第5801回「名探偵ポワロ全集 第49巻 オリエント急行の殺人 その2、ストーリー、ネタバレ」 | 新稀少堂日記

第5801回「名探偵ポワロ全集 第49巻 オリエント急行の殺人 その2、ストーリー、ネタバレ」

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 第5801回は、「名探偵ポワロ全集 第49巻 オリエント急行の殺人 その2、ストーリー、ネタバレ」です。原作とは関係なく、章とサブタイトルを付けさせていただきます。原作(あるいは映画化作品)とは、大きく雰囲気の異なる「オリエント急行」に仕上がっています。


「プロローグ1 軍内部の事件を解決したポワロ」

 いきなり軍事法廷から始まります。ポワロは厳しく被告を断罪します。しかし、被告は銃で自殺したのです・・・・。場面は、イスタンブールのフェリーのシーンに変わります。


 見送りの将校は、静かに語りかけます。「軍内部の問題を速やかに解決していただいたことには感謝します。しかし、あいつはいい奴でした。死ぬほどの罪とは思えません」 それに対し、ポワロは被告の犯した殺人の罪を厳しく断罪し、反論に代えます。しかし、ポワロの表情は陰鬱でした。


「プロローグ2 不倫を犯した女を裁くムスリムたち」

 ポワロが、イスタンブールの市街地を散策しているときに目撃した出来事です。ひとりの婦人が民衆に追われていたのです。民衆の中には、多数の女性も混じっていました。追われている婦人は、不倫を犯したようです。ムハンマドの掟では、死罪です・・・・。


 その処刑を止めようとした白人の婦人がいましたが、連れの男性が女性を制止します・・・・。ことが終わった後、メアリーというその女性にポワロは語りかけます。「民衆の行為は正義です。殺された女は、それを承知で不倫を犯しました。それがムスリムの掟です」、のちにポワロは、メアリーと彼女の連れに再会することになります・・・・。


「第1章 ポワロ、カレー行きのオリエント急行に乗る」(第一夜~翌日)

 ホテルには、ポワロあての至急電が届いていました。ロンドンに帰る必要がありますが、あいにくオリエント急行は満席でした。しかし、偶然、オリエント急行の役員ブークと出会ったのです。職権で客席を確保してくれましたが、最初の一夜は2人部屋である2等車になりました。嫌がる客と同室になります。


 カレーまでは、3日かかります。一夜目が明け、ポワロは一等車に移動します。しかし、昨夜から不愉快な出来事を目撃していました。アメリカ人実業家ラチェットが横柄に振る舞っていたのです。下品とも言えます・・・・。


 朝、食堂車に行くと、国際列車らしい顔ぶれでした。ロシア亡命貴族の公爵夫人、ハンガリーの伯爵夫妻、インド帰りの女性宣教師など・・・・。もちろん、メアリーと連れの男性(大佐)も乗っていました。そんな中、あのラチェットが、護衛を依頼してきたのです。もちろん、ポワロは拒否します・・・・。


「第2章 ラチェット殺害さる」(第二夜から翌朝)

 オリエント急行は、ユーゴスラビアのベオグラードに停止した後、発車します。ポワロは眠るにあたり、敬虔なカトリックらしく神に祈りを捧げていました。同時刻、ラチェットも祈りを捧げていました。もちろん、ポワロとラチェットでは、祈りの内容は真逆でした・・・・。


 同夜2時、ポワロはラチェットの悲鳴で起こされます。しかし、個室の中から、ラチェットはフランス語で悪夢にうなされたためだと返答しています。同時刻、オリエント急行は豪雪のために行く手を阻まれていました。以降、ドラマが終わるまで、豪雪の状態と列車の復旧状況が、何度も何度も映し出されます。


 2時40分、ふたたびポワロは起こされます。乗客のひとりが不審な人物を目撃したと騒いでいたのです。中年のアメリカ人・ハバート夫人が枕元に男が立っていたと言うのです・・・・。


 朝早く、ポワロは車掌に起こされます。すぐ来てくれというのです。ラチェットが刺殺されていました。胸に10数か所わたって傷跡があります。ポワロはキズの状態を詳細に調べます。傷口は12か所、時に浅く時に深く刺されていました。しかも、左右両手で・・・・。列車の外の雪には、踏み跡が見られません。


 「雪が降りやんだ時刻から推定すると、犯人は列車内にいる」とポワロは断定します。オリエント急行の役員ブークは、調査を依頼します。「ここはユーゴスラビアです。現地の警察は特にひどいんです。会社としても豪華列車で殺人事件なんて困るんです」、ポワロはいやいやながら引き受けます。


「第3章 残された証拠と乗客からの事情聴取」(第三日)

