り組みを行っています。こうした取り組みについては、中教審で秦敬治・愛媛大学准教授(当時)が報告された資料など参考にしてください。
参考:秦敬治『大学間連携により実現する効果的なSD』、中央教育審議会大学分科会大学規模・大学経営部会(第9回)、2010年10月15日。
パート②に続きます!!
2014年度大学職員青年会・実行委員長の本山(社長)です。
今回は、10月26日に開催した全国大学アドミニストレーター交流大会で
みなさんからいただいたアンケートに対する中元様からの回答を掲載します!
1.大学職員の業務には数値目標がないものが多く、業務サイクルとしても1年単位、半年単位のものが多い。その中で、どうやってPDCAサイクルをまわしていけばよいでしょうか?一年に一度しかない業務では、シングルループもダブルループ学習も必ずしもできる訳ではなく、行きあたりばったりなやり方しかできないことも多いと思います。
色々な事が入っている質問ですので、ちょっと小分けにして答えさせてもらえればと思います。
第一に「数値目標が無い」とのことですが、本当にそうでしょうか。アウトプットで測れなければ、インプットやアウトカムで測ることも考えられます。また量で測れないものであれば、質的なもので測ることも考えられると思います。
第二に「PDCAサイクル」です。今回のお話の中ではPDCAには特に触れていませんが、一般的な意味でPDCAサイクルに触れると、これは工業製品の生産管理が元々の発想にあるものです。予測可能性・制御可能性がそれなりにある事柄でなければ、うまく機能しません。「決まったことをインプットすれば基本的に同じアウトプットが出る」というシステム・状況であればPDCAサイクルは有効ですが、そうでないようなシステム・状況では有効でないといえるでしょう。
また、PDCAサイクルそのものには、一歩下がって考える・メタ的に考える、ミッションから立ち上って考える、という視点が内在していません。例えば「高校生の受験生獲得」をPDCAで回すとしましょう。今後どんどん18歳人口が減りますから、改善に次ぐ改善を続けても先細りになるかもしれません。教育機関としてのミッションに立ち返って考えた際には「高齢者をターゲットに学び直してもらおう」という全く新しい考え方が出てくるかもしれませんが、少なくともこの発想はPDCAサイクルから自然に出てくるものではありません。こうしたことに鑑みると、何でもPDCAサイクルで考えればいいわけでは無い、と言えるでしょう。
第三に、業務サイクルの長さですが、それがPDCAサイクルにふさわしい事柄であれば、期間の長短に関わらずPDCAサイクルで進めていくことは可能でしょう。学習にしても同じでしょう。卒業式が年一度であっても、それを儀式としてこなすという前提で、そのやり方を伝達される・学ぶことは普通にできると思いますし、そもそもに立ち返って「学生が主役の式でしょ、単なる儀式以上のことができるのでは?」と考えてみることもできるでしょう。
第四に「行き当たりばったり」です。ぎょっとするかもしれませんが、現実の意思決定ではむしろ行き当たりばったりが満ち溢れています。同じような案件なのにちょっと関係者が違うだけで全く違う結論になったということはありませんか。経営学ではこうした意思決定モデルを「ごみ箱モデル」と言っていますが、必ずしも合理的に計画されたり、絶対解が選ばれたりするわけでは無いのが現実でしょう。
大事なのはそれをやりっぱなしにしないこと、内省(リフレクション)することです。その判断は本当に正しいのか、同じ判断ややり方を続けていいのか、を「そのことをやりながら」でも、「そのことが終わった後」でも、一歩下がって考える・メタ的に考えるのが大事です。こういう姿勢を持ったり機会を持ったりすることが、「経験から学ぶ」ということになります。
2.美術館も含めて多くの高等教育機関への出向、異動を経験されていますが、新しい環境に移られて、どのようにモチベーションを高められているのか、また、業務を進めていくにあたって、どのような作業から入られるのか(たとえば、資料を見る、ネットワークを作る、など)、経験からお話をいただければと思います。
モチベーションについてですが、基本は「やるからやる気が出る」ものかと思います。「やる気が出てからやる」では無いです。スポーツでも仕事でも、始めた初日にそれの醍醐味を語れる人はいません。まずはそれに取り組みつつ意味を見出すことが大事ということになりますが、それは今回のお話の中の「エンジョイメント」に当たるところです。
ただし、そもそも「全く・ほとんど意味を見いだせていない」とかの場合、いきなり没頭する・やる気を出すというのは無理でしょう。今までの経験と連関させたり、そうした仕事の経験者に話を聞いたりして、意味を見出していくのがいいかと思います。それと、モチベーションも無限に湧くわけでは無いので、やっていて疲れがたまるなと感じた場合は、素直にその日の仕事を切り上げるべきでしょう。
また、新しい仕事への取り組み方ですが、業務に応じてそれぞれという感じでしょうね。慣れている仕事と類似していればすぐに実作業にかかれますし。ただ、大事なのは「何でこの仕事やってんねん?」「ほんまこのやり方でええんかいな」という一歩下がったメタ的な考えと、「今この仕事どうやるか」という実務的な考えとの、常なる往還を自分の中で保ち続けることかなと思います。
3.会社の営業や研究職のように目に見える成果が出にくい大学職員の仕事の中で、どのように成果をアピールしていくことができると思いますか?
