早起きをした。今日は敬愛する人の一周忌だ。
家内に朝食を供えた。
じゃッ、行ってくる。うん?ハッハ、お前は素顔がいい。
兄イは知ってるよ。
空は青空だ。あの日のままの雲が流れる。
「来たか、晴れ男の苅」
「はい。それは兄イも同じです。暑いですねえ
今34度、午後はもう3~4度上がりそうですよ」
「そうだなあ」
「兄イ、もう一周忌ですよ。あっという間に一年経ったんですね」
「お前も律義だなァ、彼岸。盆・誕生日・月命日と・・・」
「言いっこなし!」
「はい、はい」
「兄イ、前回の晩飯すみませんでした。肉屋が臨時休業で・・・」
「美味しく戴きました。苅谷さん」
「何云ってるんですか! 顔に書いてますよウソって」
「バレた?」
「半世紀も一緒だったんですよ、お見通しです」
「怒るなよ、苅」
「今日の晩飯は間違いなしです。ミディアムレア、旨いですよ」
「そうか、楽しみにしてるぞ」
「実はこれから10人程焼香に来ますよ」
「オオッ?!」
「石原プロどん底時代、頑張ったみんなと、応援してくれた奴ら
です。」
「そうか・・・、来てくれるのか」
みんなやって来た。生花、線香、水をかけて墓掃除。そして一人一人が合掌した。なんて奴らだ。兄イ、きっと目が潤んでるぞ。
どういう訳か僕がお経を唱える羽目になった。そしてみんなに御礼の挨拶まで。何か仕組まれた様な・・・。
そんな間柄じゃないだろ。まッ、いいか、けじめはけじめだ。
こんなご時世、三々五々別れることにした。
家に着いた。早速ステーキの支度だ。
これなら兄イも大喜びの筈だ。
兄イは、好きな塩コショウで。
家内には小さく切ってウェルダムにステーキのたれを。
「どうですか?」
「最高×最高×最高だ!!!、旨いぞ、苅!」
よかった面目が立った。優しく微笑みながら箸をつける家内。
いい一周忌だった。