16・17日の夕食。

       

 

       

 

18日

行こうな山梨へ。

家内を助手席に乗せ、道中パンを食べながら車を走らせた。

一宮御坂ICから中央道に入ったが、途中道路工事のため一車線通行で大渋滞。約束の13時には間に合いそうにない。

ナビで調べると、更にもう一ケ所韮崎付近から先に渋滞がある。

送れることを連絡して、韮崎で下り一般道を利用した。

 

おかげて、薄曇りだが富士山を撮ることができた。

更に冬枯れ迫る紅葉の道。

そして霞む八ヶ岳連峰。いい旅になったなあ。もうじき会えるぞ。

 

4キロ程手前で電話をし、ナビに従ってゆっくり進んだ。

自宅前の道路に彼が立っていた?!馬鹿な、有ろう筈が無い!

コロナ禍の中、6月に脳梗塞で倒れ緊急入院。

全身麻痺・記憶障害・言語障害等々、リハビリしても言語・記憶・感覚の回復は難しいとされていた。

 

リハビリに励む中、僕は何度かメールを送った。

「俺の気力を総て送るから頑張れ!克っちゃんなら立ち直る」

コロナ禍ゆえ、奥さんの美っちゃんは彼に会えない。

看護士さんに僕のメールを読んでもらうだけ…

反応はあまりなかったが、ある時、メールに涙を浮かべたと聴く。

彼は退院して、リハビリに通い、何事にも真剣に取り組んだ。

 

8月のメールに、感受性が戻ってきたとあった。

「焦らず、ゆっくり、笑いを忘れず、美っちゃんの言うことを聴けよ

 世界には文字の読めない人が何億もいるんだよ。気長に、

 笑いを忘れずにな。そのうち会いに行くからな」

奥さんの美っちゃんのメールにそんなことを送ったことがある。

 

その彼が笑いながら手を振るなんて想像もしていなかった…

車を自宅の車庫まで誘導してくれた。車を降りて握手を求めた。

「克ちゃん!」

彼は僕の手を握り声を出して泣いた。彼を力いっぱい抱きしめながら涙が溢れた。

「普通じゃないか!戻ってるよ克っちゃん、よく頑張ったなあ!

心底嬉しかった。

20余年の歳月、お互い変わったのは髪の白さだけだった。

 

仏壇傍に家内の写真が飾られ、過去帳には家内の戒名が記されていた。月命日には手を合わせて下さっているとのこと。

何とも有難い、アイツは幸せ者。

家内を椅子に座らせ、美っちゃんの手料理に舌鼓を打ちながら、昔話に花が咲いた。記憶に障害が残っているとは思えない。

月が奇麗な筈だと克っちゃんが言った。

奇麗だ。美しい宵の満月だ!すっかり暗くなるまで魅了された。

   

     

           

 

   

 

明日19日は満月で月蝕。宵の日の今、

お前は、克っちゃん・美っちゃん夫婦に囲まれてここにいる。

愉しい楽しい時間を過ごした。二人に感謝しよう。

でも本当に克っちゃん元気になって嬉しいよ。

 

お前の好物を沢山お土産に戴いて帰路についた。

我が家で食べる夜食は、美っちゃんの手料理だ。

ほら、大隅ごぼうの新しい食べ方だ。美味しいだろ。

有難う、美っちゃん。一緒に頑張ろうぜ克ちゃん。

ことわりの連絡なしでは、やはりお二人の写真は載せられない。