第5800回「名探偵ポワロ全集 第49巻 オリエント急行の殺人 その1、感想 裁くのは誰?」 | 新稀少堂日記

第5800回「名探偵ポワロ全集 第49巻 オリエント急行の殺人 その1、感想 裁くのは誰?」

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 第5800回は、「名探偵ポワロ全集 第49巻 オリエント急行の殺人 その1、感想 裁くのは誰?」です。


 このドラマは、原作ともハリウッド大作版とも大きく異なります。プロットも、犯人の特定過程(フーダニット)も、結末も全く同じなのですが、やはり違うのです。テレビ・スタッフは、「オリエント急行殺人事件」に、思想性と宗教性を持ち込みました。


 そして、成功しているのです。当然、原作にも劇場版にもない伏線を冒頭に持ってきています。ドラマ版では、ポワロは自らの信条と闘います。「復讐するは我にあり」、この場合の「我」とはもちろん神のことです。被疑者は、ポワロに激しく反論します。「神の沈黙に対し、神に代わって復讐した」と・・・・。


 事件の背景については、ドラマの半ばまで伏せられています。これも劇場版と大きく異なります。ドラマ版を初めて観た際、ラストには涙が流れました。ある意味、ドラマ版は、従来の「オリエント急行殺人事件」とは別作品と言えるのかもしれません・・・・。


 次回、ストーリーについて書く予定ですが、その前に既に書いているブログから全文再掲します。ストーリーについてはほとんど触れていませんが、それでもネタバレがあります。


 『 クリスティの同名小説の映画化です。この小説または映画を御覧になった方は、ある事件を想起されるかと思います。


 大西洋の単独横断飛行に成功したリンドバーグです。彼の愛機「スピリツト・オブ・セントルイス」は、いまなおスミソニアン博物館に展示されています。いわば、アメリカの英雄です。しかし、彼の愛児は誘拐されました。そして、長い捜査の果てに見つかったのは、愛児の遺体・・・・。事件は、容疑者の処刑をもって、終わったように見えるのですが。


 この映画の冒頭、類似の事件がドキュメンタリー・タッチで紹介されます。そして、時間が経過します。舞台は、オリエント急行。名探偵ポワロも乗り合わせていました。車内で事件が発生します。誘拐犯の容疑者とおぼしき人物が、多数の刺し傷で亡くなっていたのです。


 列車は、豪雪のため、閉じ込められます。オリエント急行運営会社の要請で、ポワロは捜査を開始します。寝台車に乗り合わせた人たちは、全て誘拐事件の被害者家族に関係する人たちばかりです。誰が犯人であっても不思議ではありません。あとは、誰に機会があったのでしょうか・・・・。


 以下、ネタバレがあります。


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 刺し傷は、12箇所。陪審員は、12人。容疑者を裁いた(殺した)ものは、誰か。見事に、クリスティ(あるいはシドニー・ルメツト監督)は、観客を誘導していきます。


 キャストが凄いのです。かっての名女優、当時の旬(しゅん)の女優・男優など豪華絢爛です。舞台は、列者の中のみ。舞台劇を観ているようです。クリスティ・ファンだけでなく、ミステリ・ファン必見の映画です。 』