タイトルの「ブラック・ダリア」って、黒い花だと思っていたら、
そうじゃなくて、黒い戦慄、という意味だった。
主人公、刑事のブライカートは、相棒のリーが目の前で転落して、
死んでしまったところを見てしまい、
相棒の恋人のケイの家で「動けなかった」「動かなかった」と、
リーを助けられなかった自分を責める。
で、それをケイがなぐさめる、と思ったら。
ケイにキスされて。大人の女のキスで。
そのまま、そういうことが始まっちゃって。
リーが浮かばれないね。
男性の悲しい性(さが)ってやつなんでしょうか。
男の友情よりも、本能が優先されてしまったのか。苦笑
最後のエンドロールで、この映画は、
実際にあったエリザベス・ショート殺人事件をもとにして書かれた小説、
J・エルロイの「ブラック・ダリア」をもとにしてつくられた、ということを知る。
嘘をつかれたり、その嘘がひとつやふたつじゃなかったりして、
嘘をついてるというより、最初から偽っている、という言い方が正しいかも。
まさに黒、という感じ。
最後は、黒いドレスを着た女性を撃ち殺してしまう。
たくみに挑発されて、自分の痛いところをつくようなことを言われて、
許せなかったんだろうな。冷静になれなかった。
彼も、人を殺したことを隠さなければならなくなり、
自分が追いかけていた犯人たちと同じように、黒く染まってしまう、という・・・。
「笑う男」の絵、目がぎょろっとしてて、不気味で、気持ち悪い。
母親が、真実をすべて話したあと、ピストル自殺するシーン。
ピストルを撃つ直前に、笑顔で自分の娘と夫に手をふる顔、
「笑う男」の絵に似ていて、不気味。そのあとはグロい。
私、ああいうのは美しいって思えないな。
でも、狂気じみた話し方とか表情とか、
見てると怖くて、その演技はすばらしいと思う。
きれいだな、と思ったのは、衣装と車。
黒が基本で、女性のドレスが上品で美しくて、
男性のスーツにハット、ピストルがかっこいい。
ゴシックで素敵だった。
ただ、こういう、前半にあったことが、後半に複線になって、
それが複雑になっていくストーリーって、苦手なんだよな。
途中で、誰と誰がどういう関係で、頭の中こんがらがった。
ミステリーが苦手。
大富豪の夫人が、ピストルの暴発で亡くなった、という新聞の記事。
ここにも嘘が。真実は、夫の金の力でもみ消されて、闇に葬られる。
一方、正義で動いていたはずの
映像が、残酷なのにきれいなのは、
「ブラック・スワン」みたいだな、と思った。
でも、こっちは「ブラック・スワン」みたいに、幻想じゃなくて、
現実に起きたことがもとになってるので、残酷さはこっちのほうが上だ。