事故から10日が過ぎてめまいが落ち着き少し外に出ようかと考えていますが警戒心過剰なモーちゃんに止められウズウズしている西郷特盛です。
苦しい期間を乗り越え安心していますが皆さんは究極の目眩はどのような症状になるかご存知ですか?
耳鼻科で目眩の治療をすると医師は患者に『目眩で死んだ人は無い』と言い安心させますが
死んだ方が楽…
薬で意識を消してくれ!
と、叫びたいが声も出ない状態です。
そして、この究極の目眩は医療ミスで発生します。
私が勤務していた大学病院は医療の過疎化を防ぐ為に地方に分院を建てて医師が交代で勤務していましたが人手が足りない時は検査も応援に行く事が有りました。
その応援ですが始発の電車に乗り3時間揺られるので皆は嫌うのですが、私は帰りの電車で駅弁とワンカップ2杯を楽しむ時間が好きで自分から進んで出張していました。
その日は三年目の研修医に同行したのですが、勤務が終わる時間が近づくと外来から「西郷さーん」と研修医の悲鳴に近い声が。
外来に行くと床に蜘蛛の様に両手両足を広げ痙攣しながら体を浮かせ嘔吐する患者の姿が有りました。
私はこの症例を一度見た事がある。
街の耳鼻科を受診した患者が治療中に倒れ救急搬送されて来たのですが患者はベッドも椅子も拒否して床で同じ姿勢を維持していた。
診断は『両平衡機能神経麻痺』。
原因は中耳炎で鼓膜切開する時に麻酔薬を染み込ませたガーゼを鼓膜に10分くらい貼り付け麻酔をするのですが、麻酔薬が鼓膜に浸透し鼓膜の裏に溜まった滲出液と混ざり近くの平衡機能の神経も麻酔してしまい重力を感じ無い状態になります。
治まってから患者さんに状態を表現してもらうと体を上下左右でたらめに回転させながら自由落下している感覚と言いました。
宇宙飛行士の訓練でも行わないドMの人間でも裸足で逃げる拷問状態。
平衡機能神経まで麻酔が回る事を想定して麻痺しても片側なら単純な回転性目眩で済むように鼓膜切開は片耳ずつするのですが、開業医とこの研修医は時間節約で両耳を同時に麻酔していました。
『コイツ何度も教授が言っていたのに聞いて無かったな』
「西郷さん、見た事無い状態だけど知ってますか?」
「麻酔が浸透して両耳の平衡機能神経が麻酔された状態です。4時間もすれば麻酔が中和されて治ります」
「対処は?」
「失礼します」
靴を脱ぎ患者の背中を踏む私。
「脳は全身を使い重力の方向の情報を求めています。少しでも情報の量が増えれば無重力の感覚から解放されて落ち着き冷静になります」
10分後
患者は無重力感は残っていますが閉じていた目を開け落ち着きを取り戻しました。
そして全て終わったのは夜の9時近く
帰るにも電車は無く次の電車は深夜1時の夜行列車。
オマケに駅に到着しても乗り換える路線の始発まで2時間。
研修医の払いで居酒屋で時間を潰す事になりましたが
「教授には秘密にして下さい」を何度も聞かされました。
『口止め料なら寿司屋だろう』と不満な私は教授や講師先生に報告したいのですが研修医はテレビ局で働くADことアシスタントディレクターと同じ。
ADをストレス発散でいじめていた俳優が数年後ADから出世したディレクターに芸能界から排除されるのと同じで研修医も10年後には講師になると考えると黙っていました。
が、
分院の看護師が他の医師に話してしまい教授の耳に
研修医は厳重注意されましたが同時に私も
「緊急措置でも検査が診療や治療行為はするな。検査は必要以上に患者に触れるな」と注意されました。
話しは別の方向に傾きましたが究極の目眩の恐ろしさは伝わりましたか?
そして、今まで話しに触れませんでしたが平衡機能を検査する方法は人工的に目眩を発生させます。
患者の耳に冷風を流しリンパ液を対流させ平衡機能の神経を刺激したりスクリーンに映る回転する光る線を目で追わせ自分が回転していると錯覚させて目の動きを記録します。
時には回転する椅子に座らせる事も…。
そして、患者の中には『悪魔の実験室』と呼ぶ者も…。
そんな『悪魔の実験室』の元主のランチは
悪魔のおにぎり
某コンビニで売られて話題になりましたが
その発祥が南極越冬隊とは、あまり知られていません。
南極ではゴミを極力減らす為に残り物を有効活用するのですが天ぷらがメニューの時に出た揚げ玉をめんつゆで味付けして御飯と混ぜたおにぎりが隊員に好評で日本に帰還してインタビューを受けた一人が「悪魔的魅力のおにぎり」と言った事から某コンビニが売り始めました。
作り方は揚げ玉とめんつゆを混ぜるだけですが少し海老などの風味が欲しいのでコレを追加。
食欲アップの『悪魔的魅力のおにぎり』が完成です。
そして悪魔の子供は悪魔でした。
息子からのお見舞いの品は