
田上木芸所。文京区根津2-33。1990(平成2)年5月6日
写真は藍染大通りの なかよし文庫があった長屋で、その裏側を見ている。角は雪印牛乳根津販売所。この頃はまだ瓦屋根だ。写真右の平屋の小屋の柱の表札は、「挽物・糸鋸 田上木芸所」ではないかと思う。ネット検索すると「田上挽物糸鋸木工所」で出る。たぶんその工房なのだと思う。
『東京いま・むかし』(桐谷逸夫・桐谷エリザベス著、日貿出版社、平成8年)に内部を描いたペン画と「生地師父子」という文が載っている。それによると、仕事場は4坪ほどで、絵を見ても分かるが、轆轤や旋盤の機械と作業台で占められ、壁と棚に道具がぎっしりと並んでいる。棗、椀、茶托などを作る。「生地師父子」とは田上勝彦氏と故助四郎氏。助四郎氏は明治29年生まれ、15歳で茨城から上京して生地師の仕事に就いたという。独立するまでは寝る間もなく働いたようで、昔の人はほんとうにすごい。
2007(平成19)年12月15日
作業場の右(手前)の家が田上木芸所の住居。今はなかよし文庫の長屋はマンションに替わり、木芸所の建物もそのマンションに取り込まれた。作業場は住居のほうに移したかと思う。