ソロモンの偽証(前篇・事件) | 想像と好奇心でできている

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野いちごでは、 『テレビの感想文』ときどき更新。

この映画、名作なんだろうな、とCMを見ていて思っていたけど、見ようかどうか迷っていた。

いじめ、自殺、教室……、おそらく自分のトラウマスイッチを押されるようなものがいろいろと出るてくることがわかってるから。

 

良い映画はみたいけど、地雷を推されるようなことはちょっと、とほんの少しの不安も抱えつつ視聴。

結果、まあ、少し押されたようなこともありましたが、見て良かった。

 

印象に残ったのは、主人公の藤野涼子。

北尾先生。残り1年で、59歳で辞表を提出。かっこいい先生だな。

ちょっとふっくらしていて、「ブタ」と悪口を言わてる浅井松子の父親。実家はお米屋さん。

 

涼子だけじゃなく、生徒と演じた少年少女たちのまっすぐな眼。

中2じゃないと見られない表情っていうのかな。

 

 

自殺か他殺かわからないけど、自殺してもおかしくなかった少年が一人亡くなっていた、真っ白な雪の校庭。彼の遺体は、雪の中から発見される。

最初に見つけたのは、涼子。

 

これが一人目の、亡くなった命。

 

そこから、気がつくと自分に重ね合わせつつ引きこまれて見てしまう。

あれは、自殺じゃなくて他殺だと告発状を書いた女子と、その友達。二人とも、男子三人(彼らが、女の子相手に平気で暴力ふるってるシーンは、正直、きつかった……)からひどいいじめを受けていた。

 

涼子、そして、亡くなってしまった柏木くんも、いじめがあったことを知っていたけど、見て見ぬふりをしていた。

 

ドランクドラゴン塚地さんの演じた、お父さん。

すっごく幸せそうな、夕飯の風景。

それが数日後、なくなってしまう。あまりにも無情に。

 

車にはねられ、意識がないと教室に広まる噂。すると、「いじめたあいつが殺したんじゃないか」と、疑われていた少年が、噂になったり。

ビリヤードの球がぶつかって、思いもかけない方向に動いていくように、人の気持ちがそれぞれ動いていく。

 

映画の残り30分くらいから、「自分たちで裁判を」と、生徒たちは裁判を始める。

 

あの校庭で亡くなった彼は、自殺だったのか。それとも、他殺か。

ほかにも、真実が表に出ることで、誰かが辛くなったり、泣いたりするんだろうけど。

 

あと気になったのは、「いじめっ子にも、実はいじめをしてしまうような、良くない家庭環境がある」とか、

「メガネをかけた、自分の進路第一に考えていた優等生くん」とか、あ、学校の教室を舞台にした漫画に出てきそうなキャラクターが出てきてるところ。

 

裁判をやろう! と決めて、一人ずつ協力者が加わり、「裁判なんてさせない」「迷惑だ」などと、大人のきれい事を武器に、かなり威圧的に裁判をやめさせようとする女性教師とか、

最初から、職員室でも生徒の前でも、なんか嫌な感じの男性教師(木下ほうかさんの演技が、さすがの一言)とか。

 

あとは、「お父さんが酒乱でお母さんを殺した」という、かなりハードな過去を持っている男子。

彼は、いじめっ子を弁護する立場だけど、そんな過去があるからこそできる、と言ってますが、なんだかその過去が自分に向かって刃になって傷つけてしまいそうな側面もあるし。

 

テレビカメラで関係者をインタビュー。ニュース映像の、口もとから下を写す、声が変わってるあの感じ。

実際に見たことがある光景。妙にリアル。

さらに、「ちょっとかかわって、自分の思う通りにしてやれ」っていう、悪意。それがあるときの、嫌ーな感じのする薄笑いの表情が、リアルというか。怖い。

 

ナンバーワンで怖かったシーン。朝、ドアの前で夫婦ケンカ。と、夫は言ってるけど、いや、DVか。

夫に殴られたあと、おでこから血を流した女性が、くまがくっきり浮かんだ目でこっちを見上げたあと、這うようににして玄関に戻り、ドアが閉まっていくシーン。

精神的にぶっ壊れた女性の、眼。ホラーだ。

 

裁判での役割を決めたあと、みんなで写真撮ってるところ。

人が亡くなってるのに中学生のノリ。ちょっと楽しそうじゃないか。笑 でもこれを「不謹慎だ」なんていうのはしなくてもいいこと。

だって、自分も含めてみんな中学生だもの。そういうのが、「それでいいよね」って空気で済まされる。

 

良い映画見たな、って思えた。

 

二人目の女の子が亡くなったあと、お父さんとお母さんが「何やっても許されるんですか!」

って言ってるシーンは、ちょっとだけ泣いてしまった。

なにかに共感してしまったんだと思う。すーっと涙が出てきた。

 

 

昨日、10代のときに読んでいた漫画読んだりして、ちょっと自分の精神状態が過去に戻っていたような感じだったのかな?

見終ったあとに、いろいろ考えさせられてしまった。

幸い、トラウマスイッチはほとんど押されることはなく。地雷を踏んだような精神的苦痛も感じることもなく。心があるから、泣いたり痛くなったり、いっしょに笑ったりするんだけどね、って、当たり前のことですが。

 

私はもう10代じゃないけど、いま10代の皆さん、14歳の人、幸せですか?

明日死んじゃおうとか、考えてないですかね? 

いきなりなにを話しかけてるんだ、気持ち悪いなんて思ってるかもしれないけど。

 

あんな風に、面倒くさがらずに、面と向かって、他人とかかわろうって気持ちが少しでもあったら、

いじめなんてきっとなくなる……。って思ったのは、理想に過ぎないですかね?

 

誰かと比べなくてもいい。これを読んでいるあなたが、最高に幸せだったら、それでいいんですけどね。