公開当時、沢尻エリカが過激なシーンを演じた、ヌードを見せた、と話題になったなぁ。
岡崎京子の漫画『ヘルタースケルター』でも、性的なシーンとか、血が流れたり、自分でくりぬいた眼球が残されていたりグロいシーンがあるし、実写化するならそういう部分はどうするのかなと思った。
うーん、悪くなかったけど、良かった、とも言いずらい。
ひとつひとつのエピソードにかけられる時間が長いような気がした。
でも漫画を実写化してて、変に監督のオリジナリティが入ってないのが良かった。
実写化されると、漫画の良い部分がなくなってることってよくある。それはそんなになかった。
ただ、クラシックが流れて、長い気がするのが。少し疲れる。
この監督さんは、『さくらん』のときもそうだったけど、色鮮やか。
りりこをとりまく、雑貨とか、衣装とか、モデルとして撮影してるときの背景や小道具がカラフルで、派手で、どぎついというか、毒々しい。人工的で、作り物の感じがする色にあふれている。
最初に出てくる、りりこが上半身裸で立つ、その後ろの背景が、マーブルの赤と白。
そのあと、血を連想させる、白い床にぴしゃっとたたきつけられる赤い液体。
りりこの部屋の壁にある、大きな赤い唇。
あちこちで、赤が印象的に使われてる。
DVDのジャケットで、りりこが着てる素敵なドレスも赤。薔薇みたいに真っ赤。
赤って、女性とか血のメタファーなのかな。
そのせいか、なんとなく、綺麗なんだけど怖い。女性の怖さを感じる。
実際、美人と美人じゃない人だったら、美人のほうが上の扱いをされるんですよね。
「人は見た目じゃない、中身」だっていうけど、外見で判断してしまうことはよくある。
だんだんとりりこの体も心も崩壊していくと、幻覚を見るようになる。テレビ番組の収録中、他の人には見えてない蝶が見えて手を振り回して追いはらったり、セットの人形の眼がぐりぐり動きだしたり、怖い。
りりこって、原作の漫画を読んで思ったけど、整形手術して、美人になったのにもかかわらず、好きな人と結婚できなかったんですよね。失恋した。その彼氏も、けっこう最低な奴だったし。
美人だったら幸せになれる。結婚できる。とは限らない。
女性の綺麗になりたいっていう欲望は尽きなくて、それが消費にもつながる。
りりこも消費される。飽きられたら、忘れられてしまう。それは芸能人だからしょうがない。いつかそうなる、って自覚がある。若さや美しさが失われる。商品としての自分の価値がなくなる。
そうなったら、周りにいた人たちがいなくなる。孤独になる。
人の内面の怖さ。女性ならではの。それと、熱しやすくて冷めやすい人々の。
病院で、定期的にメンテナンスに行かなければならないりりこ。
手術してるシーン、頬に針が刺さって糸で引っ張られてる。あれ、特殊メイクだってわかってても、リアルなので痛々しい。痛そう。
最後は、たくさんのカメラのフラッシュを浴びる、白いドレスを着たりりこが、自分の右眼にナイフを刺した。
自分の眼にナイフ刺して、血が流れる(最初に、白い床に赤い液体がぴしゃってたれたシーンが、これだった)っていうのもかなり怖いんだけど、そのあと、カメラマンが数秒間、撮影をやめたあと、また撮り始めるのも怖かった。
一人の女性が、たくさんの人たちに消費されて、食い殺されていくような感じ。精神的に壊されていく。
しまいには世間から姿を消して、りりこはいなくなる。あんなに人気があったのに、旬の人として輝いていたのに、芸能界から消えてしまった。
フランスでは、女性をワインに例えて、熟せば熟すほどいい、って考え方があるそうです。
でも日本だと、若ければ若いほどいい、って人がほとんどだよなぁ。
だから、制服を着たアイドルが人気があるわけだし。
女の人は若々しく見せたいから、メイクで肌年齢マイナス何歳、なんてCMが流れる。
映画とは関係ないけど、外見以外の美しさを見るような考え方が広まったらいいのになー、と思った。
最後に、りりこは日本ではない国で、ショーダンサー? みたいなことをしていて、右眼には眼帯していた。自分の力で、自分らしく生きているということは、芸能人だった頃より幸せに生きてる、ってことなのかな。