シリーズ~「教えるという仕事」~3 | 清水忍の「インストラクションズ」   
「教えるという仕事」もシリーズ3回目になりましたが、ここで初心に帰って、私が常に学生に言い続けている事を書きます。


私の会社名でもあり、ブログのタイトルでもありますが、「INSTRUCTION」とは、まさに「教える」という事です。


指導者の能力として必要なのは、知識は当然、実技も当然、そんな事は当然ですが、一番大切なのは

「伝える能力」
だと言い続けています。



伝える能力とは、

①分かりやすい言葉を選んでいるか
②相手の理解度を確認しながら話しているか
③興味を持たせているか

に代表されますが、それ以外にもいくつものポイントがあります。


そしてそれぞれのポイントに関して更に詳細ポイントがあります。

例えば①の、「分かりやすい言葉を選んでいるか」の詳細は、

①専門用語を使わないようにしているか
②同じ事を違う角度、違う言い回しで2回以上説明しているか
③その人の身の周りにある事で、イメージがわきやすい事を引き合いに出して説明しているか

などがあります。上記以外にも沢山の詳細ポイントがあります。




ちょっと具体的なお話をしますと、φ(.. )


腕立て伏せができない人がいるとします。
いつまでたってもできないのです。(>_<)


この人は、腕立て伏せなんて私にはできっこないと思っています。

でも、健常者(いわゆる普通の人)で、腕立て伏せができないほど筋量が無い人なんてありえません。

要するに、この人に「あなたは腕立て伏せくらいできるんですよ」と伝えたいのです。



どう言いますか?


正しい事を言っているのだけど、指導者としてダメな例を言いますと、

「筋肉は断面積1平方センチメートルあたり、6~10kg程度の力を発揮できますので、健常者でしたらどんなに非力な女性だとしても大胸筋の量から考えると50~60kg程度の力は発揮できるはずです。腕立て伏せで必要な筋力は、せいぜい30kg程度と思われるますので、従って腕立て伏せに必要な筋力はだれでも持っているという事になりますので、必ずできるはずです。ただ、人は運動単位のごく一部しか使用できていないので、持っているのに使えない筋肉が多いのです。大切なのは、運動単位の動員数を増やす事で、そうすれば腕立て伏せくらい余裕でできるはずです」


です。ZZzz....


これは正しい事を言っているのですが、伝える能力、0点です。



一方、これならどうでしょう。

「人間は不思議な生き物で、全力を発揮できないように作られてるみたいです。筋肉を持っているのに、使えないんです。
スマホ持ってますか?その機能、ほとんど使ってないですよね。
それと同じです。本当はもっとすごい能力があるのに、使い切れていないのです。
どんなに非力な人でも腕立て伏せができないほど筋肉の無い人なんていないんですよ。あなたより非力そうに見える人でも腕立て伏せをやってるじゃないですか。それが証拠です。
車の運転しますか?
では、大型トラックの運転、できますか?
できそうに無いと思いましたか?
それと同じです、大型トラックでも普通車と運転の方法は同じなので、運転は出来るのですが、できっこ無いと思ってしまうのですよね。
どうしてできっこ無いと思うのでしょうか。理由は簡単、やった事がないから、出来るという感覚をもてないのです。
腕立て伏せも一緒です。
出来ないと思っているから、出来ている時の感覚が想像できないんです。想像できないから体がそう動かない。
ちょうど、脚の骨折をして数ヶ月ギブスをはめていた人が、ギブスをはずした時に歩き方を一瞬忘れているようなものです。歩くときの感覚が無いからしばらく歩けないのです。でも、すぐに歩けるようになりますよね。
だから、腕立て伏せなんて絶対に出来ますよ。
出来てしまうと、こんなものだったか!という感じがしますよ。
ところで、望ましいフォームはですね・・・」

という感じです。



ここまで、長くてすみません。m(_ _ )m

後の指導のほうが、おそらく相手は理解しやすいと思います。



2人の指導者がいるとします。


A指導者は知識が 90 あるとします。
B指導者は知識が 70 しか無いとします。

ところが、

A指導者は、残念ながら「伝える能力」が低く、自分の知識が相手に 60% しか伝わらないとします。

一方、B指導者は伝えるのが上手で、相手に 80%伝わるとします。

すると、

<A指導者が相手に伝えた事>
知識 90 × 伝える能力 60% = 54

<B指導者が相手に伝えた事>
知識 70 × 伝える能力 80% = 56

で、結局は

B指導者の方が相手に沢山伝えている

という
事になります。
すなわち、B指導者のほうが良い指導者という事になります。


知識が高くても

相手に伝わっていなければ

相手から見たら

あなたは無知にしか見えないのです



指導者は、伝えてなんぼ!です。


上手に教えるという意識をもって勉強していますか?

と学生に言い続けています。

自分にも言い聞かせています。

もっともっと、上手に教えられるようになりたいです。