第3676回「名探偵ポワロ全集、第9巻、ポワロのクリスマス、その1感想、掟破りとネタバレの是非」 | 新稀少堂日記

第3676回「名探偵ポワロ全集、第9巻、ポワロのクリスマス、その1感想、掟破りとネタバレの是非」

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 第3676回は、「名探偵ポワロ全集、第9巻、ポワロのクリスマス、その1、感想、掟破りのミステリ?」です。ノックスというミステリ作家は、「ノックスの十戒」というミステリの掟を発表しています。全文をウィキペディアから引用します。


1. 犯人は物語の当初に登場していなければならない

2. 探偵方法に超自然能力を用いてはならない

3. 犯行現場に秘密の抜け穴・通路が二つ以上あってはならない(一つ以上、とするのは誤訳)

4. 未発見の毒薬、難解な科学的説明を要する機械を犯行に用いてはならない

5. 中国人を登場させてはならない(この場合の「中国人」とはフー・マンチューなどに代表される「超常現象を駆使する人物」を指す)


6. 探偵は、偶然や第六感によって事件を解決してはならない

7. 変装して登場人物を騙す場合を除き、探偵自身が犯人であってはならない

8. 探偵は読者に提示していない手がかりによって解決してはならない

9. “ワトソン役”は自分の判断を全て読者に知らせねばならない

10.双子・一人二役は予め読者に知らされなければならない


 「ノックスの十戒」に対し、ヴァン・ダインは「二十則」を遺しています。第3則には、「不必要なラブロマンスを付け加えて知的な物語の展開を混乱させてはいけない。ミステリーの課題は、あくまで犯人を正義の庭に引き出す事であり、恋に悩む男女を結婚の祭壇に導くことではない。」とありますが、クリスティは逆手にとっています。説得力ある動機を提示しているのです。


 「ポワロのクリスマス」では、出版当初、ミステリ評論家が結末部分を雑誌で公表してしまいました。当時としては、異例の"ネタバレ論争"を引き起こしています・・・・。クリスティ自身、過去の事件について触れることがありますが(他作品のネタバレになっています)、評論家の投稿は明らかに"掟破り"です。


 私自身、ミステリの感想を、ブログに書く際には、ある時期を境にネタバレに切り替えました。回数が1000回を超えているものは、犯人の特定を含めて、トリックについても詳述しています。他のジャンルの作品と大きく異なるのが、トリックなのですが・・・・。その心境の変化につきましては、別の機会に改めて書きたいと思います。


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 クリスティ作品につきましては、はじめて読む前に、トリックを知って読んだものが少なくありません・・・。それでも、クリスティは面白いというのが実感です。ある意味、良きビクトリア朝時代の後継者です。読んでいて楽しいのです。それは、ホームズ譚にも通じます・・・・。


 「ポワロのクリスマス」の原作では、アリバイづくりのため、血の凝固を遅らせるクエン酸ナトリウムを使っていますが、ドラマではカットされています。また、被害者の血が大量に流されていますが、マクベスからの引用だけに止められています。「老人にあれほどの血があるとは」(要旨)


 ドラマの全編を彩るのは、クリスマス・キャロルです。ポワロは、親友のジャップ警部からクリスマス・プレゼントを贈られます。「ポワロのクリスマスは、とても静かなクリスマスです。ラジオと読書です・・・」、そう語っていたポワロに、神が命じたのです(単に、セントラル・ヒーチングが壊れただけですが)。神のひき臼が静かに廻り始めたのです。いかなる小さな粒(罪)をも見逃さない"神のひき臼"が・・・・。


 次回、結末までストーリーについて書く予定です。


(追記) ディケンズの「クリスマス・キャロル」につきましては、既にブログに書いています。興味がありましたら、アクセスしてください。http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10746803637.html