こちらでは桃の花の時期は過ぎた。山梨も早かったようだ。
桃の実が色付くと、それは うら若いうちに何処かの家人に嫁いで行くのだろう。
BC7~6世紀ごろ完成し、孔子(BC551~479)が整理し纏めたと云われている
『詩経』という中国最古の詩集に、こんな詩(うた)がある。
桃と嫁ぐ娘を重ねた詩だ。
『桃夭(とうよう)』
桃の夭夭(ようよう)たる 灼灼(しゃくしゃく)たり其の華
之の子(このこ) 于き帰ぐ(いきとつぐ) 其の室家(しつか)に宜よろしからむ
桃の夭夭たる 蕡(ふん)たる有り其の実
之の子于き帰ぐ 其の家室(かしつ)に宜しからむ
桃の夭夭たる 其の葉蓁蓁(しんしん)たり
之の子于き帰ぐ 其の家人に宜よろしからむ
◎桃夭=嫁ぐ時期
夭夭=若々しい・瑞々しい 灼灼=燃え立つような 于き帰ぐ=嫁に行く 室家・家室・家人=嫁ぎ先の家・家の人
蕡たる有りその実=たわわに有る豊かなその実 其の葉蓁蓁たり=その葉はふさふさ茂っている
【笛吹市「桃源郷春まつり」案内よりお借りしました】
お宅の娘さん・お孫さんが結婚するとしたら、はなむけに祝いの気持ちを込めて、
僕がこの漢詩を贈ってあげよう。
『記紀』にもある様に、古代より神木とされた呪力を持つ桃を詩に詠むことは、
結婚を寿ぎ、お二人の倖せを末永く祈る意を持つ。
2010年『纒向遺跡第168次調査』で、祭祀土坑より3世紀前半の約2800個に及ぶ
大量の桃の種が出土した。調査に参加していた僕は、その数量に驚いたものだ。