12月10日 10時半頃、家を出て直ぐの初冬の景色。

春が来た と思わせる冬桜と、葉を落とし尽くした八重桜に紅葉の幕引き。

   

 

出発は正午過ぎ、東名川崎ICの先から事故渋滞。川崎ICから一般道を走った。

これで初冬なのかと 車の窓を開けるほど暖かい。

 

兄いの墓所に着いたのは15時頃、境内はまだ紅葉盛り見えた。

   

 

兄イのファンの方がお二人、花を活け 墓所に水を流し掃除して下さっていた。

お一人の男性は深川から もうお一方の女性は流山市から、遠い所からわざわざ…、

何とも有難い事だ。しかも兄いの好きな線香「淡墨桜」まで持参されている。僕は慌てて家を出て玄関に置き忘れて来た 2度目だ。お礼の言葉をかけ 暫し話をした。

 

「オゥ 遅かったな 苅」

「道路事情で滑り込みセーフ」

「ハッハッ… なあ苅 悩むなよ お前、俺と社長の力が足りなかったんだ」

「悩んでません。それに言い出したのは俺 動いたのも俺です。兄イも社長もしっかり

 後押してくれました。寄付金も全てお返しゝて終わりました。

 皆さんの いつでも協力しますよ苅谷さん の言葉は嬉しかったですよ」   

「お前流のやり方で チャンと筋は通したな 苅」

「はい…」

「涙か」

「いや 薄墨桜の煙が滲みただけですよ」

「ハッハッ、映画の台詞みたいなこと言うな お前という奴はホントに」

「はい 馬鹿です」

「ハハハ、なぁ苅 戦後の昭和の気質が無くなったよな

「確かに、でも まだいますよ そういう奴は」

「うん…でもな お前を解る奴 少ないぞ。お前の心髄 見え難い」

「口下手ですから、伝わらんのです」

「お前を解るには20年かかるよ」

「え~ッ、兄イ 同じですよ ハハハハハ」

「社長のところ行くんだろ 早く行け」

「はい。兄イ28日に また」

 

いつも立ち寄る喫茶店に顔を出して、お土産の奈良漬をいただき 多摩川へ出た。

凄い混みようだ、陽が沈み 空は見事な絵画を見せてくれる。

   

 

鶴見の社長の寺に着くと直ぐに 金剛力士像が頭を過ぎった。睨みつける顔の奥に隠した笑みが見える。ありがとうございます!

        「アゝ いいぞ」          「ウン 行くがよい」

   

 

スッカリ暗くなってしまった。社長すみません。

 

   

 

「オゥ 苅谷君、今年3回目か 夜に来たのは」

「すみません、覚えていないんです。でも晴れです」

「ヘッヘッ、お前な 俺も晴れ男に変わったんだ。哲とお前にやられた」

「社長、あの…」

「言わなくていゝってことよ 解ってる。俺を何度も泣かせた男 初めて泣いたな」

「社長!あれは」

「ヘッヘッへ、よ~く判ってる。半世紀過ぎてんだ お前とは」

「はい。判りました」

「よう よう、せっかく来たんだ、晩飯一緒に喰わせてくれ」

「酒でしょ 社長」

「ま~な、ヘッヘ 」

「何とかしますよ。でもあまり期待しないでください。17日と28日また来ます」

「オゥ、嬉しいねぇ でも無理すんなよ」

「残り酒から片付けて それから…」

「よっしゃ 任せとけ、いいか苅谷君 俺と哲はお前の事を一番よく知ってる 解ったな」

「はい、社長。そこに行きたいです」

「馬鹿言うな、マダマダだ。早く帰って酒の支度してくれ」

「社長、ありがとうございます」

 

飛ばした。嬉しい、俺を知っているお二人。嬉しい。

 

   

粗末だけれど、今日までカラスミはとっておいた。畳いわし・喫茶店で誕生日祝いのお土産に頂いた奈良漬・少しだけどヒレ肉ステーキ・頂き物の里芋の煮付け・トマト

残り物のブランデーとウイスキー。ありがとうございます 社長、兄イ。