
神戸屋ふるや店。神奈川県小田原市国府津4-2。1989(平成1)年8月13日
JR国府津駅から国道1号線に出る角にあるパン屋。2004(平成16)年6月9日に国の有形登録文化財として登録された。
『 文化遺産オンライン>神戸屋ふるや店』では「建築年=1935年頃、タクシー会社の車庫兼社屋として建てられたもので、現在では車庫部分を店舗として利用されている。木造であるが、外壁はモルタルで洋風石造建築を模しており、隅の円柱、窓周り、軒部等に特徴的な意匠を備えている」という解説。一方で『近代建築散歩 東京・横浜編』(小学館、2007年)では、「旧富士屋自動車停車場」という旧名称があって「国府津は大正から昭和初期に政財界人の別荘が多く建てられ、彼らの送迎用ハイヤーの車庫として建てられたもの」とある。
富士屋自動車株式会社とは、箱根町宮ノ下の富士屋ホテルのHP『 富士屋ホテルチェーン>ホテルヒストリー』や、『 HOTEL CONCIERGE>クラシックホテルズ>富士屋ホテル第6回』などにある会社ではないかと思う。それらサイトによると、富士屋ホテルが送迎用の車両で別会社を興したもので、1914(大正3)年8月の設立。1919(大正8)年6月、国府津―箱根間の運転を開始した。小田原電鉄の自動車事業と激しい競争をしていたが、1932(昭和7)年8月に両者は合併して「富士箱根自動車」と改称した。
神戸屋ふるや店の建物が昭和10年頃の建築とすると、建設時の名称は正確には「富士箱根自動車停車場」なのだろうか? 昭和9年12月に丹那トンネルが開通して、国府津は鉄道の要衝としての地位から転落する。国府津―小田原間でバスやタクシーを使う客もいなくなってしまっただろう。

近影。2012(平成24)年4月6日

ふるやの主屋。2012(平成24)年4月6日
神戸屋ふるや店の裏だか隣には、一部を洋館風の外観にした日本家屋の住宅が建っている。登録有形文化財として登録された名称は「神戸屋ふるや店店舗及び主屋」で、その「主屋」ではないかと思う。