女優でござる ③ ~深田恭子さんのこと~ | サト_fleetの港

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広く浅く、幅広いジャンルから、その時々に感じたことを “おとなの絵日記” のように綴っていきます。


深田恭子さんが、『うる星やつら』の ラムちゃんに扮して出演するCMが話題になっている。
アニメの『うる星やつら』をリアルタイムで観ていた私 (歳バレる?) としては興味津々だったが、
この某公共企業のCMは 残念ながら私の住む地域では流れない。

そこで、
ネットで視聴させていただいたのだが、
深田さんは、ご自身の年齢の半分ほどの年齢のキャラクターを演じているにも関わらず、あまり違和感がない。

実に、ナイスキャスティングだと思う。

※深田さんの扮するラムちゃん (右) と
寺田心くんのテンちゃん (左)。


CM以外でも、深田さんは ドラマや映画で、アニメやマンガが原作の作品に いくつも出演してきた。
深田さんがアニメのキャラクターを演じたもので最も有名な作品といえば、実写映画『ヤッターマン』(2009年) だろう。
深田さんは、“ドロンボー” 一味の首領 ドロンジョの役だった。

原作のアニメ放送時には、観ている子供たちのお父さんにも人気があったというドロンジョを演じるにあたり、
原作のイメージを壊さないよう、深田さんは、かなり研究したようで、
体を絞ったり、声までアニメのドロンジョ (声優 小原乃梨子さん) に似せていた。

正直なところ、映画の内容自体は、大人の私には少々物足りなかったが (失礼)、
深田さんのドロンジョを見るだけでも、この映画を観る価値があると思った。

※ドロンジョ (深田恭子さん:右) と
ドロンボー一味。
(映画『ヤッターマン』より)


ちなみに、
先日 放送が始まった深田さん主演のドラマ『ルパンの娘』(フジテレビ系) の “泥棒スーツ” のデザインを手掛けたのは、
ドロンジョの衣装を担当したのと同じデザイナーの人だそうだ。注釈参照

その『ルパンの娘』の番宣のため、ある情報番組に出演した深田さんは、この衣装を着ることについて、
“(スタジオでは何ともないが) 屋外ロケで着た時は恥ずかしかった”
とおっしゃっていた。

※泥棒スーツに身を包んだ深田さん。
(ドラマ『ルパンの娘』より)


しかし、
こういう現実離れした ド派手な衣装を身につけた役も、深田さんが演じると、ちゃんと血が通って生命が吹き込まれる。
決して、コスプレ大会のようになってしまわない。

これまで、数多くの役をこなしてきた深田さんは、もはや、ベテラン女優さんと言ってよいと思うが、
私は、アニメやマンガが原作の映像作品での深田さんの演技に、彼女の真骨頂を見る思いがする。

アニメやマンガの実写化となると、どうしても、原作ファンが持つ登場人物のイメージと演じる役者さんのギャップが批判されたりするが、
深田さんの場合、原作に似ているかどうかというレベルの問題ではなく、
原作のキャラクターに同化して、さらに凌駕してしまっているように思う。
深田さんが演じることで、そのキャラクターが、よりパワーアップされ、魅力が増すように思えるのだ。

深田さんは、マンガ原作特有の登場人物のデフォルメされた演技も、迷いなくふっ切れたように演じる。
それが、ちっともクサくない。
これは、深田さんの持つ天性のキャラクターからくるものではないだろうか。

※『ダメな私に恋してください』
(2016年 TBS系)

※『初めて恋をした日に読む話』
(2019年 TBS系)。
これらも、少女マンガ が原作のラブ
コメディー。


私は以前、あるマンガが原作のドラマにエキストラで参加した際、深田さんにお目にかかったことがある。
そのリハーサルの時のこと、
大勢のエキストラが配置についているロケ現場に、深田さんがドラマの衣装に着替える前の服装 (ダウンコートか何かを羽織っていた) で、その日初めて登場したのだが、
一瞬にして現場が、深田さんのオーラで包まれた。

もう、絶対の存在感というか、“女優感” が発散されているのだ。
こういうオーラは、意図して備わるものではなく、持って生まれた “器” のようなものだと思う。
深田さんには、間違いなく それがある。


比較的コミカルな アニメやマンガの実写化作品のことばかり書いてしまったが、
深田さんの領域はそればかりではない。
シリアスな役も数多く演じてきた。
その中で、とくに印象的だったのが、
大河ドラマ『天地人』(2009年) と『平清盛』(2012年) である。

『天地人』では、豊臣秀吉の側室 淀殿を、
『平清盛』では、清盛の妻 (後妻) 平時子を演じた深田さん。
ともに、主家の栄華と没落を目の当たりにする歴史上の人物の役だった。

中でも淀殿は、これまで多くの女優さんが演じて、イメージが固まりがちな役だったが、
その淀殿を深田さんは奔放に演じ、
ある意味、現代の魔性の女にも通じる斬新なイメージの淀殿像を表現していた。

※深田さん演じるコケティッシュな淀殿。
(大河ドラマ『天地人』より)


『平清盛』では、深田さんは 平時子を演じることが決まると、
役作りのヒントを求める意味も込めて、清盛ゆかりの厳島神社に参詣し、
無事、時子を演じることができるよう祈ったという。

あるNHKのトーク番組に出演した際、深田さんはこんなことを語っていた。
『平清盛』で、時子になりきっていた深田さんは、
ドラマの撮影が終わってからもしばらくは、
“平家” と聞くだけで、壇之浦での平家一門の滅亡のシーンが頭をよぎり、悲しくてどうしようもなかったという。

それほどまでに、役を自分に同化させていたのだ。

※安徳帝とともに壇之浦で最期を迎える時子。
(大河ドラマ『平清盛』より)


このように、時代物もいける深田さん。
幕末の蝦夷地のアイヌ人女性を演じた『永遠のニパ』(2019年 NHK) も素晴らしかった。

ただ、私個人としては、
深田さん演じるピリカメノコ (アイヌ語で美人) の運命が悲しすぎて、ちょっと受け入れ難かった。
(偉大な脚本家の大石静先生に文句を言うつもりはないが…)

※深田さんのピリカメノコ姿。
(『永遠のニパ』より)


さて、深田さんのプライベートに話は移るが、
携帯電話会社のCMで三姉妹を演じている多部未華子さんと永野芽郁さんの二人とは、
時おり集まってガールズトークに花を咲かせる仲よしのようだ。

2年半CMで共演するうち、何でも話せる本当の姉妹のようになったのだという。

※UQのCMの “三姉妹”
深田さん (中央) 、多部未華子さん
 (右)、永野芽郁さん (左) 。

※プライベートでも仲よし “三姉妹”。
(5月30日 深田恭子さん Instagramより)


女優という仕事には、我々素人が計り知れない苦労をともなうと思うが、
仕事を離れた深田さんには、妹のように可愛がっている若手女優さんたちがいる。

そんな “妹” たちと会うことが、
深田さんのストレス解消法の一つになっているのかもしれない。



【注釈】
柘植伊佐夫氏 (ビューティーディレクター、人物デザイナー)。
大河ドラマ『龍馬伝』『平清盛』をはじめ、
映画『累‐かさね‐』『翔んで埼玉』や、
舞台『PLUTO』など、多くの作品の人物デザイン、コスチュームデザインを担当した。