もう晩秋だ。コスモスの見ごろは過ぎた。

 コスモス街道を探して、あいつとは数えきれないほど旅をした。

 「奇麗ねえ、素敵ねえ、もう少しゆっくり走って」

 僕はあいつの嬉しそうな顔を見ながらハンドルを握るのが常だった。

 そんなあいつは、もういない。

 「大分のお墓にあなたと一緒に入るからね、どちらが先に逝ってもよ」

 「俺の家系は早死にの方だから、お前は後から来てくれよ」

 コスモスの続く道を、二人で笑いながら走ったことを思い出す。

 コロナ禍の中、そんなあいつをまだ納骨してやれないでいる。僕もコスモスは好きだが、どことなく寂し気な花だ。あいつが好きだった

もうひとつの花、矢車草の方がいい。

 我が家の近くの公園で撮ったコスモスとあいつの最後の写真。この頃から悪性リンパ腫はあいつの体を蝕み始めていた。互いにもっと早く気づいていれば・・・

 【故郷の 初黄葉を手折りもち 今日そ我が来し見ぬ人のため万葉歌