枕崎の削り節をふんだんに使ったホッケと野菜サラダ(娘作)

 

夜食、札幌ラーメン醤油味

 

さて、腹ごしらえが終わったところで大湯環状列石へ参りましょう、レッツ・ゴー!

 

大湯環状列石での祭りは、年に複数回行われている蓋然性は極めて高い。
中でも「夏至」が盛大な祖霊祭の開始に深く関わっていたことは、前回下図で示した。


 

下の写真は大湯環状列石出土の五角形の浅鉢だ。縄文後期の大湯式土器で、

この線刻文様は極めて珍しく「花弁状文」と呼ばれている。他にも蟹の爪・蜘蛛・

山菜蕾の線刻文様など、いろんな視点からの見方もある。

 【浅鉢内面底部の線刻文様】

 

【浅鉢外面の線刻文様】

 

先ずこの文様を観察するには、現代と縄文、それぞれが内在する「価値体系=価値意識の総体」が、大きく異なっているということを理解しなければならない。

無論、それに伴う「社会規範(行動・ルール・慣習など)」も違っている。

 

現代人は、産業革命以来の「物質本位社会」の生活を。

縄文人は「自然共存社会」の生活を。それぞれが営んでいる。

換言すれば、現代の物質文化は自然の破壊・改竄・搾取によって得られた

物質根源の生産消費系であり、縄文の物質文化は、自然環境に対応するための

道具による狩猟採取系である。
また精神文化(思想・宗教・哲学・死生観・芸術など)は、現代・縄文ともに共通する

面はあるが、縄文に宗教(宗派・経典・教団など)はなく、

全ての物に霊魂があるという精霊崇拝 (アニミズム)、人間を超越した神秘的な力を

信ずる(マナイズム)、死者の霊魂が生者に災いと幸福をもたらす(死霊崇拝)を主に

する思想・信仰による祭祀・呪術が発達しており、死生観も現代とは異質である。

土偶や配石遺構(含む環状列石)・土器文様は、こうした思想・信仰による精神文化

である。

縄文土器の文様は単なる絵柄ではなく、メッセージ性を記号化した高度な表現であり、物質本位の生活を送る現代人には高度過ぎて理解し難い。

従って、線刻文様のある五角形の浅鉢(上の写真2枚)の解釈は、現代の価値観で

判断するのではなく、縄文の価値観を強く意識して慎重な解析をしなければならない。

 

ややこしいことを述べたが、それを念頭に置いて、文様を主体に撮った下の写真を

今一度よく検討して頂きたい。

 

先ず、内面底部の線刻文様から考えてみよう。どうでしょう、花弁蟹の爪蜘蛛

山菜蕾に視えるかな? ヒントを一つ、大湯環状列石は、墓域・祭祀場・踊り場だ

では、現代に生きている縄文の二枚目の僕が解き…えッ、解りましたか素晴らしい!

その通り。中心の渦文は「頭」だ。頭を共有する4人が、足を( )脚に開いて、

いかり肩で環になって踊っている。中心の「頭」に該当するのは、環状列石の内帯

中央にある複数の中央組石(仮称)で、それを共有する4人は濃い血縁者の女性

極端に云えば、この一部の人達だけが内帯の内側で踊ることができるのだろう。

 

下の写真で角度を変えて観察してみよう。線刻文下部の人物は歩く動きの姿勢だ。

この人はリーダーだろうか。身体が「頭」と繋がっている

現代の価値観で判断するのではなく、縄文の価値観を強く意識して慎重な解析

をしなければならない。と述べたことが、この線刻文様の解釈に役立ったと思う。

そう「死者の日の祭り」つまり、祖霊祭の踊りの具象線刻文様なのだ。

 

では、五角形の浅鉢の外面の線刻を観察してみよう。

線刻文様を主体に撮った写真である。ガラスケースから出せなかったので、支え棒が

邪魔してちょっと視難いが、この線刻の足も同じ様に( )だが「頭」が四角だ。何故?

男性だからだ。右上の線刻文に男性器が線刻されている。〇は女性、◇は男性、

線刻文が使い分けられている。

縄文の価値観とは違うが、こうした男女の区別は弥生時代の銅鐸にもある。

男性が中心になって踊っている空間は、環状列石の内帯・外帯間の広い空間である。

内帯・外帯は二本対の沈線で現わされている。このような線刻文の土器は

他の遺跡にはない。

おそらく祭祀の始りに、この浅鉢に何らかの捧げものを盛って、

神聖な儀礼が行われ、その時使われた「聖なる器」の一つと言ってよい。

 

踊り方の方法は難しいが、格好の一部だけは人体線刻文から予測できそうで、

下の写真の超大型中空土偶のスタイルと一歩踏み出した足が参考になる。

こうした動きのある土偶も他に類例がない。

他にも下の写真のような特殊な土器があり、模擬狩猟・模擬収穫の祭りで使用された

と考えられる石製品もある。

    

 

大湯環状列石についてはまだまだあるが、この辺で一度締め括っておきたい。

                      【2022/10/28 検討委員会 苅谷発表資料参考】