第3811回「名探偵ポワロ全集、第16巻、満潮に乗って、その2、ストーリー、ネタバレ」 | 新稀少堂日記

第3811回「名探偵ポワロ全集、第16巻、満潮に乗って、その2、ストーリー、ネタバレ」

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 第3811回は、「名探偵ポワロ全集、第16巻、満潮に乗って、その2、ストーリー、ネタバレ」です。


 ドラマは、社交クラブの一室から始ります。車椅子に座ったポーターという元少佐が、ポワロに話しかけてきたのです。彼は、2年前のガス爆発事故を話し始めます。爆発当時、彼は現場近くにいました。その時、足を失ったのです。


 ゴードン・クロードの屋敷が爆発したのですが、主のゴードンをはじめ、従業員多数が亡くなりました。幸いにも助かったのは、ゴードンの若き妻ロザリーンと、ロザリーンの兄のデビッド・ハンターだけでした・・・・。爆発時、ふたりは偶然、地下のワイン・セラーにいました。それが、ふたりの命を救ったのです。当時、爆発した屋敷から傷だらけで出てきました。


 ゴードンは、妻のロザリーンに、莫大な資産の全額を遺贈する旨の遺言書を残していました・・・・。ポーター元少佐は、クラブの会員に、この話を繰り返ししているようです。近くにいた人たちに、うんざりしたような表情が浮かびます。


 ポワロが、クロード一族の遺産問題に介入するきっかけとなったのは、キャシー・ウッドワードの依頼によるものです。彼女は、ゴードンの妹であり、交霊術に凝っています。口癖は、"神の子"です。彼女の言い分は、ロザリーンは二度目の結婚であり、前の夫ロバート・アンダヘイは死んでいないと言うのです。


 アンダヘイは、行方不明のため死亡の推定が成立し、ロザリーンは独身だとされていたのですが、・・・・。アンダヘイ生きていれば、重婚となり、そもそも遺言書は無効です。それが、クロード一族の狙いです。ポワロは、ゴードンの屋敷のある地に赴きます。そして、"スタッグ・イン"という古めかしい宿に泊まります・・・・。


 ポワロが、この遺産相続問題に興味を持ったのには、他にも理由があります。ポワロの友人の娘であるリン・マーチモントも、クロード一族のひとりだったのです。近々、アフリカから戻ってきます。リンは、アフリカで慈善活動をしていたのです。そして、結婚の予定も・・・・。相手は、やはり一族のローリー・クロードです。農園主をしています。


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 一族の館で、リンの帰国パーティが開かれます。そのパーティを利用して、フランシス・クロードがロザリーンに金をねだったのです。夫のジェレミーは、客の金を使い込んでいました・・・・。ロザリーンは、1万ポンド(現在価値1億円?)の小切手を切ります。ですが、パーティの席で、ロザリーンの兄のデビッド・ハンターが暴露しただけでなく、小切手を取り返したのです。


 パーティは、一気に気まずい雰囲気に包まれます。クロード一族の憎悪が、ロザリーンとデビッド・ハンターに向います。そんな時、イノック・アーデンという人物が、デビッド・ハンターに接触したのです。ポワロも泊まっているスタッグ・インの自室で会います。アーデンは、アンダヘイが重病で入院している、治療のために2万ポンド必要だと言います(明らかに恐喝です)。


 デビッドは、疑念にさいなまれます。アンダヘイは本当に生きているのか、生きていれば、相続は白紙になります・・・・。デビッドは、取引に応じることにします。ですが、脅迫者(?)のイノック・アーデンが殺されたのです。アーデンが最後に確認されたのは、8時半頃です。スタッグ・インのオーナーが、スカーフをした女性が、アーデンの部屋から出てくるのを目撃していたのです。


 リンは、7時前にデビッドと会っていました。デビッドは、その後、7時過ぎの汽車でロンドンに行っています。到着後の10時過ぎには、デビッドはロンドンからリンに電話を入れていました。


