月がもう空高く昇っている。
この時期にしてはめずらしく、薄い雲にぼんやりと彩られたその光はいつもにも増して真珠のような色を投げる。
まるで真珠貝のなか、できかけの真珠みたいに少し縁がかけた曖昧な月。
暗い空に浮かぶ大きな真珠貝はひとには手にいれることのできない宝石で、みつめていたってどうにもならないというのに。その美しさに目を逸らすことさえできずじっと佇む。
けれど、手にいれられないことを嘆くそんな気持ちには不思議とならなくて、なんだか踊り出したいとすら彼は思うのだった。
さあ、もうそろそろ行かなくては。
黒い闇のようなマント、きらりと光るヒスイみたいな石がはまった仮面とか、赤いドレスとか、そんな様々な色や形の洪水のなかで悲鳴をあげながら楽しげな笑い声を響かせきっと仲間たちは彼がやって来るのを待ちかねている。
美しい真珠はひっそりと彼の心の中だけに隠して、つかの間の馬鹿騒ぎに興じる。
朝まで騒いで悪霊をやり過ごしたら、もうフルムーンの夜がすぐそこまで迫っているから
その夜はきっとずっと探していたものに会えるのだろうと思えた。
おかしな仮装のマスクなんて、どこかに忘れて。
BY Blue