お前と暮らした51年と4ヶ月と6日。
今日は52年目の結婚記念日だ。二人だけで祝おう。
あの頃の住処は、錆びた鉄の階段、6畳一間の安アパート、
折りたたみ式の小さな卓袱台、必ずあった朝のサラダ。
余裕のある時、俺のために作ってくれた牛肉とキャベツの煮込み、
お前のように上手くはいかないが夕食に作ってみたよ。
肉は冷凍しておいたカルビだけど、いいだろ?
朝昼食。あの頃は麦御飯だったよな。トマトも無かった。
おやつはイチゴに蜂蜜をたっぷりかけたよ。
共働きだったからおやつなんて無かった。
お前は結婚前から紅茶が好きだったから、
山梨の美っちゃんに戴いたアッサムを点てたぞ、いい香りだ。
おやつはまだあるぞ。これも美っちゃんからの結婚記念祝いだ。
マドレーヌ、フィナンシェ、ガレットブルトンヌ、みんな好きだよなあ。
苺のフロランタンは深夜かな?
夕食はあの頃を思い出しながら作ったんだ…ちょっと泣けた。
季節の物だから、やはりサラダにトマトは無かったよな。
洗い物が終わったら、後はゆっくり昔話をしながら楽しく過ごそう。
お前がよく作ってくれてたスルメの醤油漬けを肴に、
赤ワインで乾杯だ。大丈夫、一杯だけだし大事な記念日だぞ。
断酒解禁は、お前の誕生日と結婚記念日=俺の誕生日だけ。
〝えッ、スルメか? 9日漬けてたから軟らかくなってると思うよ〟
〝乾杯! 一心同体、 どこまでも一緒に歩こう!〟
人生は〝白駒(はっく)の隙(げき)を過ぐるが如し〟
と云うけど本当だね。ここまであっという間に過ぎ去った。
老子が、無為自然の道を孔子に説いている時に使ったと聴くが、
人生をズバリ言い表してるよね。今になってよーく解るよ。
さあ、夜は長いぞ、グラス重ねて語り明かそう。
あきさん有り難う!家内、とっても喜んでる。