 ですが、そのデビッドが、予審訊問の法廷に引き出されたのです。ここで、決定的な証言したのが、車椅子生活を余儀なくされているポーター元少佐です。被害者がアンダヘイだと言うのです・・・・。法廷内が騒然とします。デビッドは、犯行時間にはロンドンにいた、それをある女性が証明するだろうと告げます。


 そして、自殺が相次ぎます。証人のポーターが、クラブで拳銃自殺をし、ロザリーンが大量のモルヒネで自殺しようとしたのです。ですが、幸い一命を取り留めます。ポワロは、ロザリーンの顔色が悪いため、キャシー(交霊術マニア)の夫で医師のライオネルに診断してもらった経緯があります。


 ポワロは、アーデンの殺害現場で、口紅を見つけます。ポワロには、ほぼ事件の全容が見えてきました・・・・。以下、最後まで書きますので、ネタバレになります。


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 事件が大きく動いたのは、リンが、婚約者のローリー・クロードに婚約の解消を申し入れた時でした。リンは、デビッド・ハンターを愛していると告げます。その時、ローリーがキレたのです。「俺が何故、あの男(恐喝者)を殺したと思う・・・・」、謎の脅迫者を殺したのは、ローリーだったのです。ローリーがリンを襲おうとしたとき、ポワロと警察が駆けつけます・・・・。


 ポワロは、事件関係者全員を集めます。被害者は、フランシスとジェレミーのクロード夫妻が依頼した、一族の遠縁の者だと指摘します。デビッド・ハンターを恐喝してくれれば、2万ポンドの半分を提供すると・・・・。残りの半分で、ジェレミーの使い込みの穴埋めに使う予定だったのです。


 さらに、ポーター少佐の自殺に言及します。ポーターに偽証させたのは、キャシーと医師のライオネルのウッドワード夫妻でした。その偽証は、ポーターに猛烈な悔悟を呼び起こします。その結果、自殺したと・・・・。ただ、医師は、いいこと(?)もしています。


 ライオネルはポワロの依頼で、ロザリーンを往診した時、彼女がモルヒネ中毒だと知ったのです。ロザリーンは、大量のモルヒネを所持していました。自分もモルヒネ中毒であるライオネルは、モルヒネを抜き取り、混ぜもので薄めたのです(目的は、自分が服用するための盗み)。そのため、大量に服用しても、ロザリーンは死ななかったのです・・・・。


 クロード一族の暗部を指摘し終わった後、ポワロは、この事件の背後には、巨悪が存在すると指摘します。2年前のガス爆発事故は、ダイナマイトによる爆破事件だったと断言します。その証拠をスコットランド・ヤードから入手したのです。現場には、時限装置の破片が残されていました・・・・(それなら、何故捜査を進めなかったのでしょうか)。


 その犯人こそ、デビッド・ハンターだと指摘します。そして、ロザリーンとされた人物は、召使いのひとりであったとも・・・・(妹のロザリーンと召使いの入れ替わりも無理があります)。ゴードン夫妻を殺すために、多数の召使いまで巻き添えにしたその犯行は、極悪非道だったと弾劾します。


 一方、現場に残された口紅から、スタッグ・インのオーナーが目撃した女は、デビットが女装したものだとも指摘します。このままでは、容疑者になるため、アリバイ作りのために一芝居打ったと・・・・。大量殺戮者としては、皮肉な結果です。デビッドはロンドンには行っていません。デビッドは、警察によって連行されます・・・・。


 場面は変わり、デビッドの絞首刑が執行されます。さらに場面は変り、リンの部屋が映し出されます。リンは、アフリカに戻るために、荷造りしていました。ポワロは、亡き友人の娘であるリンを訪れます。リンをそれとなく慰めます。去ろうとするポワロに、リンは声をかけます。「多分、イギリスには戻ってこないけど、手紙は出すわ。手紙下さいね、あなたの手紙、とっても素敵なんですもの」


(補足) タイトルの由来と感想につきましては、"その1"に書いています。興味がありましたら、アクセスしてください。http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11007359581.html


(追記) デアゴスティーニ版「ポワロ コレクション」につきましては、順次ブログに書いていく予定です。過去のブログに興味がありましたら、お手数ですが、ブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に"ポワロ全集"と御入力ください。