 犯人のものと思われる遺留品は少なからず見つかりました。

1. Hのイニシャルの付いたハンカチ・・・・ 伯爵夫人のミドルネームでもあり、公爵夫人の名前も、ロシア語表記ではHでした。

2. 車掌のものと思われるボタン・・・・ 後に、制服が発見された際、ボタンが取れていました。犯人が車掌に変装し、犯行に及んだのでしょうか。

3. 灰皿に残された紙の燃えがら・・・・ ポワロが再現実験を行うと、"aisy Arms"の字が浮かび上がりました。前後に何かが書かれていたのでしょうか。

4. ラチェット宛の脅迫状・・・・ 彼は何者かによって、明らかに脅迫されていました。


 一方、秘書の証言から、ラチェットが所持していた20万ドルが消え失せていることが判明します。ポワロは、全員にパスポートを提出させます。そして、ひとりひとり尋問していきます。そして、尋問と「遺留品-3」を検証した結果、事件の背景を知ります。被害者を含め乗員・乗客の全員が、何らかの形で、ある事件の関係者だったのです・・・・。


「幕間 デイジー・アームストロング誘拐殺人事件」(5年前)

 アメリカの国民的英雄アームストロング大佐の愛娘デイジーが誘拐されました。そして、デイジーは遺体で発見されました。ラチェットも容疑者として逮捕され、起訴されたのですが、マフィアが手を回した結果、無罪を勝ち取っています。いわゆる推定無罪です・・・・。


 当時デイジーの母親は、第二子を身ごもっていました。しかし、流産したうえ、亡くなっています。アームストロング大佐も後を追うように自殺しました。そして、容疑者として浮上したメイドも、獄中で自殺しています・・・・。


「第4章 暴かれた真実」(第三夜)

 ポワロは、"aisy Arms"を"Daisy Armstrog"の一部だと解釈したのです。その視点に立つと、次々と乗客とデイジー・アームストロング事件との関連性が浮かび上がってきました。


 ポワロは、静かながらも、女宣教師と激論します。ポワロは、カトリックらしく裁くのは神だと主張したのに対し、女宣教師は、神が沈黙した時には、善良な人間も裁き手になりうると反論します。「復讐するは我にあり」(ローマ人への手紙12章19節)とは・・・・。


 この間も、復旧作業は続いていました(ドラマ版では、何度も復旧の様子が映し出されています)。明朝にも、ラッセル車と警察が現地に駆け付けるそうです。しかし、電源を失った列車には、明かりも暖房もありません。ろうそくの明かりだけの食堂車に、ポワロは車掌と乗客を集めます。


 ポワロが提示した真相は、まったく異なる二つの真相でした。ここから、ドラマ版の面目躍如たる展開が始まります。ただ、決して愉快なものではありません。以下、最後まで書きますので、ネタバレになります。


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 「ひとつめの真相は、車掌の制服を着たマフィアが、ラチェットを殺したというものです。その後、逃走しています」、ふたつめの説明は長いものでした。車掌を含めて十二人に対して、アームストロング事件との関連性を次々と指摘していきます・・・・。


 そして、犯行当時の状況を再現していきます。ラチェットに身体を麻痺させる薬を投与しますが、意識は覚醒したままです。そして、ひとりの女性がラチェットの罪状を告発していきます。その間、ひとりひとりラチェットの胸にナイフを突き刺していきます。体力に応じ、時に浅く、時に深く・・・・。利き手が左手の者は、左手で・・・・。


 「ラチェットに残された傷は十二、陪審員はやはり十二名、あなた方全員は神を気取って、犯人のラチェットを裁いたのだ。私は決してあなたがた全員を許さない」、冒頭のエピソードとか、女宣教師との激論などが活きています。原作と劇場版では、あっさり「ひとつめの真相」で片づけていますが、ドラマ版では、ポワロは頑(かたく)なです。


 激高した男性のひとりは、ポワロを殺そうとしますが、止めに入ったのはメアリーたち女性でした。「ラチェットを殺したことは、今でも後悔していないわ。でも、ポワロさんを殺すことは、明らかに罪よ」


「エピローグ ポワロの苦渋の選択」(第四日、朝)

 ラッセル車と警官隊が駆け付けてきました。十二人の犯人とポワロは、雪の積もった線路わきに立ちます。ポワロは、警官隊に近づきます。ポワロには苦渋の色が浮かんでいました。「現場に残されたボタンと、犯人が着ていたと思われる車掌の制服です。犯人は犯行後、逃亡しました」


 十二人の表情が映し出されます。そして、乗客たちに背を向けたポワロの苦痛に満ちた表情も・・・・・。


(追記) ドラマ版の感想と原作・劇場版のあらすじにつきましては、"その1"に書きました。興味がありましたらアクセスしてください。ドラマを観た人の多くが、観る前から結末を知っている原作です。そこに、ドラマは、思想性と宗教性を持ち込みました。優れた映像化作品に仕上がっています。

http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11466749413.html