ストーリーの重要だと思われるシーンについて書いています。
ご了承ください。
ピアニストになりたいデビット。
それを良く思っていない父親。人生は、他人に勝つこと。いつも勝たなければならない。と息子に教えこむ。
家族は、厳格な父親が主人公の人格形成に大きな影響を良くも悪くも与えている。
主人公だけじゃなく、妹や母親も家に父親がいるだけでみんなが緊張しているような、あまり心地よくなさそうな家庭の雰囲気。
こういう父親のもとにいると息苦しい。
見てるこっちも息苦しくなりそう。そりゃあ、離れたくなるよね。
ピアの先生に才能を見出され、近所に住む老婆の、夢に向かって背中を押すようなサポートもあり、ピアノの勉強をするため、家出同然で家を出て、イギリスへ留学。
最後まで反対のままだった父親は、息子との縁を切るかのように、手紙が届いても返事を出さない。
ここらへんの、うまくわかりあえない父と息子の描写が、あとあとになって伏線として出てくる。
コンクールで選んだ曲は、父親が好きだった、難しい曲でもある「ラフマニノフ」。
身を削るような猛練習をしたものの、コンクールで、残念ながら優勝できなかった。(優勝候補が2人だけ残って、目の前にいた人に勝っていれば優勝、みたいな状況)
その瞬間、崩れ落ちていくように、精神的な支えがなくなったのか、主人公は心を壊してしまう。
挫折のあとは、奇行としか言えない行動が出始め、とうとう家族に医療施設(あまりはっきりと言ってないけど、精神的な病気になってしまってます、とそれとなくわかる)に入れられる。
だいぶ前にCM(レンタルしたDVDの、本編の前に流れる)で見た、男性が青空の下で光に照らされながらトランポリンで飛び跳ねまくってるシーン。
あれは、ストーリー後半の、はたから見るとかなり「精神的に大丈夫?」な状態でやってたことだったんだなぁとわかる。
「ずーっと飛び続けてます」って、ほかの人が医療施設のスタッフらしきに言ってる最中も、楽しそうにジャンプし続けてるデビット。そういう、人の目線すら気にならなくなっちゃってる、芸術系の人が頑張った末にたどりついたのがこれっていう、悲劇みたいな。
でも全然暗くないし、悲しい雰囲気がない。光のせいもあるんだろうけど。トランポリン、楽しそうだし。笑
前半は父親との確執が中心、後半は精神に異常をきたして、その後自分らしく生きていくようになるまで。
自分も子供の頃ピアノ弾いてたし、だからいまでも、すごく下手だと思うけどまだ引ける……、かな。
そのせいか、ピアノの猛練習する、そして本番の、ジェフリー・ラッシュの熱演は引きこまれた。
なにかを一生懸命やり続ける人生は、破たんが待ち受けていたとしても、その後の人生に影響が残り続けるような大きな挫折があったとしても、別に、いいじゃないか。本人、幸せなんだから。
と、主張してるようには思えないので、あくまで私がそんな風に感じとったにすぎないんですが。
ずっとぎくしゃくし続けていたお父さんが、実はひそかにスクラップブックで息子の新聞記事を集めていた、っていうのがね。胸にぐっとくるものがありました。
うまくしゃべれない(言葉を繰り返したり、怒鳴ったり、急に目についたものが原因で話題が変わったりする)けど、ピアノを弾くことによって、他人とコミュニケーションがとれる。それも、一人でたくさんの人を相手に、いっぺんに。
私、父と子が出てくる設定に弱いらしい。
父親と息子、父親と娘、最初はすれ違っててうまくいかないけど、いろいろあって、最後は和解していくっていうストーリー展開とか。
人生の勝負時で「ラフマニノフ」選んだのは、お父さんへの愛情表現でもあったんだろうね。
でも、挫折して、さらに心も病んでしまった(本人は病気の自覚、まったくないようですが。それは幸か不幸か)けど。
父親のお墓参りのあと、その後も主人公の人生が続いていくと暗示させて終わるのも良かった。
この作品を検索してみたら、主人公の天才ピアニスト、デイビット・ヘルフゴットさんは実在していて、その半生をモデルにしている、と。いまもご存命。知らなかった。