いつの日だったか…晩飯

 

     

 

     

 

 

       

               

体調は芳しくない。だがこの授業が客員としての最終講義となり 生徒が待ってる。 

車窓からの富士は綺麗だ。

 

しかし怖ろしい息吹山の神は荒れ狂っていると訊く。関が原を避けて 伊勢湾岸道から東名阪へと車を走らせた。

13時55分 大学に到着、冷たい風が頬を刺す。

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雪のためか 1~4回生が200人ほどしかいなかった。 

小 中 高で縄文時代を習っていない世代だ。その学生たちが どうしても縄文時代を学びたいという。皮肉なものだ。一回の講義で全てが解るわけではない。

しかし 発掘すれば縄文土器は出る。日本文化の基層は縄文文化だ。

文科省は何故 縄文を教科書から消したのだろうか…憤懣やり方ない。

 

「縄文を理解するには、君たちは次の2つだけを頭に叩き込んでくれ」

1、現代人と縄文人は、それぞれの社会が内在する「価値体系(価値意識の総体)」

   が大きく異なり、それに伴う「社会規範(行動・ルール・慣習など)」が違っている。

     従って、両者の「世界観=自然観」に隔たりがある。

     現代人は「唯物世界観」の下で「物質本位社会」を営み、
     縄文人は「唯心的世界観」の下で「自然共存社会」の生活を営んでいる。
 
2、現代の物質文化➡自然の破壊 改竄 搾取によって得られた「物質根源の生産消費系」
   縄文の物質文化➡自然環境に対応するための道具による「狩猟採取系」
 

その後 土器の話、精神性の高さ、土器文様の捉え方などの話をして講義を終えた。

集まって来る4回生、

「Sさん、そうかおめでとう 県の埋文課が決まったか」

「おう T君、○○市か、早速調査だな 冷やかしに行くぞ 頑張れよ」

こんな話で盛り上がった。みんな可愛い 僕の子供たちだ。

 

その後、一人になって僕は静かに車の中で崩れた 具合が悪い。

暫くしてホテルへと車を走らせた。途中車を止めて、夜空に浮かぶ白い満月を観た。

「今年は大凶に始まったなぁ、第1四半期は大凶か…でもあの満月が明るさをくれる」

そんな希望をもって白く輝く月を眺めた。