8. 大学構成員である教職員のモチベーション(主体性)の向上が、未来を見据えた大学教育に必要になってくるだろうと思いながら、お話を聞いていました。グループワークの中で報酬(金銭)がないOCスタッフの方が、評価が高いとのお話があり、一方で発展途上国の子供達の方が金銭的な理由で学ぶ意欲が高いという話がありました。そこで質問ですが、満たされた日本を生きる日本人にとって、モチベーションを高める最も大きな要素とは何だと思われますか?(意図としては教員のモチベーションを高めたいと思っているのですが・・・)
マズローの欲求5段階で有名な説明があります。
人間の欲求は5段階のピラミッドのように構成されていて、低階層の欲求が充たされると、より高次の階層の欲求を欲するというもの。
第一階層の「生理的欲求」は、生きていくための基本的・本能的な欲求(食べたい、寝たいなど)で、この欲求を充たせれば、次の階層「安全欲求」を求めます。
「安全欲求」には、危機を回避したい、安全・安心な暮らしがしたい(雨風をしのぐ家・健康など)という欲求が含まれます。
「安全欲求」を充たすと「社会的欲求」(集団に属したり、仲間が欲しくなったり)を求めます。この欲求が満たされない時、人は孤独感や社会的不安を感じやすくなります。
ここまでの欲求は、外的に充たされたいという思いから出てくる欲求です。
そして次に「尊厳欲求(承認欲求)」(他者から認められたい、尊敬されたい)という欲求が芽生えます。ここからは外的なモノではなく、内的な心を充たしたいという欲求に変わります。
そして、最後に「自己実現欲求」(自分の能力を引き出し創造的活動がしたいなど)の欲求が生まれます。さらに自己超越という段階がその先にあります。
といものですが、発展途上国と違い日本は物質的にも満たされ、仕事をしなくとも食べられる社会です。社会的欲求以上の段階を欲している国家と思います。また、特に311以降、若者の意識が大きく変わって社会貢献で他者から認められたいという段階へと大きく移行したと思います。
教員のモチベーションという3の質問でもお応えしましたが、教員の欲求がどこにあるかということを確認しておく必要があります。現在の教員採用・認定基準が設置基準で決まっていますので、どうしても研究実績が高い教員が大学教員の多くを占めているのが現状です。研究に対するモチベーションは高いものがあるが、大学の運営、学生指導、授業などに対するモチベーションがないのが現状です。
しかし、教員も人ですので社会的欲求や、承認欲求もありますので、その部分をどう演出するかが重要かと思います。苦労した学生が成長し、謝恩会で感謝され、就職し感謝され、結婚式に呼ばれて感謝され、子供を連れてきて感謝されるという経験はされていますので、そこからくるモチベーションをより喚起する仕組みを大学の制度にしっかり入れていくことが重要と思います。つまり学生が先生に感謝をより多くできる仕組み創りです。
9. 人工知能や整った環境が整備された中で、その環境を当たり前としてとらえる。学生が卒業し、このような環境でない場所であっても、泥臭くまわりへの影響の輪を広げていくために、どのような教育スタンスをとればいいか悩みます。
便利になる世の中ですが、脳みそも使わなくなってしまいそうですが、人間にしかできなことは何かを問い続けたいです。
このあたり(「人間にしかできないこと」)へのお考えをお伺いできれば幸いです。
人口知能の進化がさらに進んだとき、人間にしかできないことは何か?考えさせられるテーマですね。様々な人が様々なことを言っていますが、私は、愛や友情や智慧や気づき、哲学的思考、宗教的な考え、芸術、音楽、喜び、信頼、支え合うなどの人間の良い面である部分がより必要とされると思います。これまでの作業的なもの、知識的なものは全てロボットなどに置き換わると思いますが、人口知能に最後までなしえないことは、「愛」的な部分と思います。したがって、学生には、人間性をより磨くように私は指導しています。戦争ではなく科学が最終的に人間の生存を目的として発展した場合、水、食糧、資源は、全地球民に均等に配分される社会へ進化すると思います。誰かより多く何かを得るために働く仕事はなくなると思います。仕事は、他者をより高次に成長させるための協働作業的な社会的な活動になり、喜びをより高めるような仕事になると思います。それが長い先だとしても、人間にしかできない人間らしいことが求められることは間違いないので、多国籍の他価値観の人々と協働作業をする仕事では、他者を理解し他者と協働して新たな価値を生み出す人財が求められると思います。
10. 日本の大学が、50年後、100年後と生き残るための戦略はずばり何でしょうか?
その大学に入学すると人材としての成長度が最も高まる教育ができる大学であり続けることだと思います。
11. コーチングやカウンセリング、ファシリテーターなどを学ぶにあたり、まずはどのような本や講座がオススメでしょうか。
特におすすめというものはありません。それぞれの流派ごとに良さがありますので。私の場合、何か新たなことを学ぶ際にしていることは、関連の本を10冊読み込むことにしています。そうしますと、自分の中に相場観ができ、ほとんど同じことを言っていることは共通したものとして身に付け、違いを吟味してこの内容が自分は良いと思うというように取り入れています。
12. 職員にも、教育する能力が必要でしょうか。私は教職などもとっていないため、”教育する”能力がありません。そういった方が、教育する能力を身につける為にはどうすればいいでしょうか。
大学の教員も教職をとって方がほとんどです。大学の職員が大学で教育している事例は多々あります。2019年から専門職大学が新たな大学として認可されていきますが、その場合も社会人や専門職の方々が大学で教鞭をとる形になると思います。したがって職員の方々も教壇に立たなくとも学校法人に所属している以上、学生を支援したり接する中で何か社会の先輩として教え成長させることが必要と思います。あなたが教育する能力がないことはありません。どんな人も先生です。全ての人がだれかに確実に影響し、その人の成長になっています。もっと言いますと学生から教わることのほうが多いくらいです。したがって自身が仕事を通じてより成長し、その経験や体験や得たことを学生に伝えること自体に価値があります。何より自分が自分らしく成長し続けることが重要だと思います。頑張ってください。
13. 大学の中で淘汰ゾーンに属する入試広報で働くものとして、今後の仕事に取り組む上でのモチベーション向上につながりました。数々の職員と会われた中で、仕事で成功を収める人に共通する特徴があれば教えていただきたいです。
長期レンジの視界で物事が見られて、情報を取得し、現状をしっかりと把握し、適切な危機感をもち、高い志を掲げ、大学をより良くしたいという情熱を持ち、その大学を愛し、学生の成長を信頼し、ビジョンを持って働いている人は、常に学び、行動し、失敗を反省につなげ、また学び好循環をしながら成長していかれます。ぜったいあきらめないことかと思います。
14. 改めて初心にかえれる貴重な機会になりました。寺裏さんは様々な職員と会われているかと思いますが、「コイツすごいな、印象に残ったな」という人がいれば教えてください。
個別のお名前は言えませんが、多数の尊敬できるすごい職員の方々と一緒に仕事をしてきました。13の質問にお応えしたような人です。また、日本に1000近くある私立の大学・短大や2000以上ある専修学校などを創設した人たちは、素晴らしい学校職員と思います。各大学の周年誌を読み感動します。また、若手の方でも優秀な方が多いと思います。学内にとらわれず、常に外部の接点をもち、大学の組織特有の闇に負けずに、変革と成長をし続けてください。