霧雨の中 深夜帰宅して一声。
「ただいま~、帰ったぞー」
家内に声をかけて線香を。ザックの中の洗い物を洗濯機に放り込む。
パソコンのスイッチを入れて台所に立つ。狭い一間 りんごジュースと冷たい氷水を
膳に供える。
今日は満月だけどこの天気じゃ無理だ。と思ったがヒョッとしたら、と…
ボンヤリと白く浮かぶ満月 日付が変わって15日01時12分だった。
家内の写真を抱いてもう一度 手を合わせた。ありがとうございます。
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〚文・房・具〛
いま僕の『房』にある土器は10種程。縄文の深鉢、弥生土器・古墳の壺・高坏・
器台、割れて接合したものもある。といっても、すべて僕の作ったものだ。
この点を強調しておかないと、
「アイツは考古やっとるから発掘現場から…」
なんて言われかねない。
ともあれ、粘土紐を輪積みして出来上がったばかりの縄文土器の形は、
変形した土管か植木鉢のようなもので何ら味気がない。
これに口縁部突起・縄文・粘土紐・沈線・半裁竹管文・刻み目などを
取り付けていくと表面が文様で飾られ、『躍動する生命力が湧き興ってってくる』
から不思議なものだ。
丁度、影絵が鮮やかな着物を着た立体的な人形に変身するのと同じだ。
【縄文中期 藤内1式深鉢(高さ38cm・口縁部径25cm)】
【完成だがチョッと雑かな】
このとき使うのが竹箆、竹串、あさりの殻、多種のより糸(縄文の施文具)、箸、
櫛、半裁竹管、叩き板などだ。つまり僕の『文具』なのだ。
「そんなもの文具じゃないわい」
なんておっしゃったら大間違い。まあ、チョイと耳を傾けてくださいますかな。
そもそも『文』とは,綺麗な模様・飾るの意味で、縄文の模様の一コマから描かれた
象形文字なのである。天空を飾る星や月の模様から「天文」という言葉も創られている。そして『具』とは、備える・備わるの意味を持ち、仕事のために揃えておく用具
のことなのである。
つまり「文具」とは、「綺麗な模様で飾るために揃えておく用具」というのが原義かな。ならば、土器の表面を装飾するために僕が使う様々なものは、
間違いなく僕の「文具」ではないか。
”ウ~ン、なるほど”と思われた方は、文具のありがたさを良く知っている方だ。
ついでに,『房』とは、本来,母屋の両側に張り出した小部屋とか、
全体の中が小さい部分に分かれたもの(例えば蜂房・蓮房など)を言ったらしいが、
今は広い意味で部屋のことを指している。『文』と『房』と『具』=『文房具』。
さて、土器製作用の文具を作るための文具を文房具屋さんに買いに行こう。
お二人の誕生日に寄せて〚文と房と具〛2010/12・28記す 苅谷俊介