丸刈りのわけと刺激。
地下室が好きだ。
窓がなければ外のことなど気にならないし、ブレーカーを落とせば本当の暗闇が手に入る。
防音の壁よりも分厚い地面にくるまると外の雑音なんか聞こえない。身体の音がうるさいくらい。
世界に自分が一人だけみたいな錯覚。まぁ、錯覚じゃないとパニックだけど。
海に潜るのも似たような気持ちになれるけど、いかんせん健康的すぎる。
あんまり綺麗で心地よいものに囲まれると凄く落ち着かない気持ちになるんだよ。
自分とかけ離れたものはそれがどんなに魅力的でも長くいると辛くなる。
魅力的なほど辛くなる。
なんだか恋に似ているね。
小汚い居酒屋で知らないおっさんの明日の予定でも聞きながら安酒浴びるくらいが丁度いい。
後はひたすら何かの文句をシミだらけの床にばらまいておけば僕の心は平穏だ。
僕の心の平穏のハードルは決して高くないと思うのだけど、美容室はダメだ。
なんなら全てのお洒落空間が苦手だ。かけ離れすぎてんだよな。自分と。
多分に偏見と先入観があるのはよくよく理解してるけど、人の価値観なんてそんなもんだ。
かけ離れすぎてないとこだけを選んで生活してたら髪が伸びて、ジーンズが破けて、たまに肺も破れて、家がなくなったりしてどんどん小汚くなって行った。
主食が松屋でデザートがマクドナルド。ジャンクフードの息継ぎに酒。寝るのは家の布団よりバイト先の床。ゴキブリとネズミは親しい隣人。
人間よりも埃とか下水なんかに親近感を感じてたんだけど、ツケが回ってきたのか生え際が引退しそうな雰囲気を出してきた。
前から30になったら丸刈りで髭三つ編みにビーズ付けた人になるって言ってたから、今年中に丸刈りやるってことで気持ちに折り合いをつけていた。
まずはリーゼントかモヒカンにしようと思ってたんだ。そのはずだったんだ。
明け方のClub Queと黒霧島。不機嫌な下津と酔った谷山。ハサミとバリカン。散らばる髪の毛。人差し指の傷。
材料が揃いすぎて気づいたら眉なしの坊主が二人で肩を組んでいた。
日差しで頭が痛かったり、寒風が首を冷やしたり、水がなんの抵抗もなく頭を通り過ぎたり。
まぁ、楽でいいや。
なんて思えるのも私が歳を取ったせいなのでしょうか。
やっと三十路かよって思ってたし、先の長さに目眩がするよ。
僕の人生は楽しいけど、長すぎると飽きるよね。ずっと自分って壮絶だ。
ほんとに飽きたら死んじゃうから、適度に刺激を求めるのだ。
今は刺激の真っ最中。
音楽と旅。
フェリーに揺られて苫小牧へ。それから札幌でスープカレー。ライブもだけどスープカレー。
とりあえず口の中に刺激をくれ。
刺激も続くと飽きるから、誰か沖縄に僕らのための甘えん坊ハウスを建ててください。
ツアーはまだ前半戦。東京には五体不満足で帰ると思います。
帰るところがある旅はとても落ち着くし、しあわせなことだね。
では、刺激に向かって。