この質問を一歩下がって考えてみたいのですが、そもそもなぜ「成果をアピールする必要がある」と考えられたのでしょうか。もしかしたら、自分のやっていることが見られていないと感じているからでしょうか。それであれば、「大丈夫です、あなたのやっていることはちゃんと見られています」とお答えしたいと思います。
大学職員の仕事も幅広く、中には個人別の成果が非常に見えやすい業務に携わっている方もいるかもしれません。しかし、大半の方の業務はそうでは無いですし、今回参加された方の年齢層で、そうした業務を携わっている方はほとんどいないと思います。
では皆さんがどのように周りから評価されるかというと、それは「まずは任せた仕事をしっかりとやってくれるかどうか」、「新しい仕事(=自分を伸ばす機会)を任せても大丈夫そうか」という観点からです。そうしたところを周りは見ていて、それが上手くいっていれば、その報酬や評価として「新しい仕事」「新しい機会」が返ってきます。(「え、給与や賞与じゃないの?」とがっかりした人もいるかもしれませんが、残念ながら金銭的な形で返ってくることはあまり期待しないほうがいいでしょう)
なぜそうなるのかは、逆にあなたが自大学の管理職という立場に立ってみたら分かりやすいと思います。部下の仕事ぶりを見て「私はあなたを信頼していますよ」「あなたに満足していますよ」というメッセージを送るのに、どこまで給与・賞与での差をつけることが制度上可能でしょうか。おそらく大幅に差をつけるというのはとても難しいのではないでしょうか。でも、その仕事ぶりをみて、新しい仕事・新しいチャンスを与えることは可能でしょう。例えば「こいつ見どころあるな、よし次はこんな仕事を任せてみようか」とか「確か外部機関に出向したいとか言っていたな、文科省なり私大連なり振興団でも頑張れそうだし、今度人事課から話があったら推薦しておこうか」と思ってくれるかもしれません。
そんなわけで、大切なことは、まずは地道な経験を積み重ねて、周囲の信頼を得て、それをステップに新しい機会にチャレンジしていく、ことになるかと思います(今回のお話では「ストレッチ」にあたるところです)。
もし上司や同僚から「またあなたと一緒に仕事をしたいね」というような言葉をもらったとしたら、それはとても評価されているということです。ぜひ引き続き頑張ってください。
4. 大学におけるキャリア形成についてはどうお考えですか。例えば、人事配置や学内研修では個々のキャリアと結び付けられる仕組みですか?
これは「大学側として」と「個人の側として」の二つの考え方が必要です。
しかし、現状として必ずしもそれが整備されているとは言えないところです。2010年の大学マネジメント研究会の「事務系職員の人材育成・人事制度に関する調査」に、調査グループの一人として関わりましたが、その際「(大学側の)人材育成の方針を定めている大学は国立・公私立とも4割前後」、「(個人の側に)キャリアプラン(を策定させること)については国立では3割程度、公私立では4割程度の導入率」という状況でした(詳細は、『大学マネジメント』2010年10月号参照)。つまり、どう育てるのか大学側は決めきれてないし、個人の側もそれぞれ次第というお寒い状況にある大学のほうが多いと言えるでしょう。
この点、先進的な例としては愛媛大学が挙げられるでしょう。愛媛大学では大学側のベクトルと個人のベクトルのそれぞれを一致させようと努力しており、個人を理解するとともにそれを大学側のベクトルとできるだけ沿わせるための取り組みとして「スタッフポートフォリオ」や「メンタリング制度」の取り組みを行っています。こうした取り組みについては、中教審で秦敬治・愛媛大学准教授(当時)が報告された資料など参考にしてください。
参考:秦敬治『大学間連携により実現する効果的なSD』、中央教育審議会大学分科会大学規模・大学経営部会(第9回)、2010年10月15日。
パート②に続きます!!



