お前が逝って明日で丁度8ケ月、月命日だ。今夜また一緒に眺められる!

 

午後7時前、雲の影から月の光は見えるが姿が見えない。

「そんなことはない、お前はここにいて俺の腕に抱かれて微笑んでいるのに。

あっ、顔を出した! ごらん!!  

もう少しで奇麗に見えるぞ。ほら、ほら、ほら、雲の流れが速くなった。

寒くて手振れが激しくて輪郭がぼけてしまうが、まあ、こんなものだろう。

「さあ、柏手を打って手を合わせよう」 明日の夜、お前が行くところだ。

アポロで人間は月に降り立った。お前は夜空をかけて一瞬のうちに月旅行に行く。

昔、アイヌのおばあさんがこう言ったそうだ。

「ワシはアポロより早く月に行ける」と、

自分にはその言葉の意味がよくわかる。それは月を見た瞬間、つまり「意識」が月に到達しているということだ。実に素晴らしいじゃないか。人間は心で月を見てきた。

さあ今夜もゆっくり語り明かそう。

木鶏舎の磯辺さんが贈ってくれたオレンジピールを摘まみ、紅茶を飲みながら。

箸立てのゴリラ(俺)に、お前が「チュッ」。有難う。旅立ちは明日の夜。今度の十三夜に帰って来るまで一人ぼっちだけど、笑顔で迎えられるよう待ってるよ。