第3810回「名探偵ポワロ全集、第16巻、満潮に乗って、その1、感想、悪とは?」 | 新稀少堂日記

第3810回「名探偵ポワロ全集、第16巻、満潮に乗って、その1、感想、悪とは?」

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 第3810回は、「名探偵ポワロ全集、第16巻、満潮に乗って、その1、感想、悪とは?」です。原作と、設定を大きく変えています。ハヤカワ文庫のカバー裏面の作品紹介から引用します。


 『 大富豪ゴードン・クロードが戦時中に死亡し(空襲のため死亡)、莫大な財産は若き未亡人が相続した。戦後、後ろ盾としてのゴードンを失つた弁護士や医師らクロード家の人々は、まとまった金の必要に迫られ窮地に立たされていた。“あの未亡人さえいなければ”一族の思いが憎しみへと変わった時…戦争が生んだ心の闇をポアロが暴く。 』


 ドラマでは、ゴードンは、ガス爆発で亡くなっています。自宅で、使用人多数と爆死したのです・・・・。ドラマでは、その2年後が描かれています。原作の空襲とは異なり、このことが最大の伏線になっています。


 ドラマもそうなのですが、恋愛ミステリになっています。ポワロが庇護する女性が、愛に翻弄されます。ですが。ポワロは遠くから注意深く観察するだけです。その女性は、ポワロの信頼にこたえられるでしょうか。彼女が愛するのは、農園主か、それとも、・・・・。


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 「嵐が丘」のヒースクリッフのような男性が、登場します。虚飾と欲望の渦巻くクロード一族を翻弄し続けます。そして、ヒロインも・・・・。極めて不愉快な人物です。常に他人を支配しようとします。そのことが、さらなる不和を生んでいきます。


 2年前のガス爆発事故、相続人を失格させる重婚問題、それらが微妙に交錯し,醜悪な殺人を生み出します。そして、事件関係者の自殺を・・・・。この事件では、まぎれもなく"悪"が存在します。ポワロは、一族の闇を追ううちに、巨悪の存在に行き着きます。ドラマは、絞首刑の様子を映し出します・・・・。


 ラスト、ポワロは、優しいまなざしでヒロインを見つめます・・・・。ヒロインは、ポワロに言います。「手紙を頂戴、あなたの手紙は素敵だから」


 次回、ストーリーについて書く予定です。


(蛇足) タイトルになっている「満潮に乗って」は、シェークスピアの「ジュリアス・シーザー」からの引用です。ブックレットから、該当部分を引用します。

 『 人の世の事柄には潮時があり、うまく満潮に乗れば幸福にたどり着く。 』


(追記) デアゴスティーニ版「ポワロ コレクション」につきましては、順次ブログに書いていく予定です。過去のブログに興味がありましたら、お手数ですが、ブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に"ポワロ全集"と御入力ください。