〇今日20日締め切りの原稿、まだ一枚も書いてない、徹夜になるのは間違いなし。

〇企画書の補足分も必要だが、冷静の中に燃えたぎる情熱が湧いてこない。

 以上 愚痴(笑)

 

16日の[送り盆]を今日20日に綴るなんて、社長・兄イすみません[遅れ盆]です。

人っ子一人いない。噓のように静まり返っている墓域。

 

   

 

「​​​​​​社長、恐ろしい程の静寂ですねぇ今日は」

「おうッ来たか苅谷君、まッそんなもんだ。お前36年間通い続けたな 」

「あッという間ですね社長、あの時のまゝですよ自分は

「バカ、それは俺のセリフだ」

「自分は体力も気持ちも変わってませんよ」

「お見通しだぜ、俺は」

「でしたね、ハハハ」

 

線香の煙が何処となく寂しそうだ。もうそんなに経ったのか…

[送り盆]の日だが、俺の胸の中にはいつもお二人がいる。

 

「社長、山中の別荘で話した 池に石を投げた時に出来る波紋のような映画、

 作りますよ」

「二人だけで話したなぁ徹夜で。頼むぞ必ず出来るお前なら」

「勿論です」

「力一杯背中を押してるぞ、ほら こいつ連れて哲のところへ行ってやれ」

「はい、社長晩飯はあのう…」

「バカ、三人での酒盛りはいつでもいい、ブランデー忘れるなよ」

「ビールとですね」

「おーよ」

「では行きます」

 

2号線は空いていたし環7の流れもよかった。空は青く広がってきた。

 

 

   

【阿弥陀堂は送り盆の荘厳】

 

「待ってたぞ 苅」

「台風一過、晴れましたね。コレここに置きますよ」

「馬鹿 お前は、ったく」

 

絶対に墓石は撮るな 兄イとの約束だ。祥月命日の10日は9名の仲間も一緒だった。

俺が読経して皆は深く首を垂れた。16日 送り盆の今日は誰もいない。それでいい

と兄イは云う。

 

「なぁ苅、お前には苦労かけたな」

「湿っぽいなぁ、言いっこ無しです兄イ、俺は初めて見た兄イの夢で充分です」

「やり遂げろよ苅 お前。楽しみにしてるぞ」

「当然です。そこに相棒がいますから」

「馬鹿 お前はもう…、まッそうだな苅」

「社長言ってたろ、3人での晩飯はいつでもいいって

「はい、兄イが最初にダウンだと」

「アッ この野郎 あれは酔った振りだ。呑みだしたら長いからなぁあの人は」

「兄イ、ひと浴びしますか?」

「いいねぇ苅」

 

水桶二つを用意して墓石を流した。ふう~ッと気持ち良さそうな声が聞こえる。

二人で泳いだプール 二人で入った風呂 二人で飛び込んだ海、懐かしい。

 

「いやぁ~気持ちいい、ありがとよ苅」

「9月、また来ます」

「オウ、待ってるぞ苅

 

【20日18時45分の月

 

【20日19時24分の月