あまり批判的な事は書きたくないのですが、
運動指導者という仕事が、もっと世の中の人に認知されたいという願いをこめて今回は書きます。
「あえてね!」
私が個人的にお客様として通うフィットネスクラブでのひとこまでした。
私がトレーニングしている隣で、
20代前半の男性インストラクターが
30代中盤くらいの男性のお客様
に指導していました。
あきらかに初心者のお客様でした。
聞こえてきてしまうので聞いていましたが、
ダンベルでのショルダープレス(肩のトレーニング)
でしたが、基本の指導としては
とても良い指導
だと思いました。
安全性も高く、言葉使い、態度、指導の内容と、かなりグッドでした。
じっくり見てしまうと嫌だろう思うので、あえて見ないようにしたましたが、聞くかぎりでは十分な指導でした。
「ああ、ここのクラブは研修がしっかりしてるな」
というのが第一の感想です。
ちなみに、私がフィジカルコーチという仕事をしているという事は、そのフィットネスクラブでは隠してます。インストラクターの皆さんにフラットに接してもらいたいので、あえて隠してます。
インストラクターが一通り指導が終わった後でした、
お客様「これやってる途中で、なんか腰が痛くなるんですけど・・・」
インストラクター「あ・・、そうなんですか・・」
若いインストラクターがしばし考え込みました。
インストラクター「少々お待ち頂けますか。私より詳しい者に確認して参ります」
100点!!!
腰に痛みが出てしまうというのは残念な指導でしたが、新人インストラクターでは若干仕方ない部分でもあります。これを機に勉強できればいい事です。
こういう時に
適当な事を言ってその場を切り抜けるインストラクター
をこれまで沢山見てきましたが、ここのクラブのインストラクターは違います!お客様中心の考え方です。
経験と知識が不足している自分の体裁を考えるより、
恥をかいてでもお客様に適切なアドバイスをしたい
と考える行為です。こういう姿勢がインストラクターのレベルを上げていきます。
見ていて、聞いていて、とても気持ちがいいものでした。
ところが・・・・
そのお客様、
かなり待ちました。
計ってはいないですが、おそらく5分は待ったのではないでしょうか。隣に居た私が2セットやってもインストラクターが戻って来ないので5分近く待っていたはずです。
お客様、待ち切れずに他のトレーニングを始めました。やっていたのはサイドレイズ(やはり肩のトレーニング)です。
自己流でしたがどこかで見た事があったのでしょう、なんとなく形になっているのですが、いくつかのポイントがズレた明らかに間違ったフォームでした。
そこへインストラクターが帰ってきて言った事、
ノーカットでお伝えしますと・・・・
インストラクター「お待たせいたしました。確認して参りましたが、腰の痛みが出るという事でしたら、ショルダープレスではあまり重いウエイトは使わない方がいいという事でした。」
お客様「・・・ああ、・・・そうですか・・・、でもこっちのトレーンング(サイドレイズ)だと痛くないんですよね」
インストラクター「・・ああ、そうなんですね。・・・それならこっちのトレーニングの方がいいかもしれませんね。さっきのショルダープレスはあまり重いものを持ち上げない方がいいと思います。」
お客様「・・・そーですか、分かりました・・・。」
インストラクター「何か他に分からない事があったらいつでも聞いてください!では失礼します」
という会話。
正直、横で聞いていて何も言わずには居られないやりとりでした。
まず、
こんなに待たせるのなら、どうしてその「私より詳しい者」というインストラクターが直接来てお客様に指導しないのか。
おそらくこの新人インストラクターに研修の意味づけであちら側で教えていたのでしょうが、
「ここで待っているお客様がいる」
という事を完全に分かっていません。お客様中心の考えでないという事です。
次に、
「ウエイトが重すぎるのでやめましょう」という指導内容!
いやいやいやいや、このお客様がどんな既往症を持っているのかという確認すらしていないじゃないですか。
百歩譲って、腰部に何の問題も無いお客様なら、通常の指導で痛みが出るわけないじゃないですか。という事はおそらくなんらかのフォームミスがあるのだと、どうして考えないのでしょうか。
更に、
サイドレイズで痛みが出なくて、ショルダープラスで痛みが出ると言っているのに、そのサイドレイズのフォームを確認しないで指導を終了するというのはどういう考えなのか・・・
良く見てはいませでしたが、私の見解では、ショルダープレスの肩関節外転動作中に、大胸筋上部の関与を無意識に高めようとして上体を後方に倒し、腰椎過伸展の姿勢となり、腰部に緊張性の痛みが出たのではないかと予測します。サイドレイズで痛みが出なかったのは、そのサイドレイズのフォームが腰椎屈曲気味だったからです。
そうかどうかは分かりませんが、その可能性の確認をする事が必要だと思うのです。
「痛いならやらない」
という完全に「逃げ」の姿勢しかない「指導」を久しぶりに見てしまい、
どうしても黙っていられずに、何度もそのお客様に「指導」してしまいそうになりました。
でも、かなり考えて我慢しました。
いきなりそのお客様に声をかけて「実は今の話しはですね・・・」というのはあまり良い事ではないと思うのでした。それならばそのインストラクターに教えてあげる方が良いと思います。でも私はそういう立場ではなく、一人の「お客様」でしかないのです。悔みます・・
結果、このお客様には何も伝えずに私もその場を去りました。
いまだに心苦しいです・・・・ 私の態度の正解は何だったのだろうと・・・
このお客様が、
「インストラクターって、こんなもんなんだ」
というレッテルを張らないでくれればと、今になっても後悔してます。
逆に、もしも私がその場でそのお客様に指導してしまっても結局
「ここのインストラクターはこんなもんなんだ」
というレッテルを張る事になってしまったでしょう。
いまだにどっちが正解がわかりません。
もちろん、私の指導の方が正しいとも思っていませんが、
「可能性」の追求
をしないでこのお客様に「やめておきましょう」と言って終りにしてしまう「指導」に疑問を持つのです。
運動指導者の地位を低くしてしまっているのは、運動指導者自身なのではないかと思っています。
今後、ずっと考えていかなければならないテーマだと思います。