桃の話 | サト_fleetの港

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ブログで取り上げる話題はノンセクションです。
広く浅く、幅広いジャンルから、その時々に感じたことを “おとなの絵日記” のように綴っていきます。


桃が旬の時期になった。
桃は味ももちろん良いのだが、香りがとても良い。
桃の贈答品のパッケージを開けた時に広がるあの甘い香りに、
なんとも言えない心地よさを感じる。
アロマ効果があるのかもしれない。



桃の原産地は中国大陸の西域と呼ばれた地域。
日本では約6000年前の遺跡から桃の核 (種子のまわりの硬い皮の部分) が出土しており、
少なくとも縄文時代の人々は、桃を食べていたと考えられている。
桃のヨーロッパへの伝来が、シルクロードを通ってペルシア (現イラン) 経由で紀元前後頃 (約2000年前) だったことからみて、
日本列島には非常に古い時代から伝わっていたことがわかる。
しかし、古代に食べていた桃は、実も小さく硬い種類で、
江戸時代になってから、改良種の栽培が進んで現在のものに近い白桃が全国に広まった。

中国では古来、桃は邪気を払い、神仙に力を与える不老長寿の果実として尊ばれてきた。
古代中国東晋 (317 - 420年) の陶淵明が創作した『桃花源記』という物語がある。
桃の花が咲き乱れる林に迷い込んだ漁師が、俗界から隔絶された平和で豊かな村にたどり着き饗されるが、
帰ってから再び訪れようとしても見つけられなかったという話。

“桃源郷” の語源になった。


※桃源郷の名を付けた山梨県の桃の名所
山梨県は桃の収穫量日本一


このように、桃には神秘的な力が宿るイメージがある。
これは日本にも伝わっていたようで、
『古事記』(712年編纂) には、伊邪那岐命 (イザナギノミコト) が黄泉国から脱出する際、
逃がすまいと迫る伊邪那美命 (イザナミノミコト) の追っ手に、桃の実を投げつけて振り切った話が出てくる。
(日本書紀にもほぼ同様の記述あり)

伊邪那岐命は、その時の功績から桃の実に意富加牟豆美命 (オオカムヅミノミコト) の神名を授けた。

つまり、日本神話では桃は神様なのである。

実際、全国には意富加牟豆美命を祀る神社が複数ある。


このことから考えると、おとぎ話の桃太郎もちょっと見方が変わってくる。
現在よく知られている物語では、川に洗濯に行ったお婆さんが、上流から “ドンブラコ、ドンブラコ” と流れてきた大きな桃を持ち帰ったところ、
中から元気な赤ちゃんが出てきて桃太郎になり、成長して鬼退治をする。
だがこれは、江戸時代後期頃からこの形になったもので、
それ以前は、桃を食べたお爺さんとお婆さんが若返ってハッスルした結果、
お婆さんが妊娠して桃太郎を出産するという回春絶倫ストーリーだった。
(これだと、R指定にしないといけない) 

どちらにせよ、
桃の不思議な力で桃太郎が生まれるわけだが、
桃自体が神様なわけだから、桃太郎はその申し子=神様の化身ということになるのではないか。

※桃太郎主従 (月岡芳年 画)


桃太郎はイヌ、サル、キジを従え、鬼ヶ島の鬼たちを征伐して、その財宝 (これも鬼が略奪したもの) を持ち帰る。
お爺さんお婆さんは大喜び、めでたしめでたし。
で物語は終わるが、
屈強な鬼たちを初陣で倒したのだから、桃太郎の神がかった強さがうかがえるというもの。
やはり桃太郎は常人ではない、“神の子” なのだ。

しかし、桃太郎を全面的にサポートしたというのに、
イヌ、サル、キジら傭兵たちのギャラが きび団子一つとは、こき使い過ぎな気もする。
現代だったら、間違いなくブラック認定されてしまうだろう。
せめて、
桃の実でもあげてほしかった。

私も最近は、桃のギフトをもらうこともないので、
自分で買って食べるとするか。
みょうに元気になったりして・・・

それはないか。